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篠宮琴音は幼馴染で、そして――

 立ち上がる。

「幸一……?」

 そんな不安そうにするな琴音。どこにも行かねえよ。

 信じられないかもしれないけど、俺はお前の事を―世界で一番好きなんだぜ?

 言っても駄目なら、言葉で伝えるのはもう諦める。

「なあ琴音、本当はお姉さんの事は好きなんだろ?」

「な、何よ急に?」

 お前は好きだったハズだ。

「祭の日に、お前はこの場所を何て言ったか覚えてるか?」

「……嫌い?」

「その後だよ。お前はここを『あんなに楽しい場所』って言ったんだよ。嫌いな人がいた場所を楽しいなんて言わないだろ?」

 お姉さんがいた夏休みは、本当は楽しい思い出だったハズなんだよ。

「どうなんだ?」

 再び問い掛ける。

「お姉さんは優しくて、いい人だった。もちろん私も好きだった―でも……」

 でもの続きはない。言わなくてももう何度も聞いている。

「良かったよ、お前がお姉さんを本当は嫌いじゃなくて」

 それが聞けて良かった。それなら後は俺の問題だけだ。

 お前に信じて貰えない不甲斐ない俺の問題だけ。

「俺がお前の不安さえ拭えれば、全てがハッピーエンドって事だな」

 バッドエンドを何度も繰り返してやっと見えたハッピーエンドへの道。

「琴音」

 優しく琴音の左手を取る。

「これが俺の表せる精一杯の気持ちだ」

 その手の薬指にリングをつける。

「不安なんて感じさせない。お前が嫉妬深いなら、俺は愛情深いんだよ」

 俺の愛が重すぎてドン引きするなよ?

「好きです。絶対に幸せにするって誓う、だから―」

 取って置きでも何でもない一番大切だと相手に伝える方法

「俺と結婚してください」

 プロポーズだ。

「……………………結婚?」

「結婚」

「なんで?」

「お前が好きだから」

「だから結婚なの?」

「そうだよ」

 これが今の俺に出来る最大級の愛情表現。

 何を言っても信用出来ないならそれが俺の―覚悟と約束の証だ。

 お前の神社の神様達が桜貝を渡して約束するなら、俺は人間らしく婚約指輪で誓う。

 俺は琴音の事が好きだと、一番特別だと、大切だと、人間らしく―誓う。

「くっ、くく……」

「琴音?」

「あははは!」

 琴音は大笑いし始めた。

「アンタ、ホントにバカね! プロポーズって! くくっ」

「う、うるせえ。こうでもしないと俺の言葉を信用してくれないだろ?」

「もっとロマンチックにプロポーズ出来なかったの? ブルーシートの上って」

「生憎ロマンを知らないもんでね」

 星も綺麗で景色がいい場所を選んだつもりだったのだが……。

「……はあ笑った。確かに桜貝よりも特別の証ね、これは」

 薬指につけた指輪を琴音は眺める。

「ただの安物のシルバーリングだけどな」

 霊験あらたかな桜貝なんていい物じゃない。

 オッサンの店の商品の中の自分で買える範囲の物を買っただけだ。

「それで答えは?」

 まだ聞いていない。本当に俺の気持ちが伝わったかどうか。

「最後に聞かせて? 何でここまでしてお姉さんを助けようとするの?」

 それは愚問だ、琴音。

「鈴音から頼まれたってのもあるけど……」

 お前は何年、俺の幼馴染をしてるんだよ。

「存在が消えそうな少女を助けるのは当たり前だろ?」

―ロマンは知らない。

 それでも困っている少女を助けるべきなのは知っている。

 例えそれが昔は自分よりも、お姉さんだった存在だとしても。

「アンタ、ホントにいつか捕まるわよ?」

「人助けして捕まってたまるか!」

「ふふっ。そうよね、そうだったわね。アナタはロリコンだものね」

「違うって言ってるだろ? 大体、俺が好きなのは―」

 一番大切にしているのは―

「おま……」

「ねえ、幸一」

 また一番いい所でセリフを被せられた!?

「私もよ」

 俺が何を言いたかったか分かっているような返事だ。

「ねえ、幸一こんな面倒な私でも幸一が一緒に居てくれるっていうのなら」

 琴音は笑顔で言う。

「不束者ですが……よろしくお願いします」

 つうじた。

「好きだ琴音」

「分かってる」

                    篠宮琴音

「大好きだ琴音」

「知ってる」

                    俺の幼馴染で

「愛してる」

「そうよね」

                    初恋の相手で

「絶対に幸せにする」

「お願いするわ」

                    恋人で、そして―

「俺の一番特別で大切な人」

「うん―信じているわ」

 琴音を抱きしめる。

「ありがとな琴音」

「好きよ幸一」

 琴音も抱きしめ返してくれる。

 静かな時間が流れ、波の音だけが聞こえる。

 心地よい空間が俺と琴音をゆっくりと包みこんでいく。

「ねえ幸一?」

 琴音が静寂を破る。

「厭らしい事しよっか」

「ぶっ!」

 急に何を言い出すんだよ、お前は!?

「言ったでしょ? 元々祭の日に、私は厭らしい事をするつもりだったって。でも、あの時は幸一を信じられなかったけど―今は、違うから」

「琴音……」

 見つめ合う。

 ゆっくりとお互いの顔を近付けていく。

「ごめんね君達。イチャつくのはまた今度にしてくれるかな?」

 ビグッと二人で驚いて、急いで声の方を向くとそこには―白いワンピースに、白い髪そして胸元には桜貝のネックレスをつけた少女。

 俺が初めて真白と出会った時と同じ姿の少女がそこにはいた。

「お姉さん!!」

 琴音は俺から離れてその人物に抱きついた。

「久しぶりだな。大きくなったね」

 そう言って自分よりも大きい琴音を、年長者のように優しく抱きしめて笑う。

 真白が笑ったらこんな感じなのか……。

「ごめんなさい。ごめんなさい! お姉さん」

 涙を流して謝る琴音。

「うん。私も悪かったな琴音」

 真白そっくりのお姉さんは、優しく琴音の頭を撫でた。



 桜貝―繋がったままの二枚の貝殻を分け合うといつまでも繋がっていられる。

 馬鹿バカしくて社会のレポートに書くくらいしか価値がなかったハズのお呪いは、その役目を果たし、二人をもう一度引き合わせたのだった。。

 こうして俺達は三度目にしてやっと真のハッピーエンドを迎える事が出来たのだった。

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