第四十四話 決勝戦
四十四話長めになってます。
僕とリラは順調に勝ち進んでいき、ついに決勝戦までコマを進めた。
リラは弱点が色々あるけど、それを僕がカバーすればいいだけの話であって特にこう言ったペア戦は持ってこいだ。まさに無敵だった。
僕達は何のピンチにもなる事なく勝利を重ねていったんだ。
決勝の相手はアラベル、フローミアペア。
彼らも信じられないぐらいの速さで決着をつけ、優勝候補のアンリーモスペアを僅か二十秒で倒したと言う成績を残した。
アラベルは見違える程強くなったと、観客席から称賛の嵐だったそうだ。
僕達はアリーナへ立ち、目の前のアラベル達と対峙する。
「やっぱり勝ち残って来たか……人間」
「そういう君も、相当強いんだな」
「リラティナスのパートナーに選ばれたからって、調子に乗るなよ。あの点数も俺は信じてねえから」
僕とアラベルの間に割って入るリラ。会話だけでなく実際に間にスッと入ってきて、アラベルを挑発する。
「アラベル、オマエ強くなったんだって? 面白いじゃねーか、あたしをやれんのか?」
「あ、当たり前だ! やってやる! 優勝したらお前を支配してやるからな!」
「へっ! 嫌だよーだ⭐︎ あたしは先生に支配されるってもう決まってるんだよ〜だ!」
「な、なんだと……!? 先生って誰だよ!?」
え、お、お、おいちょっとやめろって!
こんな大勢の前で抱きつくんじゃない!
「お、お前……よりにもよって人間に支配されたいってのか!? 何で俺じゃダメなんだよリラティナス!!」
「その言い方がもう弱いんだよ! それにもう約束してるんだよな〜。優勝したら先生と契約を結ぶって! なっ♡」
リラの「なっ」が僕の心をドキッとさせた。
言葉こそ乱暴で、女性を感じないけど彼女のニコッとした顔は、素直に可愛いと心が感じてしまう。
全体的に見たら容姿は魔族、ネファーリアとはタイプは違うけどやっぱり魔族なんだ。でも顔はとても美しく、ネファーリアがお淑やかな姉なら、リラは元気な妹ってとこかな。
ライミフォンもそうだったけど、魔族は人間よりも美的センスがあり、飛び抜けて美しい容姿の種族が多いな。
「レディィィィース! エェェン! ジェェントゥルメエェェェン!! いよいよこの大会の最高に盛り上がるけっっっっっっしょぅぅぅぅー戦がやって参りましたぁぁぁ!!」
大歓声がバトルアリーナ全体を覆い、まるで巨大な怪物の叫び声のように地面を震わせる。
ホストのテンションも最大フルパワーで、これまでよりも感情が詰まった実況をしてくれた。あの人、結局最後まであのテンションだったな……素晴らしい。
って、感心してる場合じゃないな。決勝戦、相手は驚異的な強さへ成長したとの噂のアラベル、そしてそれを支えるフローミア。何度か女性魔族を見かけたけど、フローミアも相当できるな。その雰囲気を醸し出してる。
見たところ、彼女も戦獣族のようだけどこうして戦獣族を見てきて、リラは少し他とは違うんだな。
まず普通の戦獣族は髪の毛と尻尾の毛色が基本黒く、脚は黄色と黒の縞模様、本当虎の脚なんだ。
でも、リラは銀髪で尻尾も銀色、脚は獣の脚なんだけど銀と黒の縞模様になってる。
これはお父さんのライミフォンもそうだった。
ライミフォンの家系は特殊な家系なんだろうか。
「両ペア準備はよろしいでしょうか? バトルアリーナ、決勝戦!!! さあ戦士達よ! 俺達に最強を見せてくれぇぇぇ! ではぁぁぁ…………はじめぇぇぇ!!!!」
開始していきなりアラベルは真っ直ぐに僕に向かってきた。
これまで試合してきたどの魔族よりスピードが速い。リラはアラベルを目で追うが直ぐにフローミアにターゲットを絞った。お互いセカンドを狙う作戦。
僕達は自然と対応させられたと言う感じだ。
「アスト・ローラン!! 人間などには負けんぞ!!」
力任せにブンブンと連撃を繰り出して来た。僕は戦巫女の特性を利用し、そのスピードが乗った攻撃を次々と回避していく。この才能の種は導師の力、人間の力だ。
魔族、特に戦獣族には才能と言う概念がない。基本的攻撃パターンは格闘術と魔術。トーナメントで僕達が試合したのはほとんどが戦獣族で接近戦を主とするスタイルなんだ。
だから読みやすいと言うのもあった。
その中でもアラベルは相当の実力者だ。こうして僕が全ての攻撃を避けている事に驚きや焦りもなく、次の手を考えながら攻撃を繰り出しているように感じた。
「地響円!!」
「ぐぅぉぉ!!」
戦巫女の特性を見抜いたのか、連撃中に攻撃のタイミングをずらして魔術を放って来た。
アラベル、凄いセンスの持ち主だ。
【地響円】は初級地属性魔術で、地面に向けて地の魔力を放つと、相手の足下から石の突起物を発生させて上手くタイミングが合えば、突き上げの衝撃を利用して空へと打ち上げられるんだ。
僕は今その絶妙なタイミングで空へと打ち上げられた。
くっ……アラベルは僕を追って跳び上がって来てる。
「人間! たいした事ねえなぁぁ!!」
「リベンジチャージ!」
ドガッ!
アラベルの攻撃を受けて地面に落下し激突。ダメージはあるが気にする程じゃない。パワーをチャージして直ぐに【リベンジバースト】を発動。あまりパワーを溜めすぎると倒してしまったら減点されるからな。
僕はセカンド、役割はサポートだ。
まだアラベルは空中、そこに僕は賢者で【疾風刃】を放つ。当たれば【リベンジバースト】のパワーが上乗せされて大ダメージ。回避しても、次の魔術は避けられない。どっちにしてもアラベルはダメージを食らう。
「ふん! 俺を甘く見ない方がいいぞ人間!!」
【疾風刃】を回避し突っ込んできたか。でも甘く見てるのは君の方だったな。
「絶風竜巻!!」
ビュォォアァァァァァァァァァァァァ!!!
自分を中心にして強烈な竜巻を発生させる中級風属性魔術。竜巻に入ってしまうと真空の刃に切り刻まれる。
「あがぁ! うごぉ! うがぁ! あぐぉ!」
アラベルの猛攻が止んだこの隙に、ここで初めて僕はリラの方に目を向ける。リラと距離を保って戦ってるフローミアの様子を一目見て魔術士タイプだと判断する。
別に読みが外れていてもいいんだ。そこは重要じゃない。
重要なのは、リラに攻撃のチャンスを与えてやれるかどうかだ。
「サモンシード! 拳聖で、間合いを詰めさせる!」
召喚された拳聖は【ブライトダッシュ】を使って一気に、間合いを詰めに行く。
シードをリラに与えれば、戦術の幅も広がるんだろうけど、悲しいかな、今のリラはまともに魔力が扱えないんだ。シードを与えてもある程度の魔力コントロールが出来て〝シードを宿す〟と言う行為をしないと使えない。
リラの一撃が決まればいいんだ。一撃が決まれば。
「言っただろ……俺を甘く、見るんじゃねぇぇ!!」
「なに!?」
僕の【絶風竜巻】を吸収してるのか!?
竜巻がどんどんアラベルを中心に渦を巻いて吸い込まれていく。
魔術か? それともアラベル独自のスキルなのか?
「ブゥゥゥストナッックルゥゥ!!!!」
「うぐぁぁぁぁーーー!!」
バキィィィ!!
何か仕掛けて来る事は分かってたんだ。戦巫女で回避のタイミングを待っていたら、いつの間にか僕の懐に重い一撃が入っていた。
大きく吹き飛ばされて会場の壁に激突した。
油断してるつもりはなかったけど、結果油断した形になってしまった。貫かれたかと思うぐらいの重い一撃だった。肋骨がいくつか折れてる。全く動きが分からなかったぞ。
「光癒手!」
戦巫女は基本的な治癒術が使えるがエキスパートじゃない。賢者は攻撃主体と若干の補助魔術が使える。そうなんだ、治癒術に特化したシードを僕は持っていない。
シードは条件が満たされた時しか〝鍵〟が外れず生み出す事が出来ない。
それはつまり、現状は今あるシードで対処できるという事。
それにしても、アラベルはタフだな。
あれだけ動いてさっきの技もそうとう体力、魔力共に消耗してるはずなのに、呼吸の乱れがない。
いくら超絶な力を発揮できる導師と言えども、スタミナでは圧倒的に不利だ。
「ふふふ……ふはははは! おい、リラティナス見ろよ!! お前が支配されたがってる奴は死にかけてるぞ……くっくっく」
「せ、先生!?」
「よそみすんじゃないよ!」
「がはっ!?」
リラ、僕の事はいいからそっちの戦いに集中するんだ。
しまった……僕がやられたせいで拳聖が消えてしまってる。
まだまだ学ぶ事があるのは、嬉しい事だけど、僕は負ける訳には行かないんだ。
負ければネファーリアの領域を取られる。見た事はないけど、平和を愛するネファーリアが支配する領域はさぞ素晴らしい世界なんだろうな。
彼女は僕を仇として、殺す為に僕の前に現れた。
けど殺さなかった。
本当は復讐なんて望んでなかったんだ。
平和と愛を大切に生きる魔王の娘。
絶対に負けられないんだ。
そろそろ傷も癒えてきた。立ち上がり深呼吸する。遠くで笑ってるアラベルが見えた。
勝ったと思って油断してるな。
僕を倒しておくべきだったなアラベル。もうあの技は食らわない。
少し作戦を変えるか。
と、その時だった。急に今まで感じたことの無い魔力を感じたんだ。
アラベルじゃない、フローミアでもない、リラでもない。
そして……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
リラがいきなり悲鳴を上げた。
頭を抱え悶え苦しんで地面に転がった。
「リラ!?」
会場内が騒めき「暴走女」と言うフレーズが会場内を飛び交ってる。じゃあ……あれが暴走?
「フゥ……フゥ……フゥ」
リラは銀色のオーラを纏い、容姿がより獣と化していた。でも、一番驚いたのは魔力を発揮してる事。
いつものリラは全くの魔力を発揮出来なかったのに、今は物凄い魔力を放出していた。
ただ……様子がおかしい。
「うぅぅ……がぁぁぁ!!!」
「あぐぁ!? ……ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
殴った拳に魔力を集め勢いよく爆発させた。
目の前のフローミアはたった一撃で消滅したんだ。
「フローミア!? くそぉ! 今年も止められねえのか……」
リラの呼吸は荒く、興奮しているようだった。
待て、何かがおかしい。
あの時感じた魔力、リラの中からじゃなかった。
恐らく誰かがリラに何かしたんだ。
だけど、観客席にも周りにはそれらしい人物は見当たらなかった。
「うぅ……ぐぅぅぅ〜!」
「リラァァ! 大丈夫か!? 僕が分かるか!?」
こっちを振り向いたけど、分かってる様子じゃないな。
前回のペアだった者はリラが殺したって言ってたから、今のリラは理性が失われた状態。
試合とか関係なくなったな……まずはリラを何とか止めないと……。
と、またあの魔力を感じた。今度は完全に捉える事が出来たんだ。バトルアリーナの会場の端に設置されていたコアバトルエリアに続く階段から何かが上がって来る。
会場が広大だから、遠くで分からなかったけど何かが端にいる。
あいつだ! あいつがリラに何かしたんだ!
僕はその正体を突き止めるべく、そこに向かって走っていく。
立ち尽くすアラベルを通り過ぎると、リラが僕に向かって走り出す。いつものリラの動きじゃ無い。
僕はすぐに【サモンシード】で聖騎士を召喚し、リラの憎度を集めさせる。
今のリラは理性を失ってる魔物状態。なら憎度を管理できる。
ターゲットを僕から聖騎士へ。
そして会場端の階段が見え、人物がハッキリしてきた事で僕の足が止まる。
何故と言う思いでいっぱいだった。
「な、なんで……なんでリラに……あんな事を?」
僕の両目に映っていたのは、ライミフォンだったのだ。
第四十五話は本日12時、間に合わなければ18時に投稿致します。




