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第四十五話 竜騎士の契約 -Rainbell Side-


「竜騎士……?」


「なんじゃ、お主竜騎士を知らんのかえ?

おっとまだ名乗ってなかったな。妾は幻竜の女王、セレスティア・リンドヴルムじゃ」


「げ、幻竜!? 全ての竜族を統べる竜王バハムート様を生んだと言う竜族の真の頂点が幻竜様と聞いた事があります! まさかこんな所でそんな偉大な方と……」


「今の妾はかつて程の力は残っておらんよ。幻竜なぞ、ただの名称、飾りじゃよ。五十年前の人魔大戦にて、我が竜族も人間の味方として魔族と戦ったが、ほとんどがそこで死に絶えた」


 ふぅ。と溜め息をついたセレスティア様。声から察するに相当弱ってる様子を感じたんだけど、大丈夫かな。


 まあその話は良い。と話が続けられた。



「妾と契約し竜騎士に目覚めれば結界もろとも吹き飛ばしてしまえるじゃろう。妾も力を取り戻せるしのう。しかしもう契約で使う力が残されておらんから早く決めて欲しい。幻竜の女王からこんな申し出は中々ないぞえ」



 あ、あたしが幻竜の女王様と竜騎士の契約を!?

 体がブルブル震えて来た。緊張? 恐怖?

 もしかしたらその両方かも。でも、ここから脱出してセレスティア様を救えるのはもうその手しかない。



「わ、わかりました! セレスティア様、あたしで良ければ是非お受けさせていただきたいです!」


「良いかレインベル。契約をするという事はもうお主は人間ではなくなる。妾と共生する事になる。この意味を理解してからもう一度返事を聞かせてくれ」


「共生……?」



 セレスティア様はあたしに丁寧に教えて下さった。

 竜騎士の契約を交わすと、二度と人間には戻る事が出来なくなる事。

 〝共生〟と言って、あたしの体にセレスティア様の人格を受け入れる事。

 

 勇者様とフェアリーの魂の契約みたいな感じかなと思ったけど、共生は一つの体を二人が支配するんだって。

 だからセレスティア様が体を支配する事もある。

 人格が入れ替わるって言ってた。その代わり幻竜の知識や魔力が共有出来る。

 

 セレスティア様は勝手に支配権を奪うような事はないから安心してくれって言ってたんだけど、丁寧に説明してもらったのにほとんど理解出来なかった……。

 どっちにしても、もうあたしは選ぶしかない。

 それでセレスティア様を救えてここから出られるのなら、あたしはどんな苦痛も受け入れる!



「セレスティア様! あたし契約をします! お願いします!」


「よし、ではまず対面せねばのう。レインベル、なんとか看守を呼んでそこの扉を開けさせるのじゃ」



 そっか、あれからもう二十四時間は経ってる頃。

 じゃあ看守でも開けられる!

 あたしは鉄格子から手を出して看守を呼んでみた。



「な、なんだなんだ騒々しい!」


「看守さん……一人?」


「見りゃ分かるだろ、一人だ。……用件を言え」


「用件……分かんない?」


「…………ないなら戻るぞ」


「この牢獄暑いんだけど……脱いじゃおっかな」


「ぬ、ぬいじゃ……おっかな……?」


「うふふ♡」



 牢屋の奥の壁にもたれてじっと看守さんを見つめてみた。

 ずっとこの牢獄の入り口に立ってあたしたちを見張ってるんだもんね。色々と渇いちゃってるよね。

 地味な囚人服だけど上着を一枚脱いだら、看守さんが唾を飲んだところが目に映った。よし、引っ掛かってる!

 腰の剣に手をかけてたのに、あたしが脱いだら鉄格子を握って釘付だもんね。



「ねぇ看守さん? そこから見えてるの?」


「はぇ? あ! い、いや見えては……いる」


「見たいの?」


「え!? べ、べ、つに見たいとは……」


「見たいって言ってくれたら……下も脱いじゃおかな♡」


「み、みた、みたみた、見たい!!」


「うふふ♡ 正直でよろしい♡」



 下のズボンも脱いで今あたしは下着だけの状態。

 でも牢獄は暗いから奥の壁でもたれてるあたしの事は、ちゃんと見えてないはず。

 だから看守に想像させるように、鉄格子にズボンを投げてみたの。さあ、このトラップにも食らいついてくれるかな。



「おぉ!? おま、おまえ……本当に脱いだのか!?」


「見えてるんでしょ?」


「い、い、いや、ここからじゃ……ちゃんとは……」


「ちゃんと……見たいの?」


「ちゃ、ちゃちゃんと……見たいですっ!」


「じゃあ……入って来たら?」


「入って……あ! い、いや! それはダメだ!! ユリウス様のご命令なしでは開ける事は出来ん!!」


「そのユリウス様はそこにいるの?」


「ここにはいらっしゃらない! あの方はお忙しい方だからな!」


「だったらバレないでしょ? 貴方が言わない限りは……」


「ま、まあ……それは。た、確かに……いやしかし!」



 よし! ここで勝負をかける!



「触わりたくないの?」


「な、な、なんだと……!? さ、さわ、さわさわる!?」


「あたし、何の為に脱いだの? 暑いから?」


「暑い……え? ち、ち、違うのか!?」


「看守さんはどう思ってるの?」


「どう思ってるって…………」


「そこの扉を開けて中に入って来てくれたら……看守さんが想像してる事、出来ちゃうかも知れないよ」


「……………………」



 無言のまま、看守が扉の鍵を開けた。

 ガシャァァァァァァァン!!



「はぁはぁ……ひ、ひら開いたぞ!」



 一歩一歩私に向かって近づいて来た。

 興奮して息切れしてるじゃない。変態さん。



「おぉ!! な、なまあしに……ふと、ふとふともも〜♡」


「はい♡ ご苦労様♡」



 あたしは両脚で看守の顔を挟むとくるっと回転させて壁に投げ飛ばした。



「ほげぁ!? ……がふ」



 気絶した事を確認するとすぐに囚人服を着る。

 あー恥ずかしかった! あたしの黒歴史だぁー! あんな事はもう二度としないから! 絶対しないから!

 地面に落ちてる鍵を取って直ぐにセレスティア様の牢屋に向かって鍵を開ける。


 ガッシャァァァァァァァァァン!!

 よし! 扉が開いたのを確認したあたしは、この牢獄の入り口の扉に向かう。



「と言うか、普通にここから出れるんじゃない?」



 入り口の扉に手が触れた瞬間、とてつもない電流が流れた。


「きゃぁ!!」


「何をしておるんじゃお主は……。結界がある事を忘れたのかえ?」


「あ、ああ……! そうでしたぁ……はは」



 目の前にゆっくりと姿を現したセレスティア様。

 黒いロングヘアに純白の衣を纏った……人……?

 そこに立っていたのは黒いドラゴンの尻尾が生えた人間だった。

 肌も人間と変わらなかった。こんな事本人には言えないけど、ヨボヨボのシワシワだらけのお婆さんだった。

 腰も曲がって人間で言うと百三十歳ぐらいに相当する容姿。


「ふふふ……竜族の頂点に立つ女王がこんな醜い老婆で驚いたかえ?」


第十六話は本日19時頃を予定しております。


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