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最後の冒険と花道

春。


雪が消え、

街道に商人たちが戻り始めた頃。


フレデリック・ラメーたちは、

正式に最後の長期依頼を受けた。


---


## 北方旧要塞群調査


かつて。


戦争時代に築かれた、

山岳防衛要塞群。


終戦後、

多くは放棄された。


だが最近。


周辺で魔物増加。


失踪者。


夜間発光。


さらに。


旧地下兵站路の存在が確認された。


---


ギルドは理解していた。


これは。


単純討伐ではない。


長期調査。


補給管理。


撤退判断。


そういう能力が必要。


だから。


最後の依頼先として、

彼らに白羽の矢が立った。


---


ギルド長は静かに言った。


「本当にこれで最後にするのか?」


ロナルドが笑う。


「最後だから受けるんですよ」


---


## 出発前


驚くほど静かだった。


若い頃のような高揚感はない。


代わりに。


確認。


点検。


整理。


---


### 小野


小野 耕作


最後まで帳簿を確認していた。


「帰還後資金、ちゃんと残す」


「店開く金消すなよ」


フレデリックが苦笑する。


「最後まで現実的ですね」


「夢だけで老後は越せないからな」


---


### アクセル


アクセル


黙々と荷物を縛る。


昔より少し動きは遅い。


だが。


異常に丁寧だった。


彼はぼそっと言った。


「……最後なら」


「ちゃんと帰る」


---


### バルテルミ


バルテルミ


今では完全に専門職の顔だった。


薬剤。


防腐。


補修。


保存。


彼がいなければ、

長期遠征は成立しない。


---


## 山岳旧要塞


崩れた石壁。


古い旗。


風。


ここは。


戦争の名残だった。


---


フレデリックは、

静かに壁を見た。


「昔はここで」


「何万人も死んだんでしょうね」


小野が答える。


「でも今は」


「魔物と風しかいない」


それが、

大滝王国の戦後だった。


戦場を、

次の百年へ持ち越さない。


---


## 地下兵站路


暗い。


広い。


古い軍用通路。


そして。


魔物の巣になっていた。


---


### グール


グール


### ガーゴイル


ガーゴイル


### 大型腐敗蜘蛛


古戦場由来の変異種。


---


## 最後の連携


驚くほど自然だった。


命令が少ない。


叫ばない。


見れば分かる。


長年積み上げた練度。


---


ロナルドが前を止める。


ドナシアンが流れを切る。


フレデリックが視界制御。


バルテルミが環境維持。


アクセルが退路確認。


小野が全体を見る。


---


派手ではない。


だが。


崩れない。


それが彼らの強さだった。


---


## 最深部


そこには。


古い戦争司令室が残っていた。


机。


地図。


崩れた旗。


そして。


大量の古い書類。


---


フレデリックは、

その一枚を拾う。


そこには。


昔の指揮官の走り書き。


---


「補給限界」


「これ以上進軍不可」


「兵士疲弊」


「だが本国は継戦要求」


---


小野が静かに言う。


「昔の人間も同じだな」


「壊れるまで止まれなかった」


誰も否定しなかった。


---


## 最後の戦闘


帰還直前。


地下深部から、

巨大な異形が現れる。


古戦場魔力で変質した、

巨大融合グール。


普通なら。


ここで欲が出る。


討伐名誉。


素材。


勲章。


だが。


フレデリックは一瞬で判断した。


「撤退」


ロナルドが即座に動く。


誰も反論しない。


もう理解している。


“勝てるか”ではない。


“割に合うか”。


---


## 花道


撤退中。


ガーゴイル群が襲来。


最後尾。


アクセルが立つ。


「先行け」


ロナルドが怒鳴る。


「馬鹿!」


だが。


小野が冷静だった。


「五秒でいい!」


アクセルが荷車を倒す。


通路封鎖。


その隙に全員離脱。


最後。


アクセル自身も滑り込む。


ギリギリだった。


---


地上へ出た瞬間。


朝日。


風。


全員、

しばらく何も喋らなかった。


---


## 帰還


ギルド。


報告完了。


資料提出。


補給路情報。


古戦場記録。


魔物分布。


全て整理済み。


ギルド長は苦笑した。


「最後まで」


「仕事が丁寧だな」


---


## 解散の日


数日後。


酒場。


最後の食事。


騒がしくはなかった。


ただ。


静かだった。


---


小野が濁酒を持ち上げる。


「乾杯」


「生還に」


全員が杯を上げる。


---


若い頃夢見た、

英雄叙事詩のような終わりではない。


王国中に名を轟かせたわけでもない。


伝説級でもない。


だが。


誰も死ななかった。


誰も壊れなかった。


借金もない。


憎しみもない。


未来も残った。


---


それは。


戦争を“終わらせる設計”から始まった国で。


彼らが最後に辿り着いた、

静かな花道だった。


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