ミノタウロス退治
五年後。
フレデリック・ラメー率いるパーティーは、
地方ではかなり知られた存在になっていた。
理由は単純な武勇伝ではない。
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* 全滅しない
* 借金を抱えない
* 仲間割れしない
* 依頼放棄率が低い
* 地方評価が高い
* 補給管理が丁寧
つまり。
「信用できる」
それが彼らの最大の武器だった。
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## Cランク昇格試験
大滝王国冒険者ギルドでは、
Cランクから扱いが変わる。
単なる日雇い戦力ではなく。
“地域防衛補助戦力”
として認識される。
護衛範囲。
依頼権限。
装備購入信用。
全て上がる。
だが。
当然、
試験も重い。
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今回の昇格課題。
## ミノタウロス討伐
ミノタウロス
北部旧坑道迷宮。
単独個体確認。
周辺初級冒険者被害多数。
通常なら、
Cランク数組合同案件。
つまり。
“実質試験”。
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ギルド会議室。
担当官が言う。
「正面戦闘能力だけではありません」
「撤退判断」
「連携」
「被害管理」
「それも評価対象です」
フレデリックは、
そこに少し安心した。
この国の試験は、
“無謀な英雄性”だけを見ない。
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## 作戦会議
宿。
地図。
資料。
過去討伐記録。
フレデリックは静かに言った。
「まず前提確認」
「ミノタウロスは正面戦闘特化」
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### 特徴
* 高筋力
* 高突進力
* 狭所適性高
* 疲労耐性高
* 怒ると突撃優先
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ロナルドが腕を組む。
「真正面から殴り合うと負けるな」
「だから殴り合わない」
即答だった。
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## 小野の意見
小野 耕作が言う。
「牛系は足滑ると一気に崩れる」
「重いから」
ドナシアンが驚く。
「そんなこと分かるんですか?」
「昔、酔った大男止める時よく転ばせた」
妙に説得力があった。
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## バルテルミの準備
バルテルミは、
粘性油を準備。
さらに。
発煙薬。
簡易閃光粉。
「視界妨害できれば突進精度落ちます」
数年前なら、
ただの荷物持ち扱いだった少年。
今は、
完全に戦術要員だった。
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## アクセルの違和感
迷宮入口。
アクセルが低く言う。
「……帰り道覚えとけ」
全員頷く。
ミノタウロス戦で怖いのは、
勝敗だけではない。
消耗後の帰還不能。
だから。
撤退路確保が最重要。
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## 迷宮内部
旧坑道。
湿気。
狭い。
足場悪い。
フレデリックは確認する。
「絶対単独行動するな」
ロナルドが笑う。
「今さらだ」
五年間、
誰も単独突撃しなかった。
それがこのパーティーだった。
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## 接触
遠く。
低い唸り。
壁に残る巨大な削れ跡。
そして。
現れる。
二メートル半。
牛頭。
筋肉。
巨大斧。
ミノタウロス。
普通の新人なら、
そこで足が止まる。
だが。
フレデリックは即座に命令。
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## 戦闘開始
「第一位置!」
全員展開。
狭所誘導。
正面にロナルド。
側面にドナシアン。
後方支援フレデリック。
補助バルテルミ。
荷車遮蔽アクセル。
小野遊撃。
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ミノタウロス突進。
轟音。
だが。
床。
滑る。
バルテルミの粘性油。
体勢がわずかに崩れる。
そこへ。
ロナルドの槍。
脚部。
ドナシアン追撃。
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## 小野の技
ミノタウロスが斧を振るう。
普通なら防御不能。
だが小野が叫ぶ。
「横じゃない!」
「前へ崩せ!」
ロナルドが半歩踏み込む。
槍で重心を逸らす。
巨大斧が壁へ激突。
火花。
その隙。
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## フレデリック
火球ではなかった。
酸素消費を避ける。
代わりに。
圧縮風弾。
耳。
目。
平衡感覚を乱す。
「今だ!」
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ドナシアンが核部位へ斬撃。
ロナルド追撃。
ミノタウロス絶叫。
突進。
だが。
アクセルが先に気づく。
「壁壊れる!」
全員退避。
直後。
坑道崩落。
もし遅れていたら、
巻き込まれていた。
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## 決着
消耗。
疲労。
長期戦。
だが。
焦らない。
欲張らない。
最後。
ロナルドの槍が、
喉を貫いた。
沈黙。
ミノタウロス崩れる。
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## 試験官評価
後日。
ギルド。
試験官は記録書を見ながら言った。
「珍しいですね」
「被害軽微」
「連携維持」
「撤退想定あり」
「補給計画正常」
「民間被害ゼロ」
そして。
少し笑った。
「あなた方、“戦争が上手い”というより」
「“壊れにくい”ですね」
フレデリックは静かに答えた。
「長く続けたいので」
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## Cランク昇格
こうして。
フレデリックパーティーは、
正式にCランクへ昇格した。
酒場では、
派手な英雄談ではなく、
別の噂が流れる。
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「あの連中は死ににくい」
「撤退が上手い」
「準備がおかしいほど細かい」
「でも依頼達成率高い」
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それは。
大滝王国という、
“戦争を終わらせる設計”から始まった国家で育った、
新しい時代の冒険者たちだった。




