50話 暁に落ちる竜
夜明け前、空がまだ藍色を保っている頃。
風が変わった。
霧の奥で、何かが蠢いていた。
「……上だ!」
叫んだ瞬間、頭上を黒い影が切り裂く。
月を隠すほどの翼が、風圧と共に空を覆った。
マクシミリアの竜翼部隊だった。
夜の闇と霧を味方にし、炎を雨のように降らせる。
その光は、太陽よりも早く空を赤く染めた。
「空挺部隊、応戦用意!!」
オレの号令と同時に、矢が闇を裂く。
だが、敵は高すぎる。
落とすには届かない。
「竜人どもが……っ!」
副官の怒声が掻き消される。
炎が王国兵を薙ぎ、水面を煮え立たせた。
一瞬で戦線が崩れる。
指揮も伝令も意味を成さない。
ただ、焼かれ、沈み、消えていく音だけが続く。
オレは空を睨みつけた。
そこに、ひときわ大きな影があった。
マクシミリア――魔王四天王の竜人。
その眼光は、夜明けの光を反射しながら、
まるでオレだけを見据えていた。
「来るか……」
オレの部隊とマクシミリアの部隊が
空中でお互い部隊がぶつかり合う。
マクシミリアの部隊がいる限り
空からの支援を受けたこの渡河が
成功する事はないだろう。
「勝てる……!!!!」
魔族というだけあって
地力は強い!!!
だが、連携能力と数
そしてマクシミリアは
恐らく空中部隊の運用するには
まだ完璧には理解できていない!!!!
部隊の矛先で陣頭指揮をオレを
頭を押さえない限り
マクシミリアの部隊はオレの部隊を
止める事はできない。
最初は拮抗していた空中戦は
徐々にオレの部隊が
押し始める。
直接指揮を取っている者の
能力の差が出ているのだ。
次々とマクシミリアの部隊が
魔法にようる攻撃を受けて
それはそのまま
下見ている両軍の士気へと
繋がる。
王国軍の地上部隊も
攻め上がり
天を裂くような
命の歓声が聞こえる。
奮起せよ。
奮起せよ。
奮起せよ。
我らが国王が
自らを矛先に変えて
勝利に導く。
それはまるで
兵士達と国王が踊っているような
神々しい光景だった。
全て上手くいく
そう思った。
そこに慢心がうまれている事に
気付かなかった。
マクシミリアの部隊は損耗は激しく
既に半分以上の兵達を失っている。
とっくに撤退する時期を
すぎていた。
それでもマクシミリアの
部隊は戦う事を止めない。
それは全滅覚悟という意味だ。
マクシミリアもすごいが
それに付き従う兵達もすごい。
その姿に
オレはある種の敬意を覚えていた。
その覚悟も
意思も
徐々に数の差によって
押しきられていく。
突然、首筋にゾクリとした
戦慄が走る。
どこだ……?
戦場の熱にまみれて
オレはいつの間にか
マクシミリアの姿を
見失っていた。
「ザムザ国王!!!!
下です」
オレの真下から
急速に浮上にしてくる
少数の部隊がいた。
マクシミリア自らが
指揮官を狙ってきたのだ。
「……速い!!!!」
指揮官狙いは常套手段だ。
下からの奇襲によって
次々とオレの近くのいた
部下たちが焼き払われていく。
オレは急浮上し、
風を纏わせた矢を次々と放って迎え撃った。
マクシミリアの盾に
なるように風の矢を喰らい
竜人たちが落ちていく。
間隙を縫うようにして
風の矢の一つが
マクシミリアの
脇腹をえぐる。
それでもマクシミリアは
止まらない!!!!!
マクシミリアと
目が合う。
そこには例え自分が死んでも
お前を討つという
強い意志を感じられた。
生憎だが
殺されてやる訳にはいかない!!!
オレは次々と風の矢を放つ。
もはや守る部下もいなくなった。
マクシミリアの身体には
次々と穴が開くがそれでも
止まらない。
マクシミリアは手に持った
槍をオレに投げつける。
避けている時に
急加速して
オレの眼前にまで迫る
ボロボロにもかかわらず
その目はまだ死んでいなかった!!!
手には
剣が握られていた。
オレも急ぎ
剣を握る。
「死ね」
互いの剣閃がうなった。
マクシミリアは
ほほ笑んでいたのが目にはいった。
オレの剣閃がマクシミリアの首をはね落とした。
だが、その刃は返り討ちにして、
次いでマクシミリアの剣がオレの左腕を抉り取った。
濃厚な血の匂いが鼻を突き、金属の味が口に返る。
「ああ・・・国王様の腕が…」
兵達にも動揺が走るの
感じていた。
左腕の感覚が消え
ただ熱っぽさだけが
残っていた。
興奮しているせいか
痛みは感じない。
オレは油汗を
流しながらも
必死で口を噛め締め
そして下に落ちていく
マクシミリアの姿を
見ていた。
マクシミリアに
自分が命懸けで討とうとした
相手が腕を取られた
くらいでギャーギャー騒ぐ姿を
見せたくはない。
それは敵に対する敬意だった。
「見事だ。
左腕くらいくれてやるよ」
静かにつぶやいた言葉を
風が攫って行った。
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