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病弱令嬢は”魔王様”に恋をする  作者: ぽかぽか


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24/52

24.

 翌日。

 病室の窓から差し込む朝日を浴びながら、セリアは一通の手紙を読み返していた。


「楽しそうね」


 病室に入ってきた母が、くすりと笑う。


「オーレリア様からです」


 セリアは嬉しそうに手紙を抱きしめた。

 事件のあと、オーレリアはすぐに手紙を送ってくれた。

 何度も謝罪の言葉が綴られ、体調を気遣う内容ばかりだった。

 ここ数日は、毎日手紙のやり取りをしていた。


「最近はお忙しいみたいなんです」


 手紙に目を落としながら微笑む。


「ご家族と話し合うことが多いそうで……」


 詳しいことは書かれていない。

 それでも、きっと大切な話なのだろうと分かった。

 ふと、ゼインの姿が頭に浮かぶ。


(ゼイン様も、お忙しいのかな)


 魔塔主として多くの仕事を抱え、その合間を縫って自分の治療をしてくれている。

 そう思うと、少しだけ申し訳ない気持ちになる。

 だけど、治療がなければゼインに会うこともない。

 明日は、四回目の治療の日だった。


(……早く会いたいな)


◇◇◇


 翌日。

 四回目の治療も、問題なく終わった。

 処置室から病室に戻ったセリアは、ベッドに横になりながら大きく息を吐く。


「お疲れさまでした」


 主治医が優しく声をかける。


「ありがとうございます」


 体は少し疲れている。

 それでも以前とは違い、苦しさはほとんど感じなかった。


「今回は、前よりもっと楽でした」


 その言葉に、主治医は嬉しそうに頷く。


「順調ですね」


 ゼインもセリアの様子を見て、小さく頷いた。


「予定どおり改善している。私は魔塔へ戻る」

「お忙しいのに、ありがとうございました」


 セリアが頭を下げると、ゼインは短く頷いた。


「あまり無理はするな」


 それだけ言い残し、病室を後にする。

 その背中を見送りながら、セリアは少しだけ寂しそうに微笑んだ。


 ゼインが病室を後にすると、主治医はカルテを閉じてセリアたちに向き直った。


「ここまでの経過を見る限り、回復はとても順調です」


 付き添っていた母が安堵したように胸を撫で下ろす。

 主治医は穏やかな笑みを浮かべた。


「そろそろ短時間の外出なら許可してもよさそうですね」

「本当ですか?」


 セリアは思わず身を起こした。


「ええ。ただし、人の多い場所は避けてください。疲れを感じたらすぐ休むこと。それが条件です」

「はい!」


 嬉しそうに返事をするセリアを見て、主治医も頷く。


「さらに、ご家族が付き添われるのであれば、一泊ほどご自宅で過ごされても問題ないでしょう」


 その言葉に、セリアは目を大きく見開いた。


「お家に……帰れるんですか?」

「ええ」


 主治医は優しく微笑む。


「入院してもう一年になりますね。今の状態なら、無理をしなければ大丈夫でしょう」


 セリアの瞳がみるみるうちに輝いていく。


「一年ぶり……」


 小さく呟くと、嬉しそうに母の顔を見た。


「お母様、お家に帰れます……!」


 母も目を潤ませながら笑顔で頷く。


「ええ、本当によかったわ。お父様もきっと喜んでくださいますわ」


 そして、何かを思いついたように微笑んだ。


「料理長にも知らせなくてはいけませんね。セリアの好きなお料理を、たくさん作ってもらいましょう」

「本当ですか?」


 セリアは思わず笑みをこぼす。


「何がいいかな?久しぶりに料理長のシチューが食べたいです。アップルパイも……」


 楽しそうに話し始める娘を見て、母も優しく笑った。


「料理長が張り切ってしまいそうね」


 二人のやり取りを見守っていた主治医が口を開く。


「外泊ですが、治療後の体調をもう少し確認したいので、二日ほど様子を見ましょう。後ほど詳しくご説明しますので、お母様と相談して日程を決めたいと思います」

「分かりました」


 母は深く頭を下げた。


「後ほど改めてお話を伺います」


 主治医が病室を後にすると、セリアは嬉しそうに窓の外を眺めた。

 一年ぶりに帰る我が家。

 家族と食卓を囲み、

 自分の部屋で眠って、

 窓から見るのではなく、自分の足で庭を歩く。

 そんな当たり前の日常が、もうすぐ戻ってくる。


「楽しみだなぁ……」


 その小さな呟きには、抑えきれない期待が込められていた。

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