第5話 四つのルーン、初めての連携
第5話 四つのルーン、初めての連携
暗い通路を、レオン、ガル、ミレイの三匹は進んでいた。
「……静かすぎるな」
レオンが周囲を見回す。
壁には、先ほど見た四つのルーンが刻まれている。
ᚨ《アンスズ》。
ᚱ《ライド》。
ᛏ《ティール》。
ᛒ《ベルカナ》。
「さっき教えてもらったけど、本当にこの四つが重要なのか?」
レオンがミレイに尋ねる。
「ええ」
ミレイは頷いた。
「アンスズは知恵。ライドは道。ティールは勇気。そしてベルカナは成長」
ガルが歩きながら言う。
「つまり、頭を使って、道を選び、勇気を出して、成長しろってことか」
「そういうことね」
「……俺には全部必要だな」
「お前は特にな」
レオンが即答した。
「なんでだよ!」
「さっき道に迷ってただろ」
「それはお前もだ!」
二匹が言い合っていると――。
ドンッ!
通路の奥から衝撃音が響いた。
三匹が同時に振り向く。
「来たわね」
ミレイがカードを取り出す。
「人間たちよ」
「もう追いついたのか!」
レオンが身構える。
奥から黒いローブの人間たちが姿を現した。
「聖域を見つけたぞ!」
「猫と犬を逃がすな!」
ガルが牙をむく。
「レオン、どうする?」
「決まってる!」
レオンが前へ出た。
「戦う!」
一人の人間が手を掲げる。
「ᚲ《ケナズ》!」
炎の球が飛んできた。
「来るぞ!」
レオンは素早くルーンを発動する。
「ᛚ《ラグズ》!」
水の渦が炎を包み込む。
ジュワァッ!
炎が消える。
「今だ、ガル!」
「任せろ!」
ガルが地面を蹴った。
「ᛏ《ティール》!」
ガルの身体に赤い光がまとわりつく。
「ティールは勇気と戦いのルーン!」
そのまま敵へ突進する。
「ぐわっ!」
人間が吹き飛ばされた。
「やった!」
レオンが喜ぶ。
しかし――。
「まだいるぞ!」
別の人間が二匹の背後へ回っていた。
「しまった!」
ミレイがカードを一枚引く。
「待って!」
カードに描かれていたのは――。
『正義』
ミレイが目を閉じる。
「右よ!」
「右!?」
レオンが反応する。
「右に避けて!」
レオンが横へ飛ぶ。
直後、背後から魔法の刃が飛んできた。
「危なかった……!」
ガルが驚く。
「タロットが教えてくれたのか?」
「ええ」
ミレイが頷く。
「カードは未来を決めない。でも、選ぶためのヒントはくれる」
レオンが笑う。
「なら――俺たちも、もっと強くならないとな」
その瞬間だった。
レオンの身体から、突然まばゆい光が放たれた。
「な、なんだ!?」
壁に刻まれた四つのルーンが光る。
ᚨ《アンスズ》
ᚱ《ライド》
ᛏ《ティール》
ᛒ《ベルカナ》
四つの光がレオンへ集まっていく。
「レオン!」
「分からない……!」
光が消える。
レオンは自分の前足を見つめた。
「何が起きた?」
ミレイが目を見開く。
「……成長したのね」
「成長?」
「ベルカナの力よ」
ガルがレオンを見る。
「つまり、レオンが少し強くなったってことか?」
「そう」
「よかったな」
「おう!」
レオンが胸を張る。
するとガルが一言。
「じゃあ、もう少し賢くなった?」
「……」
レオンの耳がピクッと動く。
「そこはアンスズの力じゃないのか?」
「知らん」
「おい!」
そのとき、人間たちが再び魔法を構えた。
「くだらない会話は終わりだ!」
「まだいたのか!」
レオンが振り返る。
敵は十人以上。
しかも、その中央には第2話で戦った黒ローブの男が立っていた。
「ようやく見つけたぞ」
男が笑う。
「古代ルーンの聖域――」
そして、男の視線がレオンへ向けられる。
「そして、その力を目覚めさせた猫もな」
レオンの表情が変わる。
「俺を狙ってるのか?」
「そうだ」
男が手を掲げる。
「その力を奪えば――」
黒い炎が膨れ上がる。
「世界征服は、さらに近づく!」
レオンは一歩前へ出た。
ガルも隣に並ぶ。
ミレイはタロットを握りしめる。
「……来るぞ」
レオンがルーンを構えた。
「なら、俺たちも――」
その瞬間。
聖域の奥から、巨大な扉が開いた。
ゴゴゴゴゴ……。
全員が振り返る。
扉の向こうには、まばゆい光が広がっていた。
そして、その中央には――。
これまで見たことのない巨大なルーンが刻まれていた。
ミレイが息をのむ。
「……あれは」
ガルが尋ねる。
「何だ?」
ミレイは震える声で答えた。
「古代ルーンの中でも、最も危険な力……」
レオンは巨大なルーンを見つめた。
その文字が、ゆっくりと光り始める。
――そして、聖域全体が揺れ始めた。




