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病弱令嬢は”魔王様”に恋をする  作者: ぽかぽか


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15/52

15.

 その頃、王立魔法療養院では、セリアが診察を受けていた。


「少し熱がありますね」


 主治医は、体温を記録した紙を見ながら穏やかに言った。

 セリアは申し訳なさそうに笑う。


「やっぱり……」

「何か思い当たることはありますか?」


 少し考えてから、小さく頷く。


「最初の治療を受けてから、体がすごく楽だったんです」

「はい」

「だから嬉しくて……」


 照れくさそうに笑う。


「ここ数日、中庭をいつもより長く歩いたり、夜遅くまで本を読んだりしてしまって」


 主治医は責めるような表情はしなかった。


「そうですか。前回の治療から、今日で六日が経っています」


 カルテに目を落とす。


「治療から日が経ち、再び魔力が溜まり始めています。その状態で無理をすると、疲れが発熱や息苦しさとして現れやすいのです」


 セリアはしゅんと肩を落とした。


「浮かれてしまいました……」

「嬉しいお気持ちはよく分かります。ですが、まだ治療は始まったばかりです」

「はい……」

「今日は安静にしてください」

「分かりました」


 主治医は看護師に、今日は面会を控えさせるよう伝えてから病室を出た。


 しばらくすると、再び扉が叩かれた。


「セリア」


 聞き慣れた声に顔を上げると、フレディが笑顔で部屋に入ってきた。

 受付には面会を控えるよう連絡が届いていなかったらしく、フレディはいつものように病室まで通されてしまった。


「フレディ様」

「顔色があまり良くないね」


 心配そうにセリアの顔を覗き込む。


「少し熱が出ていて」

「そうなのか」


 フレディは病室を見回した。

 閉め切られた窓に視線が止まる。


「少し空気を入れ替えよう」

「えっ?」


 セリアが止める間もなく、フレディは窓を開けた。

 外から涼しい風が病室へ流れ込む。


「ほら」


 フレディは気持ちよさそうに笑う。


「今日はいい天気だよ。風も気持ちいい」


 セリアは肩を小さく震わせた。

 体調が良い時なら、このくらいの風は何とも思わなかった。

 けれど今は違う。

 熱があるせいか、少し肌寒く感じる。


「フレディ様……」

「ん?」

「少し寒いかも」

「すぐ空気は入れ替わるよ」


 フレディは気にした様子もなく窓の外を眺めた。


「閉め切った部屋にいるより、その方が気分も晴れる」

「でも、本当に寒いんです。閉めてください」

「もう少しだけだから」


 悪気がないことは分かっていた。

 だから、これ以上強く言うことができなかった。

 その時だった。


「失礼します」


 看護師が様子を見に入ってきた。


「あら?」


 開いた窓を見るなり、表情が変わる。


「セリア様、寒くありませんか?」

「少し寒いです」


 慌てて窓を閉める。


「体が冷えると魔力回路の流れがさらに悪くなり、症状が悪化することがあります」

「でも」


 フレディは穏やかに答えた。


「少し空気を入れ替えた方が気分も良くなるでしょう?」

「お気持ちは分かりますが、今日は安静が必要です」


 看護師は申し訳なさそうに頭を下げる。


「先生をお呼びします」


 そう言うと、足早に病室を出ていった。

 しばらくして、主治医が部屋に入ってきた。


「フレディ様」


 穏やかな口調だったが、その表情は真剣だった。


「セリアさんは明日、二回目の治療を予定しています」

「はい」

「本日は熱も出ていますので、できるだけ安静に過ごしていただく必要があります」


 フレディは少し困ったように笑った。


「だからこそ、気分転換も必要だと思ったんですが」

「お気遣いには感謝しております」


 主治医は丁寧に頭を下げる。


「ですが、ここから先は私どもへお任せください」

「少し話をするだけです」

「申し訳ありません。今日はお帰りください」


 病室に短い沈黙が流れる。

 フレディは納得していない様子だったが、主治医の真剣な表情を見て、小さく息を吐いた。


「……分かりました」


 立ち上がると、セリアに優しく笑いかける。


「明日の治療、頑張ってね」

「はい……」

「また時間ができたら来るよ」


 そう言い残し、フレディは病室を後にした。

 扉が閉まると、主治医は小さく息をつく。


「セリアさん、大丈夫ですか?」

「はい」


 セリアは申し訳なさそうに微笑んだ。


「ご迷惑をかけて、すみません」

「謝る必要はありません」


 主治医は穏やかに答えた。


「今日はゆっくり休んでください。明日の治療に備えましょう」


 その言葉に、セリアは静かに頷いた。

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