それぞれの結婚と別れ
最後の冒険から一年後。
フレデリック・ラメーたちは、
本当にそれぞれの道へ進み始めていた。
派手な解散式はない。
王からの勲章もない。
だが。
地方では静かに知られていた。
「あのパーティーは、ちゃんと終われた」
それだけで、
十分珍しかった。
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## フレデリックの結婚
フレデリックは、
冒険者ギルド資料管理部へ入った。
依頼分析。
危険区域整理。
死亡率統計。
新人向け撤退基準作成。
完全に適職だった。
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結婚相手は、
元ギルド受付員。
エレナ・フォルド
昔から、
彼の報告書を読んでいた女性だった。
最初に惹かれた理由を聞かれ、
彼女は困った顔で言った。
「報告書が丁寧だったから」
ロナルドは爆笑した。
「色気がねぇ!」
だが。
フレデリックらしい理由だった。
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結婚後も、
二人は静かだった。
派手ではない。
だが。
喧嘩が少ない。
無理をしない。
生活設計が堅実。
それはまるで、
彼自身の冒険運営そのものだった。
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## ロナルド
ロナルドは、
地方護衛学校の教官になった。
そして。
鍛冶屋の娘と結婚。
マリナ・ベルク
よく食べ。
よく笑い。
声が大きい女性。
ロナルドとは妙に相性が良かった。
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結婚後。
ロナルドは新人へ、
毎回同じことを言う。
「無理して英雄になるな」
「家に帰れ」
若者たちは最初、
地味だと思う。
だが。
数年後に意味を理解する。
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## ドナシアン
ドナシアンは、
地方巡回隊へ入った。
対魔物。
街道警備。
村支援。
昔より顔が柔らかくなった。
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結婚相手は、
薬師見習い。
リシェル・アーヴィン
グール討伐時、
救助した少女の一人だった。
当時はまだ子供だったが、
後に正式な薬師となり再会。
そこから少しずつ交流が続いた。
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ドナシアンは昔、
英雄願望が強かった。
だが。
最後に選んだのは。
“守る側の日常”。
それが、
彼自身少し不思議だった。
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## バルテルミ
バルテルミは、
地方工房を開いた。
薬剤。
保存食。
防腐。
街道補給品。
彼の工房製品は、
冒険者たちから高評価だった。
理由は単純。
「実戦を知ってる」
から。
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結婚相手は、
同じ錬金術師。
サラ・ミュリエ
研究好き同士。
夜中まで発酵実験して、
小野に怒られることもあった。
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## アクセル
アクセルは、
街道物流管理へ入った。
危険察知能力が、
異様に役立った。
「この橋嫌な感じする」
実際、
後で崩落寸前だったこともある。
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彼は結婚が一番遅かった。
本人が自信を持てなかったからだ。
「頭、あんまり良くないし」
だが。
最終的に。
宿屋の未亡人と再婚。
ミレーユ・ダン
彼女は言った。
「ちゃんと帰ってくる人が好きなの」
アクセルは、
少し泣いた。
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## 小野耕作
小野 耕作
彼は結局。
辺境街道沿いで、
酒場兼宿を開いた。
名前は。
「帰り道亭」
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濁酒。
温かい煮込み。
安い部屋。
そして。
妙に安全知識が多い店主。
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若い冒険者へ、
毎日のように言う。
「予備靴持ったか?」
「撤退金残せ」
「無理な依頼受けるな」
最初は煙たがられる。
だが。
生き残った者ほど、
後で礼を言いに来る。
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彼は結婚しなかった。
本人曰く。
「人生二周目で十分満喫した」
らしい。
ただ。
近所の未亡人たちから、
妙に世話を焼かれていた。
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## 最後の集まり
数年後。
「帰り道亭」。
元パーティーメンバーが、
家族連れで集まる。
子供たちが走る。
騒がしい。
昔のような緊張感はない。
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ロナルドの息子が、
木の棒を振り回していた。
「冒険者になる!」
すると。
全員が同時に言う。
「準備しろ」
「補給覚えろ」
「撤退覚えろ」
「保存食大事」
子供はぽかんとしていた。
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小野が笑う。
「夢が地味だなぁ」
フレデリックも笑う。
「でも長生きしますよ」
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窓の外。
平和な街道。
商人。
旅人。
子供。
戦争時代なら、
存在しなかった光景。
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戦争を終わらせる設計。
壊れない冒険。
無理をしない人生。
それは、
派手な英雄譚にはならなかった。
だが。
次の世代が、
普通に生きられる世界を残した。
そして彼らは、
それを少し誇りに思っていた。




