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【20話完結保証】冷徹な不倫夫にすべてを奪われた研究者の私が、16年前の小さな優しさに救われ、世界一愛されるまで。  作者: 杜英智


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第7話 家族三人のはずでした

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第7話 家族三人のはずでした


翌朝。


私はほとんど眠れなかった。


目を閉じるたびに陽菜の言葉が蘇る。


「ママよりお姉ちゃんの方が好き」


「パパとお姉ちゃんと三人でいる方がいい」


胸が苦しかった。


それでも仕事へ行かなければならない。


私は鏡の前で化粧をする。


腫れた目を隠すためだった。


誰にも知られたくない。


私が壊れかけていることを。


支度を終え、ダイニングへ向かう。


朝食くらいは陽菜と一緒に食べたかった。


それだけだった。


本当に。


それだけだったのに。


ダイニングへ入った瞬間、私は足を止めた。


恭弥がいた。


珍しく昨夜から屋敷にいたらしい。


長いダイニングテーブル。


上座には恭弥。


その隣には美玲。


向かいには陽菜が座っている。


そこは元々、私たち家族の席だった。


恭弥の隣が私。


向かいに陽菜。


結婚してからずっと変わらなかった席順だ。


けれど今。


私の席には美玲が座っていた。


まるで最初から自分の場所だったかのように。


胸が痛む。


それでも私は何も言わなかった。


せめて陽菜の隣に座ろう。


そう思い椅子へ手を掛けた瞬間だった。


「そこじゃない」


恭弥の声が響く。


私は固まった。


「え……?」


恭弥はテーブルの端を指差した。


「お前はあそこに座れ」


血の気が引いた。


そこは来客用の席だった。


しかも重要な客ではない。


西館に泊まる客や随行者が使う下座。


この家で最も立場の低い席だった。


「恭弥……」


思わず声が震える。


だが恭弥は私を見ない。


「聞こえなかったか」


私は何も言えなくなった。


使用人たちも俯いている。


誰も助けてくれない。


私は黙ってその席へ座った。


まるで。


自分が他人になったみたいだった。


陽菜はそんな私をちらりと見た。


けれど何も言わない。


以前なら、


「ママ、こっち!」


と笑いながら手を振ってくれたのに。


今は違う。


「ねえ、パパ」


陽菜が嬉しそうに言った。


「今度のお休みね!」


「ああ」


恭弥が微笑む。


「楽しみにしてろ」


「うん!」


陽菜は満面の笑みを浮かべた。


「美玲お姉ちゃんも一緒なんだよね!」


「もちろんだ」


三人が笑う。


まるで本当の家族みたいに。


私だけがそこにいない。


最初から存在していないみたいに。


私は俯いた。


朝食の味なんて分からなかった。


仕事を終えて帰宅した時だった。


リビングへ入った瞬間、私は足を止める。


見慣れない写真立てが置かれていた。


一つではない。


二つでもない。


何個も。


テーブルの上に。


棚の上に。


まるで誰かがわざと並べたかのように。


私はふらふらと近づく。


一枚目。


水族館。


陽菜と美玲。


二人で笑っている。


二枚目。


公園。


陽菜を真ん中にして、美玲と恭弥が並んでいる。


三枚目。


レストラン。


三人でケーキを食べている。


どの写真も楽しそうだった。


幸せそうだった。


そして最後に。


一番大きな写真立てが目に入る。


そこに写っていたのは。


恭弥。


美玲。


陽菜。


三人の笑顔だった。


写真の下には陽菜の字で書かれている。


『だいすきなかぞく』


私は息を呑んだ。


家族。


その言葉が胸を抉る。


私たちは家族三人のはずだった。


ずっとそう思っていた。


けれど。


この写真の中に私はいない。


そこへ足音が近づいてきた。


振り返らなくても分かる。


美玲だった。


「素敵でしょう?」


楽しそうな声。


私は何も答えない。


「陽菜ちゃんがどうしても飾りたいって」


美玲はくすりと笑った。


「家族の思い出だからって」


家族。


またその言葉だった。


私は写真から目を離せない。


そんな私を見て、美玲は満足そうに微笑んだ。


「奥様」


私はゆっくり顔を上げる。


美玲は勝ち誇った顔で言った。


「もう気付きませんか?」


その笑みを見た瞬間。


嫌な予感がした。


「何を……?」


「その家族に」


美玲は写真へ視線を向ける。


そして。


残酷なほど優しく笑った。


「奥様はいないんです」


私は何も言えなかった。


何も。


言い返せなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


本作は毎日12時30分に1話ずつ更新予定です。


また、第5話・第10話・第15話・第20話ではイラストを掲載予定です!

ぜひお楽しみに!


「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!

次回もよろしくお願いいたします。

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