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第四十六話 脱走 -Rainbell Side-

遅くなりました。


「アン・グルウス・グルウス・ラウノウス・マハラ・アン・ラウノウス・マハラ・ジン。我が血の盟約により汝、レインベル・クルセウムを器として受け入れる……アドセム」



 シュォォォォォォォォーー!!

 契約の呪文が完了するとセレスティア様は光となってあたしの体に溶け込んだ。

 その瞬間、体に異変を感じた。凄まじく強大な魔力が漲ってくるの。こんな世界があったなんて、自分の体なんだけど自分じゃなかった。

 

 ん? え、なんかお尻が……。

 薄暗い牢獄だけど、見間違う事は無かった。あたしのお尻、黒いドラゴンの尻尾が生えてるんだけど。



「えぇ!? 尻尾が!?」


《言っておらなんだが、竜騎士の契約を交わすと妾の姿とお主の姿とがミックスされるからのう。尻尾はそう言う事じゃ》


「き、き聞いてないですよ〜!!」


《安心せいレインベルよ。ヨボヨボのシワシワな容姿までは引き継がんよ。あれは魔力が吸い取られたせいじゃ。契約した今妾に魔力が戻った。美しい妾で融合したから後で鏡で確かめるが良い。お主も中々の女じゃが、妾の絶大なる美貌が合わさり、さらに美しさが増したぞえ》


「顔も融合するのですね……こ、光栄です……!」


《むぅ、信じておらんな……。まあ何れ分かる。よし、ではこの結界を解こうかのう。お主はもう感じとるじゃろう。妾の幻竜の魔力をのう》



 あたしは〝竜騎士〟兼〝幻竜の女王〟になったんだって。

 今日から人間じゃなく竜族として生きていくの。

 さあ、セレスティア様も救えたし脱出しますか!



《挨拶代わりじゃ。竜族の特性である〝竜眼〟を使え》


「凄い……結界の構造が事細かに見える」



 〝竜眼に見えないものはない〟とセレスティア様が言った。

 だから何かあったらとにかく目を光らせよ、だって。

 この牢獄なんだけど、特殊な結界が幾重にも重なって蜘蛛の巣のように張り巡らされてるね。

 この結界は魔力を吸収して無効化するから、竜騎士となったあたしでも魔力でどうにかする事は出来ない。

 

 だけどセレスティア様曰く〝竜言語呪文ブレス〟は竜族しか扱えない魔術のようなもので、魔力じゃなく竜魂ドラゴンオーブからエネルギーを引き出すから、魔力が封じ込められていても使える―との事。


《息を吸い込んで、吐くタイミングで唱えると良い》


「はい! やってみます!」



 息を吸い込んで、吐く時に詠唱……吐く時に……。よし!



「スウェードモォラァ」



 ブオォォォァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

 すると、あたしの体からドラゴンの幻影が飛び出して口から勢い良く火炎を吐いた。それは何層にも重なった結界を一つずつ、まるでガラスが割れるように破れていった。

 魔力を使ってないのに何なのこの破壊力……。

 魔術で言うなら上級火属性魔術【大獄炎焦熱レグゾード】級の威力ね。

 魔力を消耗しない分、負担が軽く扱いやすいって事が分かった。

 うんうん! 結界を全部破壊したぞ!


 扉を開けてもビリビリこない! よし脱走だ!

 流石幻竜の力だな〜あたし一人だったらどうなってた事か……。これで牢獄から脱出できたー! と思ったら……。



「え? どっちに行けば……いいの?」



 牢獄を出ると左右の分かれ道があって、どっちの道にも十字路で複数の通路に分かれてるんだ。

 でもここは()()()なんだから上に向かって進めばいいと思うの。



《いくら妾でも、ここの構造を知る術はないのう。何か魔力やエネルギーなら竜眼で見抜けるんじゃがのう》


「自力で探すしかなさそうですね……分かりました! セレスティア様! 任せて下さい! あたし勘は鋭い方ですから!」



 とりあえず上に向かう階段を探して上へ上へ行けば出られるはずよ。




-Julius Side-



 俺の名はユリウス・ザルベック。勇者でありラムリース王国の最高司令官だ。

 そうだ! 俺は偉いんだ! なのにこの扱いは何だ……。

 俺達はエスハイム城に向かい、客人の間へ通された。

 一般人や商人などと同じ扱い……()()の部屋だ。

 これにもムカついたが、更にハラワタが煮え繰り返そうになった事がある。

 直ぐにお呼び致しますので少々お待ちを、ここに通した衛兵は確かにそう言ったんだ。〝直ぐに〟〝少々〟の言葉を分かってて使ってるのか? 馬鹿なのか?



「あなたってホントによく怒るわよね。のんびり待ちましょうよ」


「うるさいタニス! 二時間だぞ!? これが友好国であるラムリース最高司令官に対する歓迎なのか!?」

 

 こんな国など切ってもいいだろう。戻ったらすぐにこの事をアーキノフに伝えよう。

 俺を誰だと思ってる! 俺は国王代理だぞ!?



「落ち着けよユリウス。アストは今シャドウ狩りに出掛けてるんだったら、どっちみち待つんだぜ? せいぜい寛がせてもらおうぜ。ほら果物あるぜ!」


「そんなもんは要らんわ! エスハイムの王め……早く来やがれクソッタレが」



 結局それから三十分が経ちやっとエスハイムの王が姿を現した。



「ユリウス殿! いやーすまんすまん! 今シャドウの事で問題が起こってな。いや言い訳だな、本当にすまなかった!」


「全くですよ。俺達は警告をしに来たのに、シャドウか知らんがそんなものは後回しにしてもらいたい! こっちの話は世界で考えなければならない問題なんだ!」


「そうか! 本当にすまなかった! トリークのギルド長からは少し聞いておる。偽りの勇者を追っているとか」



 俺はやっと本題に入れると言う思いを溜め息に乗せる。



「……アスト・ローランを捕らえたい。放っておけば世界中で被害が出るだろう。国の戦士は皆能力を奪われ、無能となる。エスハイムもこのままだとそうなるぞ」


「わ、分かったユリウス殿。エスハイムは全面的にラムリースに協力しよう!」


「そうか、それは良かった」



 俺は冷めた表情の奥に、ニヤッと少しだけ笑みを浮かべるのだった。




-RainBell Side-




《おい、レインベル。ここはさっき通らんかったかえ?》


「え? そ、そうでしたっけ? ……あはは」


《全く……お主の勘は何処ぞに行きよったんかいのう》


「う……うぅ。 すみません」



 ん? 遠くの方で足音が聞こえた気がしたんだけど。

 ……複数人の足跡が近づいて来てない? やっぱりこっちに向かってる!



「脱走したぞー!!」


「捕まえろ!! 女王も逃げた!! 一緒にいる可能性があるから十分注意しろ!!」


「セレスティア様どうしますか!? 戦いますか?」


《いや、派手な行動は避けるべきじゃ。下に戻るしかない》


「えぇ!? せっかくここまで来たのに戻るんですか!?」


《この道で合っとるか分からんし、何回ここを通っとるんじゃよ……》


「それを言われると……分かりました! じゃあ戻」



 と、あたしが振り返ると



「どこに行くんですか? あたしのご馳走ちゃん」


「誰!? 魔族……?」


《うむ。此奴は……》


「は〜い、私がヴェルグラです……くっふっふ」



第四十七話は8月26日朝8時間に合わなければ12時に投稿いたします。


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