↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病弱令嬢は”魔王様”に恋をする  作者: ぽかぽか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/52

11.

 翌朝。

 父と母が病室を訪れた。


「おはよう、セリア」

「おはよう、朝早くから来てくれてありがとう」


 二人の姿を見ると、セリアは少しだけ表情を引き締めた。自分で考えた答えを、きちんと伝えようと思ったからだ。


「話があるんでしょう?」


 母が優しく問いかける。

 セリアは小さく息を吸い、二人をまっすぐ見つめた。


「お父様、お母様。私、決めました」


 その一言に、父と母は静かに耳を傾ける。


「ゼイン様の治療を受けたいです」


 父と母は顔を見合わせた。


「そうか」


 父は静かに頷き、母はセリアの手を握った。


「あなたが決めたのなら、私たちは支えるわ」

「ああ、どんな結果になっても、一緒に受け止める」


 父の言葉に続き、母は握った手に力を込めた。


「だから、一人で頑張ろうとしないでね。不安になった時は、ちゃんと私たちに話してちょうだい」


 母の温かな手に触れ、セリアは胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。


「ありがとう」


 自然と笑みがこぼれた。


「診察の時に、先生に治療を受けるって伝えてくる」


 本当は両親も付き添うと言ってくれたが、自分の意思は自分の口で伝えたかった。

 父は力づけるように頷き、母が笑顔で言った。


「ええ、行ってらっしゃい」


 その言葉に背中を押されるように、セリアは無理をしないようゆっくりと廊下を進み、診察室へ向かった。


 ◇◇◇


 診察室では、主治医がいつものようにセリアの体調を確認していた。


「体調はいかがですか?」

「もう大丈夫です」


 一晩休んだおかげで、息苦しさも落ち着いていた。

 少し沈黙が流れる。

 セリアは膝の上で手を握り、小さく息を吸った。


「あの……先生」

「はい」

「先日のお話ですが」


 真っ直ぐ主治医を見た。


「治療を受けたいです」


 迷いのない声だった。


「危険があることも分かっています」

「それでも?」

「はい」


 セリアは静かに頷く。


「可能性があるなら、挑戦したいです」


 主治医は安堵したように、わずかに表情を和らげた。


「ご両親とも話し合われましたか?」

「はい。二人とも私の決断を支えると言ってくれました」


 父も母も、最後は笑って送り出してくれた。

 『どんな結果になっても、一緒に受け止める』

 その言葉が、今も背中を押してくれている。


「分かりました」


 主治医は大きく頷いた。


「すぐにゼイン様にお伝えします」


 ◇◇◇


 魔塔では、ゼインが書類に目を通していた。

 扉が叩かれ、イクスが部屋に入ってきた。


「療養院から連絡がありました」


 ゼインは顔を上げた。


「セリア様が治療を希望されたそうです」

「そうか」


 短く答えると、ゼインは机の上に置かれていたセリアの記録に目を落とした。

 治療記録で前回の処置日を確認し、自身の予定表に目を移した。


「最初の治療は二日後にする」

「二日後ですか?」

「ああ」


 ゼインは静かに頷いた。


「前回の治療からは六日後になる。魔力が溜まりきる前の方が、回路への負担を抑えられる」

「なるほど」

「具体的な治療手順と今後の日程についても、本人と家族に説明する必要がある。準備を整えるよう、療養院に伝えてくれ」

「承知しました」


 ◇◇◇


 その日の夕方。

 主治医は、セリアの病室を訪れた。


「ゼイン様からお返事がありました」


 セリアは本を閉じ、顔を上げた。


「最初の治療は二日後に決まりました。治療の前に、今後の進め方について改めて説明してくださるそうです」

「二日後……」


 思ったより早かった。

 怖さは消えなかった。

 それでも、前へ進めることへの期待が、わずかにそれを上回っていた。


「分かりました。ゼイン様にも、よろしくお伝えください」


 セリアは小さく頭を下げた。


 ◇◇◇


 その頃、キャンベル公爵家では、オーレリアが自室で本を読んでいた。

 部屋の扉が叩かれる。


「失礼いたします」


 入ってきたのは、侍女のエマだった。


「ホワイト夫人からご連絡がありました」

「セリア様のお母様からですか」

「はい。昨日、フレディ様がお見舞いにいらっしゃったそうです」


 本を閉じる指に、わずかに力がこもった。


「……そう。何か問題がありましたか?」

「フレディ様とのお話の最中に、セリア様が息苦しさを訴えられたそうです」


 オーレリアはゆっくりと立ち上がる。

 胸の奥に、小さな不安が広がった。


「フレディ様へ、改めてお話ししたいと伝えてください」

「かしこまりました」


 エマが一礼して部屋を出ていく。


「今度こそ、分かっていただかなくては」


 オーレリアは窓の外を見つめ、小さく息をついた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。