鳩が豆を食う顔
「ありがとうございまーす!」
元気のいい大学生くらいの店員さんの挨拶を背に、クーラーの効いたコンビニから名残惜しさを感じつつ出る。店内でアイスを食べるわけにもいかない。
どうかフードコートをこのコンビニにも設置してくれないだろうか。
無いものはないのだから外で食べるしかないのだが。
当たりのアイス棒と交換したアイスを食べる俺の隣で、真白は自分で新しく選んだシューアイスを頬張った。
「…………」
いや、いいよ。いつも俺はこのアイスを食べているから。
本当に別にいいんだけど……何だろうかこの納得のいかない感じは。
丸坊主がパッケージに書かれたソーダ味の棒アイスである某アイスは半分も食べない内に暑さのせいで溶け始める。
棒から溶け落ちそうなアイスを無理やり口に突っ込むと、頭にキンとした痛みが走る。
「くぅ…………ふぅ」
痛みが引く頃、シューアイスの残り一口を真白は口に運んだ。
「ごちそうさま」
礼儀正しい。
ゴミをゴミ箱に。ポイ捨て、ダメ絶対。
さて、アイスも食べた事だ。
「これからどうするかな……」
今日のこれからもだが、真白との今後について、だ。
真白との今後と言うと、恋人同士の未来を案じているみたいだが。
結構真面目な話、このままではアイスを奢るどころではない。
人ひとりを養う事になりかねない。流石にそんな甲斐性、俺にはない。
早々に問題の解決を要求されている。
問題解決の糸口になりそうな八夜神社は、琴音がピリピリしているため近づきたくない。
現状を考えても、俺は正体不明の少女を連れ回している男子高校生だ。
普通に事件だ。捕まる前に何とかしなくては。
悠長にアイスを食べている場合じゃなかったかもしれない。
しかし、何をすれば? やはり怖いが八夜神社に行くしか―
「あれ? 幸一君?」
呼ばれた名前に反応して声の方を見る。
「え」
見て固まる。
「ん? どうしたんだい? 鳩が豆を食らった顔して」
普通に餌を食べてるだけだろそれ。
しかし、実際に受けた衝撃を表すなら豆鉄砲を食らった程度じゃ済まなかった。
俺の通う学校で一番の有名人、神宮功が大量の血を浴びた状態で気さくに話しかけてきた衝撃は、鳩が実弾を受けたくらいには衝撃的だった。




