第3話 妻の私が邪魔者でした
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少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは本編をどうぞ。
第3話 妻の私が邪魔者でした
美玲がこの屋敷で暮らし始めてから数日が過ぎた。
私は以前と変わらず仕事へ向かっていた。
本当は家にいたい。
本当は陽菜のそばにいたい。
だけど、それはできない。
私は働かなければならない。
陽菜のために。
この子の未来のために。
愛する娘のために。
だから私は毎朝、後ろ髪を引かれる思いで屋敷を出ていた。
けれど。
最近、どうしても気になることがあった。
美玲だ。
私が仕事へ行っている間。
陽菜と一緒に過ごしている。
もちろん心配だった。
けれど、どうすることもできない。
恭弥に何を言っても無駄なのは分かっていた。
むしろ反論すればするほど、美玲をかばうだろう。
だから私は我慢した。
ただ我慢するしかなかった。
ある休日。
久しぶりに仕事のない日だった。
朝から少し嬉しかった。
今日は陽菜と一緒に過ごせる。
最近は仕事ですれ違うことも多かった。
朝は慌ただしく。
夜は陽菜が眠ってしまっている。
ゆっくり話す時間もない。
だから今日は一緒に遊ぼう。
そう思っていた。
「陽菜」
娘の部屋を訪ねる。
陽菜は振り返った。
「あ、ママ」
その笑顔にほっとする。
まだ大丈夫。
そう思った。
「今日はママお休みなの」
私は微笑んだ。
「久しぶりに一緒に遊ばない?」
公園でもいい。
買い物でもいい。
お菓子を作るのもいいかもしれない。
陽菜と過ごせるなら何でも良かった。
けれど。
陽菜は少し困ったような顔をした。
「ごめんなさい」
私は首を傾げる。
「どうしたの?」
「私、約束してるの」
「約束?」
その時だった。
廊下から声が聞こえる。
「陽菜ちゃん、準備できた?」
私は振り返った。
そこに立っていたのは美玲だった。
柔らかな笑顔。
優しそうな表情。
まるで本当のお母さんみたいに。
「あ!」
陽菜の顔がぱっと明るくなる。
「できてる!」
嬉しそうに駆け寄る。
その姿を見て、胸が少し痛んだ。
「どこかへ行くの?」
私が聞くと、美玲は申し訳なさそうに微笑んだ。
「動物園へ」
「陽菜ちゃんが行きたいって言ったから」
陽菜は何度も頷く。
「楽しみ!」
無邪気な笑顔だった。
私は言葉を失う。
動物園。
陽菜がずっと行きたがっていた場所。
本当なら私が連れて行くはずだった。
仕事が落ち着いたら行こうね。
そう約束していた。
その約束を。
美玲が叶えるのだ。
「ママ、行ってきます」
陽菜はそう言った。
それだけだった。
一緒に行こうとも言わない。
ママも来てとは言わない。
ただ。
当たり前のように美玲の手を握った。
そして二人は去っていく。
私はその場から動けなかった。
昼過ぎ。
どうしても気になってしまった。
私は庭へ出る。
遠くから笑い声が聞こえた。
思わず視線を向ける。
そこには。
恭弥と美玲と陽菜がいた。
三人で楽しそうに話している。
陽菜は笑っていた。
恭弥も笑っていた。
美玲も笑っていた。
まるで。
本当の家族みたいに。
私だけがいない。
私だけが必要とされていない。
そんな光景だった。
胸が苦しい。
息が詰まりそうになる。
それでも目を逸らせなかった。
私の大切な家族だから。
ずっと守りたかった家族だから。
だけど。
遠くから見つめる私の姿は。
まるで他人のようだった。
私は静かに拳を握る。
そして気付いてしまった。
この家で少しずつ居場所を失っているのは。
私なのだと。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
本作は毎日12時30分に1話ずつ更新予定です。
また、第5話・第10話・第15話・第20話ではイラストを掲載予定です!
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