59話 愛は神をも超えて
『ふふふふふ♡』
ピノの笑い声が聞こえた。
それは突然の事だった。
ユリシアは何かを
感じとるようにオレを
突き飛ばした。
ヒュウーーーという
冷たい音が
風を切り裂き
空気を凍らせていた。
狙撃ーーーー!!?
オレはユリシアとの出会いで
ここが戦場である事を
忘れていた。
その氷の弾丸は
あろうことかユリシアの
腹部を貫いていた。
「ああーーーー
あああああああああ」
叫び声が止まらない。
ユリシアの死を感じさせるには
充分な出来事だった。
片腕にでユリシアを抱き寄せ
すぐさま狙撃方向を予測し
木の木陰に隠れる。
その悲劇に
周りの兵士達は
動揺を隠しきれない。
国としては
勝った。
だがオレ個人としては
ただただ大事な者達を失っただけだ。
オレは何を守れたというのだろうか。
オレは隠れた木陰で
ユリシアの徐々に冷たくなる手を
握り続ける事しかできない。
涙が止まるなくなり
最愛の人間にかける言葉すら
みつからなくなる。
自分が戦うしか能のない
無力な人間である事を思い知る。
ユリシアはそんなオレの頬に
手を当てる。
「……泣くな、
貴様のそんな顔は見たくない…」
ユリシアが微笑む。
まるで笑顔を求めるように。
「いいのだ……これで……
貴様のいない世界に…
ワタシは…興味がない…」
「どんな地位にあろうと…
貴様を一生引きずりながら生きるのは…
ワタシはごめんだ……」
ユリシアの目は虚ろだ。
もはや生命の息吹を感じなかった。
その声をオレは必死に聞き取ろうとする。
「最後の…策を伝える…
ずっと…考えていた…
貴様の…話を聞いて……
どうすれば…共に生きれるか……」
「フレイヤに……
褒美を……要求しろ…
ワタシを死後……
ヴァルキリーにするように……」
「フレイヤの・・・…
性格を考えれば……
必ず…受け入れるはずだ…」
ユリシアは小指をオレに
差し出す。
「策略はワタシの土俵……
ワタシを…信じてくれるか……?」
オレはユリシアの
小指に自分の小指を絡ませる。
それは約束の契り。
「当たり前だろう!!!
信じろ!!!!
オレは必ず成し遂げる」
ユリシアはそれを聞くと
安心するように
息を引き取った。
『嘘、嘘嘘嘘嘘
あり得ない…
なんなのよ
この子……』
ピノは動揺を隠しきれていなかった。
『ヒメジマちゃん
待って…』
もう遅い。
その言葉ではオレは止まらない。
「フレイヤ!!!!
見ているんだろう!!!
聞こえているんだろう!!!!」
「オレは勝った!!!!
勝ったんだ!!!
オレに褒美をよこせぇえええええ!!!」
神でも、運命でも構わない。
奪うなら、返せ。
それは怒りに似ていた。
天が躍動する。
その叫びがフレイヤに届いたことを
オレは確かに感じていた。
オレの呼びかけに
フレイヤが答える。
世界の時が止まり
その景色を白の世界へと
変える。
「ワタクシに褒美を
要求するとは
いい度胸してるじゃないの?」
フレイヤがその冷酷な程
美しい姿を現す。
ピノが即座に
その姿を顕現し
平伏する。
「フレイヤ様。
そう簡単に姿を現されては困ります。
鼎の軽重が問われますよ?」
「困るのはアナタでしょう?ピノ?
本来であればヒメジマは
戦いが終わってすぐに
ワタクシとの謁見だったはず」
「それを無理やりアナタが
止めてたんじゃないの
結末を見て合点がいったわ」
「おいたが過ぎたわね?
ピノ」
フレイヤがピノを
睨みつける。
「この子はユリシアの死を
わざとヒメジマに見せつけてこの世界に
踏ん切りをつけさせる事を
促したのよ」
コイツは
……本当に
ろくでもない
「ヒメジマ、
よく働いてくれました。
ワタクシは対価を払わないのは
好きではないの」
「アナタの願いを
聞き入れましょう」
ピノが焦る。
「フレイヤ様、待って!!!
その願いノーカン!!!
その願いノーカン!!!」
ピノの説得かも怪しい言葉を無視して
フレイヤは指をパチンと鳴らし
力を使った。
光が収束し
ユリシアの身体を再構成していく。
ユリシアは体からは
白い翼が生え鎧を纏い。
光の粒子を身に纏いながら
その意識を取り戻した。
新たなヴァルキリーの
誕生である。
「それが
……お前の本当の姿か」
気づけば、オレは
迷彩服を纏っていた
「そうだ。
幻滅したか?」
ユリシアは大きく
首を横に振った。
「バカを言え。
姿、形など問題あるか!!!
でなければ
死んでまで貴様と共に歩もうとは思わん!!」
オレとユリシアは
互いを強くを抱きしめ合う。
「愛してる、ずっと。
共に永遠を歩もう」
ユリシアの問いかけに
オレは力強く答える。
「ああ・・・
もう離れない。
永遠にだ……」
その姿をみて
ピノは両膝を着く。
本来であれば
ユリシアのポジションは
自分のはずだった 。
どう足掻いても
人間では乗り越えられない愛を
自らが神になり
乗り越えるとは
思っていなかった。
それは
この世界に来て
ヒメジマを意のまま操ってきたピノの
初めての戦略的敗北だった。
それでも、心のどこかで
……少し羨ましかった。
読んでいただいてありがとうございます!
リアクション、レビュー、感想、5☆評価、ブックマークよろしくお願いします!




