44話 黄金より尊きもの
会議が終わり
オレは1人私室にいた。
「ピノ、飢饉はお前の
仕業だな?」
ヴァルキリーは運命を操る能力が
あるとは聞いていたが
初めて目の当たりにした気がした。
ピノが目の前にその姿を顕現させる。
「………そうだよ」
ピノは憐れみとも怒りとも
取れる複雑な表情をしていた。
「戦いから逃げる事は許されない。
それが私たちの仕事だからね」
考えてみれば姿は見せないとは言え
四六時中ずっと監視されている上に
心まで読まれている。
それはオレが戦い絶対に逃れられない様に
機能しているシステムだと
今更ながらに気づいた。
「なんでそんなにオレを苦しめるんだよ!!!
味方だと思ってたのに!!!」
ピノは悲しむような視線を向ける。
「この世界に居座る事は許されないわ
滞在は一時的なものだから」
「ヒメジマちゃんにはもう…
永遠に人を愛し続ける事は
この輪廻にある限り出来ないの」
「滅茶苦茶言ってんじゃないよ!!!
誰がそんな事望んだんだよ
無理やり押し付けやがって」
オレは歯噛みする。
どこまで行ってこいつら
自分の都合を押し付ける。
「一つ方法はあるわ
神々と共に歩むこと
神々もそれを望んでいる」
「私なら共に世界を渡れる。
ヒメジマちゃんが幸せになる事を望むなら
私を愛するしかないの。」
「ヒメジマちゃんを
一番愛しているのは
私なのよ」
ピノは笑みを浮かべる。
しかし、それは狂気の入り混じったものだった。
オレはその笑顔に寒気を覚えていた。
ピノの言葉は、狂っているはずなのにどこか正しい気がした。
もし愛が赦しでなく命令なら――
オレの戦いもまた、神々の掌の上だったのかもしれない。
――ならば、せめて最後の一戦くらいは、自分の意志で決めたい。
▼
朝、オレは目立たない服装に着替え
王都を歩いていた。
どうしても
自分の気持ちに
踏ん切りが
つかなかったからだ。
まるで神の言いなりの様に
戦争を起こす。
それが嫌だった。
王都はギスギスとした空気が
肌に刺さるようだった。
受け入れによって
口論が止まない街中。
せっかく王国内をよくしていったのに
そんな光景を見るのは胸が痛かった。
これが必死になって戦った結果
なのだとしたらあまりにも
やるせない
結婚式でユリシアと共に
通った街道。
クーデターが起きそうな事態にも
関わらず国民皆が協力して祝福してくれた
希望のウエディングロード。
あの時は希望に満ちたものだった。
未来が見えた気がしていた。
同じ道なのに今のオレには
どうしようもなく暗い道に見えた。
大勢の人間に支えられているはずだったのに
まるで世界で一人だけで
佇んでいる気分だった。
オレは孤児院に赴いていた。
戦災孤児たちを収容する為に
設置したものだ。
子供の無邪気に遊ぶ声が
聞こえていた。
オレはその姿を座ったまま
ぼぉーと見つめていた。
その笑顔を見る度に
自分が救われている
気分だった。
やってきた事が無駄では
なかったと思えたからだ。
「お兄ちゃん、
どうしたの?」
一人の女の子が
駆け寄ってきた。
「悲しそうな顔を
してるよ?」
「そんな事はないさ
大丈夫だよ」
オレは笑顔を作って答える。
心配して話かけてくれたらしい。
優しくいい子だ。
「あ、そうだ!
ちょっと待っててね」
女の子が何やら
草むらでごそごそやっていた。
持ってきたの野花で作った冠だった。
「これあげる」
女の子にオレはその冠を被せられる。
「ありがとう……
けどなんで?」
「この国の王様はね
悲しい顔をしてる人でも
笑顔にしてくれるんだよ!」
「だから、私も悲しんでいる人が
いたら笑顔にしたいんだ!」
その言葉を聞いていて
オレは涙が止まらなくなった。
そうだ、神々の実験だとか
何とかオレには関係ないんだ。
元々オレはこの女の子みたいな人間を
守りたかった
他人の幸福や未来を
どうあがいたって守りたいと思って
しまうんだ。
仕方ないじゃないか…
女の子によって被せられた花の冠は
オレにとって黄金の冠よりもずっと価値があった。
そしてそれは彼女らの未来を守る為の
戦争を決意するのに充分な理由となった。
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