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第二十四話 国王の誤算 -Arkinov Side-


 ザングレスは魔界最強の魔族と謳われ、長い間魔王の座に君臨しておった。

 簡単な話、ザングレスを魔王の座から引きずり下ろしヴェルグラを新たな魔王に据える為に我々人間に協力して欲しいと持ちかけて来たのである。



「魔族は実に多くの派閥があるようで、力のある派閥がやはり強い。力で他の派閥より劣るヴェルグラは力による支配ではなく、頭を使って魔族を支配しようと考えておるのだよ」


「そこで偶然ラムリース国王に出会ったのです。本当に運命的でしたね。それもザングレスの魔王城で」


「魔王城……? 父上は魔界に行かれたのですか?」


「丁度人間と魔族の戦争が繰り広げられておった時期、お前も先程話してた人魔大戦争の時代だな」


「そ、そんな……五十年も前から関係があったのですか!? 父上! これを国民が知ったらとんでもない事になりますよ!」


「知ればな」


「ち、父上!?」



 そう、だから国民には公表する必要はない。

 ふむ。儂のこの言葉の意味を理解したという事はそこまでポンコツでもないようだな。

 リーベルト、儂のたった一人の息子よ。

 儂もかつてはお前のように純粋な人間であった。

 

 だが……

 国を守ると言う事、民の生活を守ると言う事は、それを継続して行かねばならんと言う事。

 綺麗事だけでは守れんのだよリーベルト。お前には背中で語ろう。息子よ、父の背中を篤と見ておくのだぞ。

 

 はあ。しかしながら頭を悩ませる事は息子以外にもある。

 儂とヴェルグラの計画で一つ誤算が起こってしまったのだ。


 計画とはこうだ。

 我々は勇者システムと呼んでおる。

 まず勇者が誕生すると、勇者は使命として魔王ザングレス討伐の旅に出る。

 その道中で勇者は経験を積み力の使い方を学ぶ。

 成長し、力が強くなる。

 ある程度育つ、または魔王ザングレスへと到達すると、その力を魔神ビブレイスに吸い取らせ、我が友ヴェルグラへと供給する。

 勇者パーティーはそのまま始末する。

 能力を吸い取った後の人間など、取るに足らん存在だからな。

 そうやって新しい勇者を誕生させ、魔王討伐、そして能力を吸い取ると言うサイクルが勇者システムであるのだ。


 つまり、勇者とは表向きには魔王を倒す希望の存在だが、ヴェルグラの力としての養分に過ぎん存在という事だ。

 儂は五十年間、勇者システムを用いてヴェルグラを強くしてきた。

 その見返りにラムリースは本物の魔王ザングレスの魔力を使って繁栄してきたのである。

 ほぼ無限とも言える魔王の魔力をな。

 


 しかし、誤算が起きた。

 それはアストと言う存在である。

 儂は知っていたのだ、アストの中に導師の力が眠っておった事を。

 あれは今から十年前……。

 キナと言う老婆が経営する孤児院に戦士の素質がある子供がいると言う噂を聞いて、儂自ら出向いた事があった。

 付き添いの兵士達は、ユリウスがその素質を持つ少年であると儂に言った。


 確かに他の子供達と比べると抜きん出ていた。

 だが……アストを見た時にただならぬオーラを感じたのだ。

 今思えばそれこそが、導師の力だった。

 それから儂はアストから導師の力を吸い出す為の計画を練った。

 当時のアストはまだ幼かった。吸い取りが完了する前に耐えきれずに死んでしまう可能性があったのだ。

 だから儂は成長を待った。導師の力を手に入れる為の計画を考える時間は大いにあった。

 そしてある時にふと思いついたのだよ。


 魔神ビブレイスを襲わせれば良いのだと。

 勇者選定の儀式の日にアストを襲わせる。

 巨大な魔物が現れたら当然勇者アストは止めに来る、そこを狙うのが一番効果的だと考えた。


 導師の力は神々の力。

 一万年以上も前の遥か古の時代に神々によって与えられた力、それが導師だと言われておる。

 アストが導師に覚醒すれば、吸い取りが困難となる可能性が非常に高い。いや、下手をすると勇者システム自体も機能しなくなる。

 覚醒前のこのタイミングがベストであるのだ。

 儂は、すぐビブレイスに吸い取らせるよう命じた。


 儂が操っていた事も知らぬであろうユリウスが、偶然にも協力してくれたところまでは順調だったが……。


 どうやったか未だに謎なのは、アストが逆にビブレイスそのものを自分に取り込んだ事だ。

 恐らく、吸い取る寸前のところで覚醒したのであろう。

 そう思わざるを得ない。

 魔神ビブレイスがいなくなり、ダミーの魔王ザングレスはアスト達に討伐されてしまった。


 この誤算を如何にして修正するか。


 


第二十五話は本日18時を予定しております。

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