第15話 捨てられた妻は有名人になりました
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第15話 捨てられた妻は有名人になりました
菫と離婚して半年。
あの日。
九条家には藤堂家から厳しい抗議が入った。
家同士の約束で結ばれた結婚。
それを恭弥は、両家へ相談することなく一方的に終わらせたのだ。
長年続いていた共同事業は次々と打ち切られ。
九条グループは大きな損失を抱えることになった。
恭弥自身も九条会長から厳しい処分を受け。
重要な事業から外されていた。
それでも。
恭弥は美玲との再婚を諦めていなかった。
その日。
恭弥は美玲を連れ、会長室を訪れていた。
「九条会長。」
「お願いがあります。」
恭弥の父である九条会長は、
鋭い眼差しで書類から顔を上げた。
「……まだ諦めていなかったのか。」
冷たい声だった。
「私は美玲と結婚したいと考えています。」
次の瞬間。
バンッ!
九条会長が机を叩いた。
「馬鹿者!!」
会長室に怒声が響き渡る。
「半年前の騒ぎをもう忘れたのか!」
「藤堂家との信頼を失い!」
「会社にどれほどの損害を与えたと思っている!」
恭弥は黙って頭を下げた。
「申し訳ありません。」
「申し訳ありませんで済む話か!」
九条会長は美玲を鋭く睨みつける。
「私は、お前を九条家の嫁として認めるつもりはない。」
「帰れ。」
美玲は悔しそうに唇を噛む。
「……失礼します。」
二人が部屋を出ようとした、その時だった。
秘書が慌てた様子で入ってくる。
「九条会長。」
「橘グループと国立医療研究所の共同研究について、大きな発表がありました。」
テレビがつけられる。
『速報です。』
『橘グループ研究所と国立医療研究所の共同研究チームが、小児がん治療に新たな可能性をもたらす画期的な治療技術の開発に成功しました。』
『世界中から大きな注目を集めています。』
画面には研究チームの写真が映し出される。
中央には橘悠真。
そして、その隣には。
菫が立っていた。
「……菫。」
恭弥は思わず呟く。
『今回の研究には、藤堂菫主任研究員の論文が大きく貢献したことが明らかになっています。』
『世界中の製薬会社から共同開発の申し出が相次いでいます。』
会長の表情が変わる。
「この技術は……。」
「何としても九条グループで事業化したい。」
恭弥は、その言葉を聞いた瞬間。
口元に笑みを浮かべた。
「九条会長。」
「この件、お任せください。」
九条会長が振り返る。
「根拠はあるのか。」
「あります。」
恭弥は迷いなく答えた。
「菫は私の元妻です。」
「私が頼めば必ず力を貸してくれます。」
「契約は必ずまとめます。」
しばらく沈黙が流れる。
九条会長は静かに頷いた。
「いいだろう。」
「この件は、お前に任せる。」
「ただし。」
「これが最後のチャンスだ。」
「失敗すれば、お前を後継者から外す。」
九条会長の言葉に。
恭弥は力強く頭を下げた。
「必ず、成功させます。」
その隣で、美怜の眉がわずかに動く。
「後継者から外す」
その言葉に。
誰にも気づかれないよう、
冷たい計算がその瞳をよぎった。
「すぐに菫へ連絡しろ。」
「俺が会ってやると言えば、泣いて喜ぶだろう。」
傲慢に微笑む恭弥は、
まだ知らなかった。
自ら掴み取った
『最後のチャンス』が、
九条家の後継者という地位を失い、
自らを破滅へ導く引き金になることを。
そして、もう二度と――
菫が、自分の言いなりになる女性ではないということも。




