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42話 愛は続かぬ国で

王宮に戻り。

数日が経つ。


相変わらず問題が

山済みだった。


特に頭を悩ませていたのが

600万もの

魔王領から逃げてきた。

元奴隷たちである。


これらを収容するには

国土が足りないのである。


元々はこの王国に住んでいた者なら

まだいいのだが

魔王によって滅ぼされた国の者も

いる為、文化背景が違い

それが対立を生んでいた。



かと言って、人道的に

受け入れを拒否する訳にも

行かない。


その上で食料が許容量を超えている為

備蓄の切り崩しを余儀なくされている。



頭の痛い問題だった。


オレは戦う事しかできない。

こういった門外漢だった。



「これでは勝ったのか負けたのか

分からんな」


「まあ、それでも、魔王側も

大軍での遠征が失敗した上

労働力不足で苦しいだろうがな」


オレの私室でユリシアが

茶を飲みながら皮肉に言った。


オレは何のために戦ってきたんだろうな。

国を救うためか? 神を出し抜くためか?


……違う。俺はただ、

“今この瞬間を生きている人間”を

守りたかっただけだ。


生前なら、それで良かった。


死後にただ勝てばいいわけではない

思い知るとは思わなかったが。




今日、オレはユリシアに

オレ自身の転生の事について

打ち明けるつもりでいた。



((ヒメジマ、私はもう後継者を決めている。

幹部の一部には自分が転生者である事も

伝えてある。))


((お前がどうするかは自由だがな

踏ん切りがつくようにはしておけ))


最後にあった時の先輩の言葉を

思い返していた。


助言には素直に従っておこうと思う。



ユリシアは随分とオレを支えてくれた。


政治面でも戦闘の面でも


彼女がいなければ魔王の侵攻は

防げなかったと思う。



そして、もしオレが死ねば

国のかじ取りは

間違いなく彼女に任せたほうが

良いだろう。



しかし、真実を告げた時

ユリシアはどんな反応を

するだろか?



ーーーー悲しむだろうか?


その事で胸が痛み

上手くいい出せなかった。



「なんだ、貴様、何か

話があるんじゃないか?

聞いてやるから言ってみろ

夫婦ではないか」


切り出せないオレを見かねてか

ユリシアが声をかけてくる。


なんだかんだで優しんだよなコイツは…


オレは話を切り出す覚悟を決めた。



オレはユリシアに

真実を告げる。


自分が転生者である事

魔王との関係性

ヴァルキリー達の存在や

神々の目的を告げる。


ユリシアの小さな手が

僅かに震えているのが

分かった。


それは今までユリシアが見せた事の

ない動揺の仕方だった。


「……質の悪いおとぎ話だ。」


少し、うわづった声でユリシアは

答えた。


「貴様がある日突然人が変わった様に

なったのは事実か……

深く追求してこなかったが…」


「それを何故今になって

ワタシに話そうと

思ったのだ?」



一瞬室内が静まりかえる。

何故か?答えは一つだ。



「後悔すると思ったからだ。」



「次、魔王と戦うとなると

勝っても負けてもどうなるか分からない。

オレの意思とは無関係にな」



「ユリシアには伝えておかなければ

オレの心残りになると思った。

だから伝えた。」



「貴様は勝手だ!!!!

人の気も知らないで」


目の前を見ると

ユリシアがボロボロと涙を

流している。


「ザムザよ。

……ワタシの弱点を教えてやろう。

ワタシは他人を信じる事ができないのだ」



「ワタシの人生は謀略ばかりだった。

人を騙し欺き。

だからこそワタシ自身も

人を信じる事が出来ない」



「…………」



「取るに足らない人物なら

王位を簒奪してやろうと

思っていた」



「だが、貴様は違った!!!

言葉をたがえることなく

国を本気で変えようとして

まとめて見せた!!!!

まるで英雄の様にな!!」



「そんな人間だからこそ

ワタシは信じてみようと

思えたのだ!!!!」



「こんな事なら愛さなければよかった!!!

ワタシはお前を失いたくはない!!」


涙ながらに吠えるユリシアに

オレは罪悪感に押しつぶされそうになる。



オレは何も言えなかった。

ただ、泣きじゃくるユリシアの肩に手を置く。

その小さな震えが、戦場よりもずっと重く感じた。


「……ありがとな」


それだけを告げて、彼女を抱きしめた。


ユリシアはそれでも耐え兼ねるかの様に

言葉をとめる事が出来ない。


「もう、誰かの為に戦う

必要はないではないか

貴様自身が犠牲になるばかりで

何も得るものがない」



「他人のことなど

放っておけばいい

素直に幸せな家庭を築き満足すればいい

たとえ、その先が破滅につながるとしてもだ」



「なあ……」


ユリシアの声は消え入るようだった。


オレは静かにユリシアを抱きしめ続け

戦うということから遠ざかっていく自分を、

どこか他人のように感じていた。


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