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45話 花冠と王冠

次の日

オレは玉座に戻った。


院内は既に指令書で埋まり、

備蓄倉庫の図面と徴発予定表が机に山積みだった。

兵員徴発の実務を考えると、

躊躇は贅沢に思えてきた。


昨日の会議の続きで

オレは魔王領に侵攻する旨を

皆に伝えた。



歓声が上がる。

今まではずっと

防御ばかりだった。



それは王国にとって、

初めて奪われた領土を取り戻す戦いだった。」



「今より、王国は

総動員体制に入る。」


ここに、国民と諸侯に向けて、

明確な意思表示をした。



総動員体制。


国民・資源・労働力

──手にあるすべてを、この侵攻に賭ける。



「我々の軍隊の任務は

祖国防衛ではなく

人類の解放者として

任を与える!!!!」



「奪われた領土を取り戻し

我々の未来をつかみ取れ!!!」


一部の家臣達から

天井が揺れる程の歓声があがる。


それは激しい攻撃性と魔族に

対する敵意が凝縮された

ものであった。



自らが崇める王の言葉が

自らの思想を正当化

させる。


懐疑的な目を向ける者もいたが

状況が状況なので異論は

内容だった。




その臣下達の姿を

ユリシアが冷ややかな目で

見つめていた。



夜、私室でオレとユリシアは

二人でいた。


ユリシアの笑顔は、

ここ数ヶ月で消えかけていた。


日常の中でどこか遠くを見ている事が

増えた。


いつもの覇気がない。


いまだってそうだ。

オレの決定が

気に喰わないのであろう。


刺すような沈黙の中で

ユリシアは口を開いた。



「……結局、

貴様はワタシより

国民を選ぶのだな?」


ユリシアは少しその瞳を

潤ませていた。


「………」


ユリシアの問い詰める様な口調に

オレは何も答える事が出来ないでいた、



「お前はどこか異常だ。

英雄願望でもあるのか?

戦う事以外に解決策はあるだろう?」


オレは先日作ってもらった花の冠を

ユリシアに手渡す。


「孤児院にいった時に

女の子がオレにくれたものだ。」


ユリシアは神妙な顔で窓辺の光に揺れる花冠を

見つめていた。



「女の子はオレに笑顔になって

欲しいからそれを作って渡してくれた。

オレはその笑顔を守りたいと思った」



「オレは……自分で選んだんだ

どう足掻いても結局戦いに戻ってきてしまう。」


「他人を笑顔にする方法を

オレは戦う事しか知らないんだ。

どうやらオレはそういう人間らしい」


悲しみと憐れみに満ちた笑いが

ユリシアから零れた。


ユリシアはそっと

オレの手を両手で握る。


「バカを言うな。

貴様は勘違いしている。

貴様はただそこにいてくれるだけでいいのだ。」


「この国の象徴なのだからな」


静かな声とは裏腹にユリシアの

手は熱を帯びている。


「なあ……二人で身分を捨てて

どこか誰にも見つからない

山奥にでも住まないか?」


「ワタシは豪奢な暮らしには興味ないのだ。

貴様と二人でいられるのであれば

ワタシはそれでいい。」



「そうでもしないと貴様はきっと……

戦いに戻ってしまう」



そこまで思って……

オレはユリシアの目をじっとみる。



ユリシアの言葉を想像する。


誰にも知られない森で


二人で一緒に作物でも育てて


二人で料理をして


二人で作った料理を食べて。



たまに喧嘩をしたり

けど仲直りしたり。



想像のなかでのユリシアは

見た事もない程、笑顔で。


きっと……オレもそれを望んでいて。



オレはユリシアから目を逸らした。


思い出すのは花の冠をくれた

少女の笑顔だった。


オレは……

国民を見捨てる事はできない。


「………すまない」



オレは静かに天井を見上げた。

天井の向こうにあるのは、

星ではなく――果てのない責務だった。


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