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56話 英雄譚の続きを、空の彼方で

魔王軍と王国軍との交戦は

続いていた。


魔王は自らが殿に立ち

部隊を逃がしている。


その姿をみた魔王軍の中には統率を

取り戻す部隊も存在したが

それは少数だ。



そんな中ジグムントの部隊は王国軍を

圧倒していた。


それは今、負けの決まった撤退戦だと

感じさせない程の気迫だった。



ジグムントの持つ二本の刀は

凄まじい勢いで王国軍の首を

刈り取っていく。


濃厚な血の匂いが舞い。


辺り一面が鮮血に染まった。



その姿は正に鬼神にであり。

誰もとめる事が出来なかった。



ジグムントはザムザの姿を

探すが高速で縦横無尽に

飛び回る彼を捕らえる事は

出来なかった。



「何をしている!!!

おじけづくな!!!

距離を取り囲い込め

鎖を用意して拘束しろ

奴の本領を発揮させるな!!!」



アンナ元帥から檄が飛び。


ジグムントに拘束を

目的とした分銅のついた鎖が

飛び交う。



「……やりずらいな」



ジグムントはアンナ元帥を見つめる。


王国に攻め込んだ時には

決着をつける事はできなかった。


長年、王国を支えてきた重臣。


冥土の土産にするとしようか。



ジグムントの矛先は

アンナ元帥へと向かった。


アンナ元帥の周りを

固めるのは王国でも屈指の

精鋭部隊である。


それでも


ジグムントの手を止めるには

足りなかった。



かつての防衛戦の様に

障害や地形的な

制約のない野戦では


ジグムントの独壇場だった。


ジグムントは

ついにアンナ元帥を

その目に捕らえた。


()った!!!」



ジグムントはその刀を

横に薙ぎ払う。


アンナ元帥は盾を使い

防御するが

ジグムントはものともせずに

盾ごと切り裂こうする。



ジグムントの手ごたえには

違和感があった。


アンナ元帥の盾の下には

もう一つ盾があった。


((……二重の盾?))


それすらもジグムントは

切り裂きアンナ元帥を致命傷を与えたが

その威力は大きく減衰し

即座に絶命させるには至らなかった。



その僅かな隙をアンナ元帥は

見逃さずジグムントの腕を

掴んでいた。



「捕まえたぞ。

英雄という奴(ザムザ)の真似は

してみるものだな…」


アンナ元帥は

血を吐きながら笑っていた。


ここに来てジグムントは

自分がアンナ元帥を狙ったのではなく

アンナ元帥が標的を自分に向けさせたのだ

と気が付いた。



ジグムントは終わりを悟った。


生き残った部隊が次々と

刃を突き立てていく。


ジグムントは光の差す天を仰ぐ。


前の主は死に

大切なものは守れず

何度刀を捨てようかと思った事か


魔王とかつての子供の時の

四天王たちの姿が瞼に浮かんだ。


魔王様。


もう一度立ち上がろうと思えたのは

アナタがいたからだ。


散々な生き方だったがアナタに会えてよかった。


愛情に溢れ光り輝く統治をまた見ることができた。



――ああ、美しい。


こんな焦土の空にも、まだ光はあるのか。

その微笑のまま、ジグムントは静かに目を閉じた。



アンナは倒れ空を見ていた。


黒々とした血を見て自分が

長くない事を悟った。


子供の頃、英雄譚に憧れた。


それを読み聞かせてくれていたのは

後に夫となる兄替わりのコンラッドだった。


だが、現実は甘くはなかった。


味方同士は足を引っ張り合い

宮廷は陰謀だらけ。


国は悪くなるばかりで


悪い奴を何もかもぶっ飛ばすような

英雄は現れない。


そんなものはおとぎ話だと落胆した。


人間なんて自分の事ばかりだ。

そう思った。



けど、そう思いたくなかった。

理想と現実の板挟みだった。




あの日、国王があの宰相を斬った。

胸が熱くなった。


その権力から誰も

手を出せなかったあの男をだ。


まるで古い英雄譚の一節を、

現実がなぞったようで。



私はその夜にコンラッドに

話したんだ。


「なあ、聞いてくれ!!!

国王は国を変える英雄かも

知れない!!!」


私は


嬉しくて


嬉しくて


嬉しくて。


いい大人が夕食で

こんな話をするものではないな。


コンラッドは複雑そうな顔をしていたよ。


旦那には悪い事をしたな。


妻らしい事は

何もしてやれなかった。


まったく


こんな女となんで結婚したん

だろうか。


次の人生があるなら

とびっきり女らしく生きてやろう。


足音が聞こえた。


国王が悲しそうな顔でこちらを

見ていた。


そんな顔で見るな。

メソメソするな。


みっともないから。


やっと、現れた英雄なんだから。


「国王陛下……私に構わず指揮を……」


最後だ。

何か声をかけておかないと


気の利いた事は思いつかないな


「ご武運を…願って…おります」


何の飾り気のない言葉。

けど、本心だった。



国王が力強く頷くのをみて私はほっとする。



戦場の喧騒が遠ざかり。

血の匂いも、痛みも、すべて遠くなっていく。



亡き夫が近くで佇んでいるように思えた。

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