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幕間 『ヴェリタス日報』文化部 草稿
その写し絵は「密会」か ──動かぬ一枚が語る不自然について
本紙はこのたび、演劇界を揺るがす一件について独自の検証を行った。
結論から述べる。あの写し絵は、氏の不貞を証明するものではない。
止め絵に写っているのは、前後を失った断片にすぎない。夫人が氏の胸元に手をかけ、氏の手が夫人の背に添えられている──その一瞬だけを見れば、抱擁のようにも見えるだろう。
だが、その直前に何があったのか。直後に何が起きたのか。
夫人が体調を崩して倒れかかり、氏が反射的に支え直ちに身を離した──そのように動いていたとしても切り取られた一瞬の絵はまったく同じ形になる。
「密会」と断ずるにはこの一枚は情報が足りなすぎる。
もし『ランタン報知』が氏の不貞を報じるというのならまず提示すべきは前後の記録であろう。二人がどのように近づきどのように離れたのか。それを示して初めてあの一枚は証拠たり得る。
本紙は『ランタン報知』に対し当該写し絵の原本および記録の前後の提示を求めたが、回答は得られていない。
なお、同紙は記事中で「劇場関係者」および「匿名の被害女性」の証言を掲載しているがいずれも氏名・所属の記載がなく、本紙の照会に対しても……
(以下、原稿は完成しているが、掲載されなかった)




