そういえば
帰っていい、とオッサンに言われ、帰る準備をしている時に
「おい坊主、これ持って帰れ」
と言われ、細長い箱を渡される。
「何これ?」
「何って、お前が俺に頼んだんだろうが」
「?」
「鈴音の嬢ちゃんには、お前が桜貝を持っているのがバレちまったけど、何を作ったかまではバレてないはだろうから、サプライズにはなるんじゃねえか?」
「サプライズ?」
何の話だ?
箱を開いて渡された箱に入ってたものを確認してみると。
「これ……」
ネックレスであった。それも先端に一枚の桜貝が装飾された。
「俺のは後回しって言ってなかった?」
「お前に渡せるタイミングで作っちまおうって思ったんだよ」
そうなのか。
「ま、受け取ったなら帰りな」
バイトも終わり真白を自転車の後ろに乗せて帰る。
二人乗りに慣れてきたのか、最初ほど強くしがみつく事はなくなった。
そして、家に着いてすぐ―
「これお前の?」
オッサンから渡された桜貝のネックレスを真白に見せる。
「そうなの?」
「いや、そうなのって……」
琴音から話では、その桜貝は男の神様との約束の証のはずなんだが?
記憶が亡くなっているのは分かるが……もう少し大切にしてやって欲しい。
「まあいいや。これは、お前が持っとけよ」
記憶の無い時にオッサンに頼んだ桜貝のネックレスだが、真白がネックレスを持っていないのなら真白の物で合っているだろう。
「ん」
くれる物なら貰うといった感じに真白はネックレスを受け取る。
手に取ったネックレスの根本を掴んで垂らす。
プラプラ揺れる先端の桜貝をジッと見つめ、首を傾げる。
「つけて」
今、受け取ったばかりのネックレスを俺に返してくる。
「ハァ……着けてやるから貸せ」
真白からネックレスを手渡される。
「後ろ向け」
言われるがまま、真白は俺に背を向ける。長くてサラサラする髪を横にどける。ネックレスを付けるために手を前に回そうとするが、何故か顔が振り返っている真白と目が合う。
「……前を向け」
コッチを見るな。やり辛い。
小さく頷いて素直に顔を前に向けたのでさっさと金具を止めてしまう。
「着けたぞ……て、あっおい!」
着けた瞬間に真白はパタパタと走り出すと、すぐそこのスタンドミラー前で止まる。
自分の姿を確認したかったようだ。何だかんだ普通の女の子と同じ感じである。
「ん」
鏡を見ながら真白は何度も頷いている。あの反応はどうやら喜んでいるようだ。
「寝る時は外せよな」
「わかった」
いい返事だが外す役目もどうせ俺だろう。
「こーいち」
改めるように名前を呼ばれる。
真白は鏡に向けていた体を俺の方へ向きなおした。
「にあう?」
小首を傾げている真白はとても魅力的に思えた。
「ん、ちゃんと似合ってるよ」
「……そう」
どうせいつもと変わらない無表情だろうが、褒められてそっぽを向いた真白の顔が照れた顔をしているかもと想像したら、少しおかしな気持ちになった。
夕飯も食べ終わり、スッカリ仲良くなった楽と真白が一緒に風呂に入っているので一人寂しくリビングのソファーにもたれている。
「そういえば」
と思い出したように独り言を口にしているが、本当は頭の中でずっと覚えている。
しかし、何か口にしないと改めて実行に移せない事もある。
ポケットの中にある携帯を取り出し、琴音へのメッセージ画面まで操作する。
電話にするか、メッセージにするか。
前に真白の事で電話した時はブチ切れられたのでメッセージで送った方が安全だろう。
それに忙しい時だったら悪い。
『祭の日、予定がないなら一緒に行かないか?』
女子を遊びに誘う文面ってこんな感じでいいものなのだろうか。
まあ、琴音相手ならこれでも固いくらいか。
あまり深く悩まず送信ボタンを押す。
送信して数分後、シャンプーの香りを漂わせながら二人が風呂から上がってきた。
「じゃあ、真白さんお願いするぜ」
「ん」
風呂から上がったと思えば今度は仲良くストレッチを始めた。
真白が来てからここ数日は、ずっとこの流れである。
風呂上がりにストレッチをする楽の日課に、真白が付き合っている感じだ。
楽の背中を押す真白の胸元からネックレスが垂れ下がっている。
流石に風呂まで付けてないだろうから取り外しは楽に頼んだのだろう。
「おっ」
二人の様子を見ていると、琴音からの返信が送られてきた。
『行く』
それだけ。なんとも味気ないメッセージだ。
と、少し間があいて追加のメッセージが送られて来た。
『二人?』
「…………」
琴音に返信をする。
「おい楽」
180度くらい開脚して体をベッタリと床と密着させている軟体動物のような妹を呼ぶ。
「何? 兄ちゃん」
かなりキツそうな体勢なのに平気そうに返事をしている。
「頼みがあるんだけど」




