ロリ3人からの説教
「コウ兄ちゃんは馬鹿なの!」
「死んで詫びるのです」
「あほ」
祭二日目、今日が祭の最終日である。
昨日約束した通り、柚葉と詩子に会いに来たのだが、二人に琴音と何があったのか聞かれたので正直に話すと、まず正座させられて説教が始まった。
「早く私を―選んでね」
そう言った琴音は、神社の手伝いをしないといけないから―と言ってブルーシートの片付けを俺に頼み、一人で帰ってしまった。
俺はその帰る後ろ姿を止められず、ただ見送る事しか出来なかった。
「そこは後ろから抱き止めてだなコウ兄ちゃん」
「俺が好きなのはお前なんだって強く言うところですよお兄さん」
「あほ」
「おい一人だけずっと、あほしか言ってない奴がいるぞ」
真白だ。今日は楽ではなく俺の方に付いて来た。
コイツにも浴衣を着せてやりたかったが残念ながら丈の合う着物がなかった。
白いワンピースに桜貝のネックレス。髪が黒い以外は初めて会ったあの日と同じ服装だ。
「マシ姉ちゃんの言う通り、あほで合ってる! コウ兄ちゃんはあほだよ! あほ!」
「言い訳の余地がないあほです」
「あほ」
「ぐっ」
味方がいない。
マシ姉ちゃんは真白の事なのだろうが……コイツら本当に好き勝手言いやがるな。
「でも琴音は琴音で、よく分からない事を言うんだぜ?」
あの神社の跡地に呼んだ理由も、そこが嫌いな理由も、琴音が言った彼女が誰なのかも、俺を信じられない理由も、全てが謎だ。
「コウ兄ちゃんが、そんな大切な事を忘れるから悪いんだよ」
「そうなんだよなあ……」
柚葉に痛い所を突かれる。
「でも本当に琴音が何の事を言っているのか分からないんだよ」
「というかお兄さんに、昔、お姉さん以外に好きな人がいたんですね」
「んー」
私を選んでと琴音は言った。なら他にも対象となる人物がいるという事だ。
しかし、誰の事か検討もつかない。琴音の勘違いではないかと思うくらいだ。
俺が琴音の事を好きだと気付いたのは中学に入学した後だ。
確か鈴音に琴音の事をどう思っているか聞かれた時だった気がする。
一緒に居たい。特別に思っている。誰にも渡したくない。
それが恋愛感情だと鈴音に指摘されて、初めて自覚したのを今でも覚えている。
「さっぱり思い出せん」
俺が琴音を好きになる以前に好きな人なんていただろうか?
「駄目な男だなあ」
小学生に呆れられてしまった。
「ロリコンお兄さんの事です。道で見かけた幼女に欲情したのを見られたんですよ」
「しねえよ。俺は幼女に欲情した事はない」
「え、じゃあ昨日アタシ達を襲ったのは何だったんだよロリ兄ちゃん」
「襲ってねえよ。ただのスキンシップだ」
「変態さんの良い訳です……」
「うるせえ、もっと女性的な魅力がついてから言え」
つうかロリ兄ちゃんだと俺がロリになるだろ。
しかもロリなのに兄ちゃんって語義が矛盾している。
「だいたい俺は―」
年上好きだと、言い掛けて辞める。
「また年上好きとか言うの?」
柚葉にまで被せて言われる。そんな鉄板のネタになるくらい言ってたのか俺は。
「なんでコウ兄ちゃんは姉さんの事が好きなのに、年上好きなんて言ってるの?」
「琴音の身長が高くて大人っぽいからか?」
「なんでお兄さんが疑問系なんですか」
「そんな事言ってるから姉さんも不安になったんじゃないの?」
その可能性はある。という事は俺の昔、好きだった人は年上か?
「なぁコウ兄ちゃん! イロ姉ちゃんとかは?」
「彩葉さん?」
方原彩葉―柚葉の姉であり一つ上の先輩だ。
確かに年上で親しい先輩と言えるのはこの人くらいだ。
ただ柚葉に紹介されて知り合ったのは中学の頃だ。
その時はすでに琴音に対して、そういった感情を抱いていたはずである。
「いや、彩葉さんではないな。……そういえば今日、彩葉さんは?」
「家で受験勉強してるよ。毎日毎日そればっかだよ。こんな日くらい遊べばいいのに」
彩葉さんは三年だから受験生か。俺も来年から受験生だがあまり想像がつかない。
そういえば、もう一人、三年の先輩に知り合いがいたな。
あの人は受験勉強とか全然していなさそうだ。する必要も全然なさそうだけど。
「ま、遊んでくれないイロ姉ちゃんの事はいいだろ」
「そうです。切り替えて今日は遊ぶです」
俺はとてもそんな気分になれないんだが―ん?
「お前ら、昨日も腕にそれ着けてたか?」
二人とも腕に桜貝が付いたブレスレットを着けている。
「二つペアで売ってるのを、ウタと欲しそうに見てたらくれたんだ!」
「いい人でした」
そのアクセサリーを売ってるオッサン、多分俺の知り合いだな。
「そりゃ良かったな」
俺が子供に甘いのは多分、和久のオッサンに似たんだろうな。
と、クイクイと袖を引っ張られる。
「こーいち」
「ん? なんだよ真白?」
久しぶりに口を開いたなお前。
「たこやき、たべたい」
「自由な奴だな、お前は……」




