第6話 四つのルーン、それぞれの役割
第6話 四つのルーン、それぞれの役割
「囲まれたな……」
レオンは周囲を見回した。
黒いローブの人間たちが、神殿の通路を塞いでいる。
正面に五人。
左右に三人ずつ。
そして中央には、あの黒ローブの男。
ガルが低く唸った。
「正面から突破するか?」
「いや」
レオンは首を振った。
「数が多すぎる」
「じゃあ、どうする?」
レオンは壁に刻まれた四つのルーンを見る。
ᚨ《アンスズ》
ᚱ《ライド》
ᛏ《ティール》
ᛒ《ベルカナ》
「四つの力を、それぞれ別の役割で使う」
ミレイが頷く。
「やってみて」
レオンは最初のルーンに前足を向けた。
「まず――ᚨ《アンスズ》」
光がレオンの目に集まる。
アンスズは、知恵と情報のルーン。
すると、敵の動きが光の線となって見え始めた。
「見える……!」
「何が?」
ガルが聞く。
「敵の攻撃の流れだ」
レオンは敵を見ながら指示を出す。
「正面の二人は攻撃。
右の三人は、俺たちを囲もうとしてる」
そして中央の男を見る。
「中央の男は、まだ魔法を使っていない」
ガルが驚く。
「つまり、あいつが一番危険ってことか」
「そういうことだ」
レオンは叫んだ。
「アンスズの役割は、敵を読むこと!」
その瞬間、敵が動いた。
「今だ!」
レオンが次のルーンを発動する。
「ᚱ《ライド》!」
足元に光の道が伸びた。
ライドは、道と移動を意味するルーン。
「ガル、左へ!」
「分かった!」
ガルが光の道を駆ける。
一瞬で敵の横を通り抜けた。
「速い!」
「逃がすな!」
敵がガルを追いかける。
「それでいい!」
レオンが笑う。
「ライドの役割は、敵を動かすことだ!」
ガルが敵を引きつけることで、正面に大きな隙が生まれた。
「今度は俺の番だ!」
ガルが振り返る。
「ᛏ《ティール》!」
赤い光が全身を包む。
ティールは勇気と戦いのルーン。
ガルが真正面から敵へ突っ込んだ。
「うおおおおっ!」
ドンッ!
一人。
二人。
三人。
敵が次々と吹き飛ばされる。
「ティールは、正面から敵を突破する!」
ガルが叫ぶ。
「俺が道を作る!」
「そのまま頼む!」
しかし――。
黒ローブの男が手を掲げた。
「ᚲ《ケナズ》!」
巨大な炎がガルへ向かって飛ぶ。
「ガル!」
ドォォン!
炎が爆発した。
「ガル!」
レオンが駆け寄る。
煙の中で、ガルが倒れていた。
「……くっ」
「大丈夫か!?」
「ああ……だが、少し動きにくい」
ミレイがタロットを引く。
一枚のカードが現れる。
「『節制』」
レオンがカードを見る。
「どうする?」
「今は攻撃を続けるより、仲間を立て直すべきよ」
レオンは頷いた。
「なら、最後のルーンだ」
レオンが前足を掲げる。
「ᛒ《ベルカナ》!」
緑色の光がガルを包み込んだ。
ガルの傷が少しずつ癒えていく。
「……動ける」
ガルが立ち上がった。
レオンは敵を見据える。
「ベルカナは、仲間を回復させる」
そして四つのルーンを振り返る。
「これで分かった」
レオンが言った。
「アンスズは敵を見る」
「ライドは敵を動かす」
「ティールは敵を突破する」
「ベルカナは仲間を立て直す」
ガルが頷く。
「つまり――」
レオンが叫ぶ。
「四つを繋げる!」
「行くぞ!」
ガルが再び走り出す。
「ᛏ《ティール》!」
正面から敵を引きつける。
その瞬間、レオンがアンスズを発動する。
「右から来る!」
「了解!」
ガルが攻撃をかわす。
レオンはライドを発動。
「ᚱ《ライド》!」
光の道がガルの足元に伸びる。
ガルがその道を一気に駆け抜け、敵の背後へ回った。
「今だ!」
「おおおおっ!」
ティールの力で敵陣を突破する。
黒ローブの男が驚く。
「馬鹿な……!」
「まだ終わってない!」
レオンが叫ぶ。
敵が最後の攻撃を放つ。
ガルが吹き飛ばされる。
「ガル!」
レオンはすぐにベルカナを発動する。
「ᛒ《ベルカナ》!」
ガルが立ち上がる。
「助かった!」
「もう一度いけるか?」
「もちろんだ!」
ミレイがタロットをめくる。
「『戦車』!」
レオンが振り返る。
「前進ってことだな?」
「ええ。今よ!」
レオンが敵の動きを読む。
「左!」
ガルが左へ。
「ライド!」
光の道を走る。
「ティール!」
ガルが正面から突撃する。
そして――。
「ベルカナ!」
傷ついたガルを再び回復させる。
四つの力が、ひとつの流れになる。
読む。
動かす。
攻める。
立て直す。
その連携によって、敵は完全に追い込まれた。
黒ローブの男が後退する。
「猫と犬が……たった四つのルーンで……!」
レオンは静かに答えた。
「違う」
一歩前へ出る。
「四つのルーンだから強いんじゃない」
ガルが隣に並ぶ。
「使い方を繋げるから強いんだ」
ミレイも微笑む。
「そして、どの力を使うかを決めるのが――」
タロットカードを掲げる。
「タロット」
黒ローブの男の表情が変わった。
「……覚えておけ」
男が黒い煙に包まれる。
「その程度の力では、いずれ我々には勝てなくなる」
煙が消える。
男の姿も消えていた。
レオンは追わなかった。
「逃げたか……」
ガルが息を吐く。
「でも、今日は勝った」
「ああ」
レオンは四つのルーンを見る。
「この四つを、もっと使いこなさないとな」
ミレイが頷く。
「ええ。これから先、もっと強い敵が現れるはずよ」
レオンは真剣な顔で頷いた。
――そのとき。
グゥゥゥ……。
神殿に大きな音が響いた。
ガルがレオンを見る。
「……今のは?」
レオンは腹を押さえた。
「ベルカナでも治せないものがある」
「何?」
「空腹だ」
「……」
ミレイが呆れた顔でため息をついた。
「それはルーンじゃなくて、食事で解決して」
「それも戦略だ」
「どんな戦略よ!」
神殿に、三匹の笑い声が響いた。




