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51話 焦土の果てに

左腕が、熱い。

焼けた鉄を押し付けられたような感覚。

それでも、まだ落とせない。


ここで止まれば、兵の士気が崩れる。


「国王様っ、治療を――!」

近くの兵が駆け寄ろうとする。


「下がれ!!!」


怒号が空を震わせた。

血が滴り落ち、風に散る。


オレは剣を収め。

服を破いて紐状にして

服についていた手頃な棒状の金属を使い

圧迫止血をする、



――見せるな。

痛みも、恐怖も、弱さも。

この戦場で最も恐ろしいのは“絶望”だ。



マクシミリアを討った瞬間、

空中にいた王国軍の兵たちはそれを見た。

誰もがその意味を理解した。


「敵将、撃墜――!!!」


誰かの叫びが、号令のように響く。

それが引き金だった。

戦線に、火が灯る。


「奮起せよ!! 我らが王は、まだ戦場にある!!!」


声が広がり、波のように伝わる。

火に照らされた空を、王国の旗がひるがえった。

その瞬間、兵たちが再び突撃を始めた。


オレは左腕を押さえながら、

呼吸を整え、戦場を見渡す。


マクシミリアの部隊は指揮を失い、

竜人たちは統率を失って散っていく。


「……押し切れる」


血で濡れた唇から、かすれ声が漏れた。

それでも、勝利の確信はあった。


このまま勢いを止めるな。

ここで畳みかければ、

この地獄に、意味が生まれる。


「総員、前進――!!!」


オレの声が響いた瞬間、

風が戦場を裂き、兵たちが再び空を駆けた。


燃え盛る川を背に、

彼らは己の死を恐れず、

ただ勝利だけを信じていた。



苦戦している箇所には

オレの空挺部隊を送り

蹂躙していく。



いけそうな所はオレも

戦線に加わる。


元々は魔法に遠距離攻撃が

主体なのだ。


近づかれなければ

問題はない。


「片腕を失おうが

オレはお前達と共に戦う!!!!!

勇敢な兵士達よ!!!

オレはここにいるぞ!!!」




その勇猛な姿を見て。


背中で語る姿を見て。


王国軍はその命を進んで

捧げる。


その背中を見ているだけで

自分達の戦う意義を見出せるから。



その王国軍の姿を見て

魔王軍の兵士達は

この陣地が落ちる事を悟った。



戦場の熱は最高潮に達し。



一瞬の静寂が、戦場が終わったことを告げた。


強固に守られた

防衛陣地は陥落した。


空に漂う灰が、雪のように降っていた。

それが血か、炎の残滓かもわからない。


だが、確かにそれは――勝利の証だった。



地下。

天井から垂れる水滴が、

炎の揺らめきの中で音を立てて落ちた。


ひとつ、またひとつ。

その間隔が、やけに長く感じられた。


誰も声を発しない。

魔王の前で膝をつく伝令は、唇を噛みしめたまま震えていた。


「……言え。」


低く、重い声だった。

まるでその一言が、地下の空気を砕くように響いた。


「マクシミリア様

壮絶な死闘の末、国王ザムザの片腕を道連れに

名誉の討ち死にされました!!!」


その言葉が放たれた瞬間、

炎が小さく、かすかに揺れた。

誰も息をしない。


魔王は何も言わず、ただ瞼を閉じる。

静寂が、世界を支配した。


――思い出す。

いつか笑っていた少女の顔。

まだ戦を知らぬ頃、風の中で髪をなびかせながら笑っていた。

その笑顔が、もうこの世にない。


手を伸ばしても、届かない。

あの小さな背中は、もうどこにも。


「……そうか。」


その一言に、悲しみも怒りもなかった。

あるのは、ただ静かな諦念。

長い歳月を経て、涙すら枯れた者だけが持つ沈黙。


伝令は何かを言おうとしたが、言葉を失った。

魔王の視線が、燃える松明の炎の中に沈む。

その瞳の奥に映っていたのは、

――マクシミリアの笑顔だった。


「……余が選んだ焦土は、あの子をも焼いたか。」


炎がはぜ、黒煙が天井に昇る。

それがまるで、彼女の魂が空へ帰っていくようだった。


魔王は静かに立ち上がる。

玉座の背後にある壁へ手を置き、目を閉じた。


「しばし、一人にして欲しい」


部下たちが一人また一人と部屋を

後にした。」



炎がひときわ強く燃え上がり、

やがて、静かに消えた。


その闇の中で、誰も声を上げる者はいなかった。


「死の名誉などなにになろうか…

それで私の子供(マクシミリア)

かえってくるわけではないというのに…」



ただ、ひとつの命が消え、

そして、戦が続くという事実だけが残った。


炎の消えた地下に、

まだ彼女の声が残っている気がした。

呼ぶでもなく、嘆くでもなく、

ただ――優しい声だった。

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