表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/24

解散会議

冬の終わり。


遠征帰りの宿。


雪解け水の音が、

静かに窓の外から聞こえていた。


その夜。


小野 耕作が、

珍しく真面目な顔で言った。


「そろそろ」


「パーティー解散を考えよう」


空気が止まった。


---


ロナルドが眉をひそめる。


「……急だな」


小野は濁酒を少し飲む。


「いや」


「前から考えてた」


---


## 理由


小野は静かに続ける。


「練度は上がってる」


「連携も良い」


「判断も昔よりずっと上手い」


そこまでは全員理解していた。


だが。


次の言葉が重かった。


「でも」


「瞬発力が落ち始めてる」


誰もすぐ否定できなかった。


---


## 老化


ロナルドは、

ここ数年、

回避の初動がわずかに遅くなっていた。


本人も気づいている。


---


ドナシアンは、

長時間戦闘後の疲労回復が遅い。


---


フレデリック・ラメーも、

魔力制御集中時間が少しずつ短くなっていた。


---


アクセルは、

頭痛頻度が増えている。


---


小野は全員を見渡した。


「昔なら避けられた一撃を」


「いつか避け損ねる」


「その一回で死ぬ」


静かな声だった。


だが。


全員、

現実として理解できた。


---


## 冒険者の終わり


若い冒険者たちは、

引退を敗北だと思っている。


だが。


長く生き残った者ほど知っている。


“引き際”が一番難しい。


---


小野は言った。


「冒険者ってな」


「成功して辞める奴、少ないんだ」


「大体は」


「借金」


「後遺症」


「仲間の死」


「判断ミス」


「無理な依頼」


「そのどれかで壊れる」


酒場の喧騒が遠かった。


---


## 第二の道


バルテルミが小さく聞く。


「……でも、何をするんです?」


小野は少し笑った。


「だから今考えるんだよ」


「壊れてからじゃ遅い」


---


## それぞれの未来


### フレデリック


資料整理能力。


依頼分析。


危険予測。


ギルド戦術補佐適性。


---


### ロナルド


新人盾役指導。


護衛訓練。


槍術教官。


---


### ドナシアン


地方防衛隊。


治安補助。


対魔物巡回。


---


### バルテルミ


正式錬金術師。


補給部門。


薬剤工房。


---


### アクセル


荷運管理。


街道警備補助。


危険察知役。


---


### 小野


酒造。


宿経営。


地方情報仲介。


---


## フレデリックの沈黙


しばらく誰も喋らなかった。


最初に口を開いたのは、

フレデリックだった。


「……怖いですね」


小野は頷く。


「うん」


「終わるの怖い」


そこには、

変な格好つけがなかった。


---


フレデリックは続ける。


「でも」


「確かに最近」


「“事故る未来”を考えるようになった」


それは、

長く生き残った冒険者だけが持つ感覚だった。


---


## 戦争設計国家の価値観


大滝王国では、

少しずつ価値観が変わっていた。


昔。


「最後まで戦う英雄」


今。


「壊れる前に次へ移る人間」


それもまた、

尊重され始めている。


---


戦争設計から始まった思想。


“現在の犠牲”と“将来の危険”。


それは国家だけではなく。


個人の人生設計にも、

浸透し始めていた。


---


## 最後の遠征計画


小野は最後に言った。


「あと一年ぐらいかな」


「そこで綺麗に畳もう」


ロナルドが苦笑する。


「商売みたいに言うな」


小野は酒を飲む。


「人生、店じまいも大事なんだよ」


誰も笑わなかった。


だが。


誰も反対もしなかった。


それが。


長く生き残ってきた者たちの、

静かな現実感だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ