40話 神々に未来を見せて
「素晴らしい魂の輝きだわ」
フレイヤはヒメジマの魂の輝きを見て
興奮が冷めやまぬように語った。
「なるほど、ピノが気に掛けるのも
ワタクシにはよく分かる」
フレイヤはニヤリと笑った。
「人間よ。
我々の目的である戦闘教義。
もしかしたらお前は成し遂げるかもしれない。」
「その魂の輝きは人の子の意思の強さそのもの
その輝きが故にお前は選ばれたのだ」
「だが、ワタクシを納得させるには
それだけでは足りない、どうする?」
フレイヤは意地が悪く笑う。
クソ……ダメか。
どうやら、ヴァルキリーと
同じ様には行かないらしい。
それはそうだ、上位存在との交渉なのだ。
なら、どうすればいい?
少なくともオレの出来そうな事はやった。
そして、今にも消え入りそうなピノに
そこまで時間は残されていないように思えた。
「女神フレイヤ、取引をしよう」
声をかけたのはトガリだった。
「なぁに?アナタ如きが
ワタクシと取引なんて……」
「アナタから貰ったこの能力を返すよ。
その代わりにそのヴァルキリ―を助けて
欲しい。」
「なっ……」
オレはトガリの提案に驚愕してしまう。
その提案に、フレイヤも驚いていた。
魔王もだ。
「いいの?あれだけ最強にこだわっていたのに?」
フレイヤがトガリに問いかける。
「分かったんだよ。
本当の強さを得る為には
そんな力、必要なかったんだって」
「ヒメジマさんやナカタニさんと
戦ってね」
トガリがオレ達に向けて
ニコッと笑いかけた。
フライヤは理解できないのか怪訝な顔している。
「それにね。
ヒメジマさんやナカタニさんの対応は
ボクの作ったこの世界の結末を
大きく変えて、もはや予想もつかない」
「結末はどうなるか?
それが気になるんだ。」
「無用な横槍を入れて
その邪魔をしないで欲しいんだ」
「だってこの世界はアナタが
創造したとはいえ
元々は僕のものだから」
フレイヤは目を細める。
先ほどまでは気にもしなかった
トガリの魂がまばゆい程に
輝いていたからだ。
それは、トガリの元々のものではない
ヒメジマの影響を受けて自発的に
輝いていた。
それは、トガリだけでは
ヴァルキリーであるはずのピノでさえ
ヒメジマの影響を受けている。
生き方、行動で
人間だけではなく
神々すらも月の光の様に
輝かせるヒメジマの魂。
つまりそれは個人だけではなく
集団にも影響を与えるという事だ。
その可能性にフレイヤは穏やかに
笑った。
その収穫はピノを助けたとしても
あまりあるものだった。
「いいでしょう」
フレイヤはパチンと指を鳴らすと
ピノに周囲に光が集まりその体を再生し始める。
それは人間の意思が
神々に勝利した瞬間だった。
女神フレイヤの力によって
ピノの身体は復元していた。
トガリの身体から
淡い光が現れフレイヤの元へと
戻っていく。
それはトガリとフレイヤとの約束である
トガリの概念武装の能力の返還を指す
行為だった。
フレイヤはじっと
慌ててピノに駆け寄るヒメジマとピノの姿を
何かを思案するように見ていた。
フレイヤは静かに語り始める。
「……神々の予言者、ユミルの首に告げられた
最終戦争ラグナロクは……
本来、神ですら避ける事は敵わない。」
「それは予定調和。
神々の行っている
抗う事すら合理的に考えれば
無意味な事よ。」
「だが、世界が全て合理的に
回っている訳ではない。」
「合理では運命には逆らえない。
もし抗えるとすれば――非合理、つまり……」
「意思の力よ。」
フレイヤは絶対の力を持ちながら
縋るように語った。
「ヴァルキリーでありながら
狂気の愛をもつ異端者ピノ」
「本来、選ばれるはずがないにも関わらず
その言動と選択によって
世界を変え続ける
異端の魂ヒメジマ」
「ワタクシはお前達に
期待せずに負えないのよ」
「………」
フレイヤの話をオレは黙って
聞いていた。
フレイヤの語る話は
全く持って勝手な内容だが
理不尽に常に抗ってきた
オレには彼女らが自分と近い
スタンスなのだと感じた。
「話は終わりよ。
元の世界を戻しましょう」
フレイヤは指をパチンと
鳴らした。
白の世界に来た者達の姿が
少しづつ消え始める。
その姿を見ながら
フレイヤは静かな声でポツリと
告げた。
「どうか、神々に
未来を見せておくれ」
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