最初のバッドエンド
「中々、やるね幸一君」
「まあ、妹と一緒に家で遊ぶ事もありますからね」
流石にファミコンは初めてだが、シンプルな対戦ゲームのため感覚でなんとかなる。
ピコピコと動くドット絵を操作して行く。
ゲームの腕前も喧嘩と同じく、チートみたいな強さかもしれないと身構えていたが、一般的な強さであって安心した。
ジリジリとお互いの体力が減って行き、最終的に俺が適当に投げた、棒みたいな道具が先輩の動かすキャラに当たって倒した。
「あ、勝った」
地味な終わり方で反応が薄い。
「リアルなら当たる事ないんだけだなあ……」
こんな凶器を振り回すようなゲームと同じ事をリアルで経験しているのかこの人……。
「もう一回しよう!」
「駄目ですよ。先に教えてくださいよ」
「いやでも、分かってるでしょ? 倒せばって、ゲームじゃなくて喧嘩だって事くらい」
「先輩ともあろう人が、負けてから言い訳ですか?」
すでに勝負に乗ったんだから諦めて欲しい。
「結構いけずなんだね幸一君は」
いけずって……。
「まぁ確かに負けは負けだね。それで何が知りたいんだい?」
意外とあっさり諦めてくれたな。それなら―
「鈴音と協力して何をしようとしているんです?」
少し驚いた様子を見せる神宮先輩。
「……どうして鈴音君と協力していると思ったか聞かせてくれるかい?」
「鈴音が先輩と同じ事を隠していたからですよ」
「僕が鈴音君と?」
「鈴音は俺に神様の存在が消えても記憶が残る事を隠していました。そして、小学生の夏休みに俺と真白が会っていた事も」
鈴音は知っていたのだ。
「鈴音の記憶が残る事も、俺と真白が会っていた事も鈴音から先輩は聞いて知ってるはずですよね? それなのに何故、俺に黙っていたんですか?」
神宮先輩も知っていたのだ。
「先輩は鈴音と同じ事を俺に隠していたんですよ。だから俺は先輩と鈴音が協力して何かをしていると思ったんです」
幽霊調査も俺と真白を接触するために仕組まれていたように思える。
「でも何で先輩と鈴音が俺に嘘を吐いてまで、真白の正体を隠したのかが分からなかった」
二人が何をするつもりなのか―分からなかった。
「なるほどね。そこまで気付いたんだね幸一君」
俺の推測が当たっている事を神宮先輩はほのめかす。
「そうだね、まずは僕の正体かな。ラスボスこと神宮功、その正体は君の言ったとおり―八夜神社の神様だよ。まさか和久の写真でバレるとは思ってなかったけど」
俺もまさかだった。
「君達の言い方を借りると『お姉さん』かな?」
お姉さん。夏休みに出会った真白の事をそう呼んでいたらしい。
「僕と鈴音君は君とお姉さんが迎えてしまった、バッドエンドをハッピーエンドに変える事が目的だったんだよ」
何を言っているんだ?
「いつか君に言ったよね。君達はもうエンディングを迎えているって。それは君がお姉さんを救えなかったバッドエンドなんだよ」
俺がお姉さんを救えなかったバッドエンド?
「幸一君、僕が神社の神様だとして、それじゃあ、お姉さんの正体か何か分かるかい?」
お姉さんの正体?
「正体って……」
そういえば、何になるんだ?
「じゃあ、夏休みに君が出会ったお姉さんは真白ちゃんだと思ってる」
「一緒じゃないんですか?」
神様の存在が消えただけで、真白という名前が付いただけで今も昔も同じなのでは?
しかし、先輩は首を振った。
「真白ちゃんは消えかけたお姉さんに新しく生まれた存在って言ったよね。つまり、君が小学生の夏休みに会って、この前、存在が消えたのは―君達がお姉さんと呼んでいた、真白ちゃんとは全く別の存在なんだよ」
全くの別の存在だって?
「じゃあ、結局お姉さんは何者なんですか?」
神社の神様でもないのなら。
「実は神様というのは本当なんだよ。お姉さんは八夜神社の前の跡地にいる神様なんだ」
八夜神社の前跡地、俺と琴音が祭の日に二人で行った場所で、俺が記憶を亡くしたあの夏休みに皆で遊んだ場所。
「正しくは、前跡地に作られた小さな祠の神様だけど」
祠なんてあったか? 暗くて見落としたのだろうか?
「凄い昔の話だけど、一応、そこにも少しは人が来ていたんだ。時代も代わって、立ち入り禁止なり、誰も訪れなくなった」
確かに関係者以外立ち入り禁止の看板が置かれていた。
「誰からも必要とされない、誰からも忘れ去られた神は存在が消える。存在の意義がなくなって消えるんだ」
存在意義がない……。
「もうほとんど消えかけていた所に来たのが君達なんだよ。鈴音君と琴音君が親から教えてもらったその場所を、秘密基地だと言ってね」
「そこで会ったのがお姉さんなんですね」
「琴音君も記憶が無くならないのは知っているだろ? あの姉妹は特別に神職としての力が強かったんだろうね」
言っている意味はよく分からない。
ただアイツらがとんでもないのは分かる。
「えっと、二人の力が強いせいでお姉さんは俺達の前に現れたって事ですか?」
「うん、そう言う事だね。夏休みは彼女へ会いにずっとそこへ遊びに行ってたね」
真白と同じ見た目なら当時は、確かにお姉さんだよな。
「でも、琴音君が少しずつ遊びに行かなくなった」
「…………」
俺がお姉さんに懐いたせいで。
「鈴音君はお姉さんの存在が消えるのを止めようとしたけど、琴音君は逆の立場だった」
それは、今の琴音の様子を見れば想像が出来る。
「結局、どうする事も出来ずに夏休みは終わり、お姉さんの存在は消えてしまった」
俺があの夏休みの事を覚えていないのは、お姉さんの存在が消えたからか。
「それが最初のバットエンドだね」




