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第四十一話 敵か味方か -Furin Side-

そろそろエピソードⅡの終盤です。


 冷たい。なんや、意識が朦朧としてる。



「やっと目が覚めたのね、お寝坊さん」


「タニ……」



 タニス? そうやった、あんたは確かダークエルフになったんやったな。まだその見た目に慣れへんわ。

 まぁそれはあたいも同じか。

 ん? て事は……あたいはまだ死んでへんのんか。

 フェアリーの研究所やないな。ここ何処や?

 外におるみたいやけど……。



「何処だ? って顔ね。ここはアーキノフの居城がある領域、確かエスフェルシスだったかしら? まあどうでもいいけど」


「なんでや。なんであたいを殺さんねん」


「今のあなたを殺しても意味がないのよ。完璧なエルフになったあなたでないとね。だから殺すのを諦めたんじゃない」


「ははは……それでもあたいを殺すのを待っといてくれるんやな。エルフの力を完璧に使い熟せるまで? まだええ心残ってるやんかタニス」



 ドガッ!!!

 痛ぁ〜タニスの奴、おもっきり蹴りやがったな〜。



「ふざけるのもいい加減にして。あなたは一刻も早くその力を使い熟せるようにならなければいけないの。分かる?」


「なんでや? あんたと遊ぶ為かいな?」


「うふふ。完璧なあなたを完膚なきまでに叩きのめす為よ。分かったらさっさとかかって来なさいよ」



 そう言って、黒い邪悪な魔力を身に纏うタニス。

 なんやあの魔力……見てるだけで呪われそうやわ。

 てかもう戦うの? あたいまだ目が覚めて五分も経ってないんやで?

 いきなり戦えって鬼やなあんた。

 タニスが邪悪な魔力の塊をこっちに投げ飛ばして来た。



「さっさと起きなさいフュリン」


「のわわわ〜!!」



 間一髪で交わしたけど、その隙を詰めるかのようにタニスが突っ込んで来る。



「あぐぁ!?」



 飛び膝蹴りが見事にあたいの顔面に命中。



「ほら、何してんのよ。私が協力してあげるって言ってんのにぼーっとしてると死ぬわよ」


「協力やって? さっきのなんや分からん魔術、手加減無しの攻撃やったやろ。どこが協力……」



 あたいがまだ喋り終えてへんのに、タニスは素早く距離を詰めて攻撃を仕掛けて来る。

 連続的で素早いタニスの強烈な攻撃。まともに命中すると致命傷になるやろな。ただ今回はその攻撃を全てしっかりとガードして防ぐ。


 分かったわタニス。あたいもこれから先の戦いでエルフの力が必要になってくるからな。

 この力を使い熟せれば、きっとあたいもみんなの……アストの役に立てるねん。



「よっしゃタニス! ほな、あたいも仕掛けていくで!!」



 こうしてあたいとタニスは、エルフの力を使い熟せるようにする為の修行に入った。

 どれぐらいやろか。二時間、三時間、休む間もなくあたいらは戦った。

 向こうはどうか知らんけど全力でやった。ほんまに複雑な気持ちやわ。

 だってこいつは、仲間を皆殺しにした奴やねん。

 許される訳ない。タニスも理由は分からんけどあたいを憎んでる。

 修行って言うてんのに殺意を感じる。

 お互い理由は違うけど同じ気持ちを持ってんねん。

 敵なんか味方なんか、この状況が今一よく分からんねんな。


 ほんまに複雑。

 多分これはタニスも気持ち悪くなってるんやろな。



「あなた、他の事考えてるわね? 舐められたものだわ、そんなに殺されたいの?」


「あんたもそうやんか。呪いの精度が落ちてるで」


「……手加減してるのが分からないの?」


「手加減? そんなに魔力ぶっ放して自分を強化してるのに?」


「…………」


「ちょっと休憩やタニス。もう何時間もぶっ通しやで」


「休憩? よくそんな悠長な事言ってられるわね。そっか、あなたアストが今どんな状況にあるか知らないんだったわ」



 アストの状況?



「アストに何かあったんか!?」


「アストはね、遥か遠い過去にいるのよ」



 過去? アストもあたいらが経験したループかなんかに引っかかってんのかいな?



「私達はループから抜け出せたけど、アストはもう二度と帰って来れないのよ。うふふふ」


「アーキノフか!? アーキノフがやったんか!? タニス答えろ!!」


「いいえ、アストさん自らで過去へ飛んだのですよ」



 あたいとタニスの間に光が現れたと思ったら、そこにヴェルグラが立っててん。

 またお前かヴェルグラ。



「またあなた……いい加減邪魔しないでくれるかしら」


「くっふっふ。タニスさん、ちょっと冷たいんじゃないですか? 誰がその力を与えたと?」


「あら、あなたからそんな力は貰ってないんだけど」


「アドバイスもその内じゃないですか。まあいいでしょう。どちらにせよ貴方は私の部下なのですからね」


「へぇ〜タニス、あんたこぉんな最低な魔族の部下になったんやな」


「あなたを殺す為ならなんだってするのよ。そんな事はどうだっていいわ。何しに来たのよヴェルグラ、邪魔をするなら殺すわよ」


「おぉ怖い怖い。貴方達の邪魔なんかしませんよ。アーキノフ殿が帰還されたので、貴方にも報告しておこうかと思いましてね。貴方も私の下で働くのですから、一応貴方もこちら側についたのなら知っておかなければならない事もありますからね。これから行う会議に参加していただきます」



 タニスは戦闘態勢を解き、何も言わずにこの場を去ろうとする。

 ちょっと修行は? ってタニスに聞こうとすると



「休憩よフュリン。私が戻って来るまで体力を回復しておきなさい」



 タニスが話してる途中で、いきなり周りの景色が一変した。

 な、なんや? 今さっきまでだだっ広い平原やったのに、どっかの部屋に移動してる……。

 ヴェルグラは当然のように全くこれに関してリアクションがない。

 でもワープしたって訳でもなさそうやねんな。



「イマジネーションフロア、ここで戦闘シミュレーションが行えるんですよ」


「イマジネーション……フロア?」



 色んなシチュエーションで戦闘訓練が出来る部屋やって、自慢げにヴェルグラが話してるんやけど、半分以上なんのこっちゃ分からんからほとんど無視したった。


 てか、そんな事よりも……



「アストが過去にいるってどう言う事やねんな!?」


「話せば長くなるので、貴方にとって非常に重要な情報だけを話しますね」



 くっふっふ。と変な笑いを挟んだ後、ヴェルグラはその情報を話し始める。

 アーキノフは導師の力を奪いにアストを追って過去へと遡っていた。そして今戻って来たと言う事は、導師の力を手に入れたと言う事らしい。



「それはつまり、アストが死んだと言う事です。折角美しい姿に変身なされたのに、いやぁ〜悲しいですねえ〜」


「アストが死んだ? そ、そんな……」


「くっふっふ。あのアーキノフ殿ですから、わざわざ生かしておく事はしないでしょう」



 アストが死んだ……? そんなん信じられへん。

 この目で見るまでは、こんな奴の話なんか信じるか。

 そうや、あたいを精神的に追い詰める作戦かも知れへんしな。


 ヴェルグラが部屋の扉を開けて出て行く。

 扉が閉まっていく中、あたいはその背中をじっと見つめていた。



お読みいただきありがとうございます。

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