じゃあ牛串で
「三百円ちょうど! ありがとね!」
6個入りのたこ焼を屋台のおっちゃんから受け取る。
それにしても、このたこ焼を一個五十円と考えると、少し高く感じてしまう。
祭の最中にそれを考えるのはタブーだろうが。
真白の一言のせいで他の二人の胃を刺激したようで、柚葉はお好み焼き、詩子は焼きトウモロコシを注文された。
3人で買いに行って、はぐれるのも面倒だったので仕方なく一人で買いに出た。
完璧にせがまれたら断れない、近所のチョロい兄ちゃんである。
オッサンの店で名ばかりのバイトをしているおかげで三人分くらい余裕で払えるのだが。
こういう時くらいしかお金を使う機会がないので、三人の喜ぶ顔が見れるなら安い物だ。
まあ真白の喜ぶ顔は見れないだろうが。アイツ無表情だし……。
最近になって気づいたが真白の首は犬の尻尾のような役割をしいてるようで、嬉しい時は何度か連続で頷く傾向がある。だからもし美味かったら何度か頷いてくれるだろう。
それにしても、真白が大喚起した時はヘッドバンギングでもするのだろうか?
少し見てみたくはあるがキャラが壊れそうだ。
「あれ? 幸一先輩じゃないッスか」
「ん、鈴音?」
声が聞こえた方を向くと学校指定のジャージを来た鈴音がいた。
「またサボりか?」
「流石に僕も祭の当日までサボれないッスよ。ちょっとお客さんを送って来た所ッス」
「お客さんを見送るって言う割にラフな格好だよな」
「まあ、お客さんって言っても親戚みたいなもんスから」
「ふーん」
じゃあ、本当にちゃんと手伝ってたんだな。
「それにしても先輩、なんか美味しそうな物を持ってるじゃないッスか」
「やらねえぞ?」
「欲しいって言ってないじゃないッスか。人のモノを取るほど僕は厚かましくないッスよ」
「そうなのか?」
「はい。だから人の分は取れないんで、僕の分を先輩が買ってください」
「余計厚かましいだろ!」
とんでもない奴だ。
「いいじゃないッスか。どうせその買った食べ物もチビッ子にあげるやつッスよね? それなら幸一先輩の可愛い後輩の僕にも買ってくださいッスよ」
バレている。
「先輩が一人でその量食べるわけないッスからね。昨日の話を聞いてあげるッスから」
「……どこまで知ってる?」
「それも含めての交換条件ッス」
後輩じゃなかったらぶん殴ってるところだ。
「ハァ……分かった、買ってやるよ」
「チョロいッスね」
後輩女子で幼馴染じゃなかったら殴っているところだ。
「つうか、手伝いの最中じゃなかったのか?」
「見送りしてたんスけど、早めにあの人達だけでどっか行っちゃったんスよ。だから少し時間空いてるんで大丈夫ッス」
お客さんってのは複数人か。勝手に一人だと勘違いしていた。
「いや、それなら早く戻って仕事を手伝ってやれよ」
「琴姉だって昨日、遊んだのに僕だけ遊べないのは不公平ッス。だから少しくらいならサボったって罰は当たらないハズッスよ」
お前は普段からサボっていただろ。その分の罰くらい当たるげきだろ。
「それに今日は元々酒宴の場、無礼講ッスよ。罰を与える神様だって遊んでいる日なんで許してくれるはずッスよ」
その神様は存在すら今は消えているのだが。
神宮先輩は大丈夫と言っていたが、本当に大丈夫なのだろうか。
心配しても何か出来る訳でもないので先輩に任せるしかないのだけど。
「まぁ何でもいいや、何食いたい?」
「じゃあ牛串で」
「容赦ねえな」
ここらの屋台で一番高い注文じゃねえかよ。




