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49話 地獄の夜明け

地下。


丁度良い適温と

地上からは見えない

巨大な地下壕に魔王軍は

潜んでいた。



魔王はマクシミリアの

出陣の準備を見つめていた。


魔王は

まだ子供だった頃の

マクシミリアを

思い出していた。



幼少期から

男まさりで

ワンパクで


しかし、優しく思いありの

ある子供だった。


敵対していた魔族に捕らわれていた

メイビスをたった1人で敵陣に

乗り込んで救いだした事もある。



どうしようもなく

仲間思いの子だった。



今回の焦土作戦も

一番反対したのはマクシミリアだった。



なぜ自分がこんなにも感傷的になっているのか、

魔王は理解していた。



いまから戦場に出る

マクシミリアに死が近づいている事を

予感しているからだ。



やがて準備を終えたマクシミリアが

出撃の報を魔王に伝えに来る。



「魔王様、マクシミリア、出撃

いたします。」



魔王は静かに頷く。


「マクシミリア、大きくなったわね」


「ええ、魔王様のおかげですね。

感謝しています」



そのマクシミリアの姿に

過去の子供だった時のマクシミリアの

姿を魔王は重ねていた。



「……………」


王国軍を指揮するヒメジマの空挺部隊は強い。

恐らくマクシミリアでは

勝つことができないだろう。



行くなと、言うことが

魔王にはできない。


魔王軍は今回の防衛戦では

25万しか兵力を集める事が

出来なかった。


前年の侵攻作戦の失敗と

反乱が響いていたのだ。



魔王軍にとって

戦況は予断を許さない

状況だった。



「余はお前を我が子の様に思っている。

誰にも負けない程、愛してもいる」


「だから、どうか死なないで欲しい」


それを聞くとマクシミリアは

クスリと笑った。


「なに当たり前の事を言ってるんですか

親の様に慕っている者を泣かせる奴は

ボコボコにしてやりますよ!!!」


マクシミリアは豪快に

笑った。



そしてクルリと後ろを向くと

最後に静かな声でこういった。


「……魔王様

ありがとうございました」



それは静かな別れだった。


魔王はその背中が闇に溶けていくのを見届ける。


その夜、地下壕の空気はひどく冷たく感じられた。

炎が燃えているはずなのに


――胸の奥は、凍えるほどに寒かった。



夜の帳が降り、風が川霧を孕んで流れていた。

兵たちは声を潜め、黒い水面を覗き込む。


月明かりさえ敵の目となるため、松明も許されない。


ただ、遠くでカエルが鳴くような小さな音

――それが唯一の生命の気配だった。


「全軍、準備完了です」


副官の報告に、オレは静かに頷く。

鎧の擦れる音が夜気の中でやけに重い。

誰もが息を詰め、

足元の土を踏む感触にさえ怯えていた。


「号令は出すな。合図はこの矢だ」

オレは短弓に火の粉を宿した矢を番える。

一瞬だけ、赤い光が闇を裂いた。


矢が放たれ、水面に映る瞬間、川の両岸が同時に動いた。

舟が押し出され、兵たちは息を殺して漕ぎ出す。

鎧の金具が水を叩く音、木の軋み、押し殺した嗚咽――全てが夜の底に沈んでいく。


「……静かすぎるな」


隣の副官が呟く。

確かに、対岸からの気配がない。

投石も、魔法の光も、見えない。


不自然だった。

まるで――誰もいないかのように。


オレの背筋に冷たいものが走る。

霧の向こう、黒い影がゆらめいた。


その瞬間、空が白く閃いた。

閃光が夜を焼き、雷鳴が遅れて耳を貫く。

水柱が上がり、舟が次々と木っ端みじんに砕けた。


「――待ち伏せだっ!!」


轟音の中、兵たちの悲鳴が弾ける。

空を裂く光が再び走り、炎の雨が川面を覆った。

敵は待っていたのだ。こちらの夜襲を、すべて見抜いて。


オレは叫ぶ。

「全軍、反撃準備!! ここが地獄の始まりだ!!」


夜空を焦がす炎が川を朱に染めた。

その色は、夜明けよりも早く、戦場の朝を告げていた。


空を覆う黒い翼が、すでにこちらへ向かっていた。

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