濁酒で小遣い稼ぎ
冬越え護衛依頼から戻った後。
フレデリックパーティーは、
地味な問題に直面していた。
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## 金が減る
生還率は高い。
依頼成功率も悪くない。
だが。
装備維持。
薬剤。
保存食。
馬。
防寒具。
遠征費。
“死なない運営”は、
思った以上に金がかかる。
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ロナルドがため息をつく。
「結局、前衛装備が高い……」
ドナシアンも頷く。
「剣も研ぎ代が馬鹿にならない」
バルテルミは帳簿を見て青ざめていた。
「解毒薬の補充費が……」
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その時。
小野が静かに言った。
「濁酒作るか」
全員が止まる。
「……は?」
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## 小野耕作の副業
小野 耕作
元酒屋店主。
つまり。
酒の原価構造を知っている。
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小野は言った。
「地方は保存酒不足が多い」
「特に辺境村」
「強い酒は高い」
「でも濁酒なら比較的安く作れる」
フレデリックが聞く。
「法律は?」
「大滝王国は登録制だな」
「小規模醸造なら税払えば可能」
そこが戦争設計国家らしかった。
全面禁止ではなく、
管理運用。
地下酒密造を増やすより、
合法化した方が治安コストが低い。
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## パーティー会議
当然、
反対意見も出た。
ロナルド。
「冒険者が酒売るのか?」
ドナシアン。
「イメージ大丈夫ですか?」
だが小野は冷静だった。
「生還率高いパーティーほど」
「副収入を持ってる」
「無理な高難易度依頼に飛びつかなくて済むから」
その場が静かになる。
確かに。
金欠冒険者ほど、
危険依頼へ行く。
そして死ぬ。
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フレデリックは考えた後、
頷いた。
「やりましょう」
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## 濁酒作り
パーティー資金の一部を使い、
小規模醸造開始。
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### 小野の指導
「雑菌管理大事」
「樽は洗え」
「温度変化急にするな」
「水源選べ」
バルテルミが興奮していた。
「発酵って錬金術に近い……!」
小野は笑う。
「実際かなり近いよ」
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アクセルは黙々と樽運搬。
異常に丁寧。
「落とすな」
それだけ繰り返す。
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## 初販売
最初の販売先は、
護衛依頼先の寒村。
冬場。
酒需要が高い。
しかも。
大商会は来ない。
量が少なく利益薄いからだ。
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小野はそこを狙った。
「こういう場所は固定客になる」
「信用が大事」
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## 村での反応
最初。
村人たちは警戒した。
「冒険者の酒ぅ?」
「危なくないか?」
だが。
小野は無理売りしなかった。
まず自分で飲む。
次に村長へ。
それから。
「不味かったら金いらない」
結果。
意外に好評。
濁酒特有の甘み。
寒村向き。
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村老人が笑う。
「昔の酒に近いな」
小野も笑った。
「変に高級化してないからね」
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## 意外な効果
濁酒販売は、
単なる副収入では終わらなかった。
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### 情報が集まる
酒場代わりになる。
村人が話す。
* 魔物目撃
* 崩れた橋
* 怪しい旅人
* 病気流行
* 山道状況
フレデリックが驚く。
「情報収集効率が高い……」
小野は頷く。
「酒屋ってな」
「半分、情報屋なんだよ」
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## 冒険者ギルドの評価
ギルド側も意外と好意的だった。
理由は簡単。
問題を起こしていない。
むしろ。
地方流通補助になっている。
大滝王国では、
こういう“半民間インフラ”が重視される。
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## 夜
宿。
小野が帳簿を見ながら言う。
「よし」
「これで無理な依頼減らせる」
ロナルドが苦笑する。
「冒険者っぽくないな」
小野は酒を飲む。
「冒険者って本来」
「生きて帰る職業だろ?」
その言葉に、
アクセルが静かに頷いた。
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派手な英雄譚ではない。
だが。
大滝王国の片隅で。
“壊れない冒険者運営”が、
少しずつ形になり始めていた。
酒。
情報。
維持費。
撤退判断。
戦争設計国家の思想は、
いつの間にか、
冒険者たちの生き方にまで染み込んでいた。




