39話 神に背いても、あなたを
ノはフレイヤの
問いかけにすぐに答える事が出来ない
ようだった。
焦っているのが目に見えて分かった。
オレは先輩の方を見る。
生前は一緒に戦った仲だ。
出来れば戦いたくないと今でも
思っている。
それは先輩も同じなのか
怒りの表情を隠しきれていなかった。
本来であれば争い合わなくても済んだ
はずなのにピノ個人の思惑のせいで
こんな目に合っているのだとしたらーーーー
あまりにも無情すぎる。
「ピノ、どうなんだよ?
答えろよ!!!!!」
ピノはゆっくりとこちらを見る。
その目からは涙を流していた。
「え………」
その涙の意味をオレは知らなかった。
「私がヒメジマの魂を不正して
この世界に持ち去った理由は……」
「オーディン様の元では
彼の魂が救われないと思ったからです」
一同の視線がピノに集まる。
「…………その意味は?
不正をしてまで優先する事かしら?
自分の置かれている状況が分かっていて?」
「彼の祖国では
戦って死んでいった者達に敬意はありません。
他の者達が自分達の都合で歪めてしまうからです。」
「どんなにその者達がつらく苦しんで
死んだとしても
他者を思いやり死んだとしても
その思いが理解される事はないのです」
「あれほどの魂の輝きを放ちながら
必死で戦っているのに……
私はその思いに報いてやりたかった」
フレイヤはその言葉を黙って聞いていた。
ピノのその姿を憐れんでいるようにもみえた。
「彼は生前、最後に願いました。
次の人生は美女に囲まれイケメンに
そして才能に溢れた…」
「幸せな人生を送りたいと…」
「オーディン様の元は苛烈です。
その願いを叶えるのは無理でしょう」
「だから、不正を行い
こちらの世界に持ち去ったと?」
「その通りです」
オレは絶句する。
オレはこれまでピノを怪しんで
積極的に関わってこなかった。
なんで……
ちゃんと話してくれなかったんだよ。
いや……
オレが聞こうとしてこなかっただけなのか。
バカだ……
オレは………
こんなにもオレの事を思ってくれて
理解してくれて…
危険をおかしてまで行動してくれていたのに…
フレイヤはピノの言葉を
聞き終えると指をパチンと
鳴らした。
「感情論が過ぎる。
ワタクシには理解が出来ない。
ピノ、アナタに職務は遂行できない
消えて貰う事にするわ」
ピノの姿が足から少しずつ消えていく。
「やめてくれ!!!!!」
ピノを失いたくなかった。
「フレイヤ様!!!!
どうか、妹をお許し下さい!!」
リアも続くが効果がない。
「ヒメジマの魂は予定通り
オーディン様に献上する。」
フレイヤが冷酷ピノに告げた。
「ふざけるな!!!!
私の気持ちが理解できないのは
当たり前だ!!!!!」
ピノが激昂する。
「現場を見もせず
報告書を見もせず
理解をしようともしない。
ずっと現場をみている私の気持ちを
分かる訳がないだろう!!!」
フレイヤは目じりを僅かばかりつりあげるが
動じない。
「愚かねぇ、いくら虚勢を張ろうと
啖呵を切ろうとも
ワタクシの力の前では無力でしょう?」
「確かにフレイヤ様の力には及ばないでしょう
だけど、思いでは絶対に負けない!!!」
「私は私の土俵で戦う!!!」
オレはその言葉を聞いてハッとする。
自分の土俵で戦う。
オレの戦術でありオレがいつも
してきた事。
何をしているんだオレはいつも
考えてきたじゃねぇか。
考えろ
考えろ
考えろ
今この状況。
何をもってなら
ピノを助ける事が出来るか
あるいはフレイヤを止める事が出来るのか。
力じゃだめだ。
見た感じ絶対にかなわない。
となると、説得。
だが、情報が少なすぎる。
フレイヤの目的はなんだ。
そうだ。
フレイヤはドクトリンを求めているんだ。
それならーーーーーー。
「フレイヤ、止めてくれ!!!!!
オレが神々の求める最高のドクトリンを作る!!!」
「少なくとも、今までオレと魔王との
戦いで相当数のデータは集まったはずだ!!!!」
「オレが必ずそれを成す!!!
だからピノを消すのはやめてくれ!!!」
その言葉を聞いてフレイヤは
ピノを消す力を止めた。
フレイヤの目には光り輝くヒメジマの魂が
その目に映っていた。
それは神ですら見とれるほどの
美しさを放っている。
「ふふふふ。
ヒメジマちゃんの本当の価値を
知っているのは私だけ」
「その魂を輝かせる事ができるのは
オーディン様ではないわ。
私だけよ」
もはや、首から上だけになっていたピノが
誇らしげに笑っていた。
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