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58話 ラグナロクで会おう

アンナ元帥が死んだ事で

戦況が乱れていた。


彼女には随分と支えて

貰っていた。


改めて思い知る。


メソメソしては

いられない。


そんな姿を見せては

アンナ元帥に怒られてしまう。



戦況を見ながら

オレも随時戦線に加わる。


片腕を失い距離をつめられる事を

避けたいオレは


低空を常に飛び上と下で相手を

翻弄しながら戦う戦術を取り始めていた。


縦横無尽に戦場を飛び交いながら

指揮と戦闘を繰り返す。



魔王と目が合う。


もう言葉を交わす事は

なかった。



戦略的な撤退をせずに

魔王自体がここに留まるという事は

手が尽きた事を示していた。



魔王の戦略の起点であった

地下要塞を放棄させた時点で

戦略面での決着はついていた。




だからこれはオレとの因縁に

対する決着だろう。



魔王の魔法でつくった炎の槍が次々飛び交い

王国軍に結構な被害を与えている。



勝ち目はない。

それでも、

それが先輩の責任の取り方だ。。



立派だよ…先輩。


味方の危機に戦場を投げだす奴には

死んでもなりたくないもんな。



オレはアンタを

理解できる。



だから、止めない。

降伏も促さない。


オレの手で


終わらせる。



オレは剣を握り

檄を飛ばした。



不意を突き近づいたり

遠のいたりを

繰り返しながら


巧みに戦況を進めていく。



オレは戦いの合間にふとーー

先輩との思い出を思いだしていた。



夏の苦しい演習。


駐屯地の夏祭りの花火。


冬の武装走。


そして、戦場。


苦しいけど


仲間がいて。


支え合って。


どうにかこうにか

くぐり抜けてきた。


世界をどうしよもなく

青くかんじていた。




互いの剣閃が

重なり火花が散ったかと思えば


距離を取り

魔法の打ち合いを繰り返す。


互いの実力が拮抗し


まるで共に踊って

いるような楽しさを

感じていた。



魔王軍の殿は徐々に

その数を減らしていく。



なあ、先輩。


オレはこの世界の出会い方は最悪だったけど


また、

会えて嬉しかったんだ。



また、

言葉を交わす事ができて

嬉しかったんだ。



だから、さよなら。



もう苦しむ必要は



ない。




オレは低空飛行で王国兵の影に紛れ、

死角を作った。


そのまま全速で魔王へと突っ込み、虚を突く。


魔王は体勢を崩し、地面へと膝をついた。


馬乗りになり、オレは剣を引き絞る。


魔王は微かに笑った。


「……ヒメジマ」


「お前の勝ちだ。

ラグナロクで会おう。」



剣先が胸を穿ち、世界は一瞬、音を失った。


炎も風も、兵の叫びも、遠くへ消えた。


残ったのは――ただ、昔と同じ色をしたその瞳だけだった。


オレは、最後の一突きを打ち込んだ。



戦場は歓喜の声に包まれていた。


戦場に残された魔王軍は

少数だったが

魔王が死んだ事で

戦う気力を失っている様だった。



この戦場は終わった。

だが素直に喜べなかったが

少しだけ安心していた。


これでいいのだ。


もう、これ以上オレは

先輩と戦う必要はなくなったのだから。


『おめでとう、

ヒメジマちゃん』



ピノが祝福を述べる。


黙ってろよ。

オレを弄びやがって。


「オレはどうなる」


『もちろん、

次の世界に行くよ

けど、少しだけ待ってあげる』


『上を見てみて』


オレはピノに言われた通り

上を見る。



空は晴れ雲の合間から

光が漏れていた。



そこに飛行する馬車が

見えた。



輸送などにも使われている

空飛ぶ馬車であるが

莫大な経費が掛かるものだ。


しかもあれは王宮御用達の

速度の速い特別なものだった。


そんなものに乗って

戦場に駆け付けるのは

オレは1人しか思い当たらなかった。



「……ユリシア」


ユリシアが馬車から

降り立つ。


天から光が差し込み

その様まるで

天使が地上に舞い降りた

かのようだった。


『一度この世界を離れれば

二度と戻ってくることはないよ

永遠の別れになる』


『だから少しだけ

別れの挨拶くらい待ってあげる。

サービスだよ♡』


ちっ。

こいつは本当に


まあいい、今だけは

素直に喜ぶとしよう。



オレはユリシアに

駆け寄る。


ユリシアも

オレに駆け寄る。


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互いを確かめ合うように

強く抱きしめ合った。



「ユリシア、

お前、王国はどうしたんだ?」


「知ったことか!!

貴様がいない王国よりも

貴様の隣がいい!!」


「最後まで――いいや、終わったあとも。

ワタシは、貴様の隣にいたいのだ。」


その言葉から

無償の愛情を感じた。


オレは返す言葉も

なかった。


「腕、なくなって

しまったのだな」


「何てことはないさ

ユリシアに会えた事で

全部吹き飛んだ」


二人は微笑みあう。


この世界から

離れたくない。


心の底からそう思った。





ピノが遥か遠くの峡谷の上を

見つめていた。


そこには魔王軍の

敗残兵をまとめた

フェリルが王国軍の様子を見ていた。



そして、自らの母同然である

魔王がザムザに殺された所も

見ていた。



フェリルの中に

どうしようもない

黒々とした怒りが芽生える。


氷が砕ける音がした。

心が壊れた音だった。


「あああああぁっぁぁぁあああああ

あああああああああああぁああ」


それは痛みそのもの叫び。


「許さん、許さんぞ

ザムザァァアアアアアアア!!!!」


周囲はフェリルを止めようとするが

フェリルは聞く耳を持たなかった。


フェリルには魔法の才があった。


強力の氷の魔力を研ぎ澄ませ

その目標をザムザに向け

明確な殺意をもってそれを放った。


意識出来ない距離からの

超長射程の攻撃。


それはかつて、ザムザが妹分の

メイビスを打ち破った手法と

同じだった。

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