冬前の護衛依頼
## 冬前の護衛依頼
北部街道。
雪が降る前に、
交易隊を通したい商会から依頼が来た。
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### 依頼内容
* 商隊護衛
* 行程六日
* 山道あり
* 野盗出没情報あり
報酬は悪くない。
だが。
経験者ほど嫌がる依頼だった。
冬前の山道は、
魔物より環境が危険だからだ。
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ギルド酒場では、
若い冒険者たちが笑っていた。
「野盗なんて大したことないだろ」
「人数多けりゃ押し切れる」
小野は酒を飲みながら、
ぼそっと言った。
「冬山で怖いのは敵じゃない」
「判断ミスだよ」
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## 出発前
フレデリックパーティーは、
また地味な準備を始めた。
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### バルテルミ
保存食の塩分調整。
凍傷対策油。
水袋保温。
「寒いと喉の渇き気づきにくいので」
小野が感心する。
「ちゃんとしてるなぁ」
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### アクセル
荷車重量再計算。
不要物排除。
「重いと坂で死ぬ」
短いが正しい。
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### ロナルド
靴底改修。
滑り止め追加。
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### ドナシアン
予備マント購入。
「濡れる前提で考える」
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### 小野
妙なものを大量購入。
紐。
布。
木片。
鍋。
酒。
フレデリックが聞く。
「そんなに必要です?」
小野は答える。
「必要になってからじゃ遅い」
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## 商隊
依頼主は中規模商会。
隊商長は、
最初フレデリックたちを少し軽視していた。
若い。
地味。
英雄感がない。
だが。
出発初日で評価が変わる。
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## 小野の“店主力”
野営地。
小野が即座に配置を決める。
「荷車間隔空けすぎない」
「焚火は風下」
「酒飲むなら交代見張り決めてから」
商人たちが驚く。
慣れている。
しかも。
言い方が柔らかい。
命令ではなく、
自然に従わせる。
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隊商長が聞いた。
「元軍人か?」
小野は笑った。
「酒屋だよ」
誰も信じなかった。
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## 山道
三日目。
雪混じりの風。
視界悪化。
その時。
アクセルが立ち止まる。
「……静かすぎる」
ロナルドも気づく。
鳥がいない。
風音しかない。
小野が即座に言う。
「止まるな」
「ここ、“待つ場所”だ」
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次の瞬間。
矢。
山上から。
野盗。
だが。
フレデリックたちは慌てなかった。
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## 事前設計
小野が叫ぶ。
「荷車寄せろ!」
アクセル即座に移動。
簡易防壁形成。
ロナルド槍構え。
ドナシアン側面警戒。
フレデリックは視界確保用の小光球。
バルテルミ煙薬準備。
全部、
事前に役割共有済み。
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野盗側は困惑した。
普通の商隊は、
ここで崩れる。
叫ぶ。
逃げる。
荷崩れ。
混乱。
だがこの隊は、
静かだった。
異様なほど。
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## 小野の動き
野盗一人が荷車を越えて突入。
小野が前に出る。
剣ではない。
体捌き。
腕。
重心。
相手を転ばせる。
そこへドナシアンが制圧。
ロナルドが驚く。
「今の何だ!?」
「柔道」
誰も分からなかった。
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## 戦闘終了
長引かなかった。
野盗側が撤退。
理由は簡単。
“崩せなかった”から。
待ち伏せは、
最初の混乱が命。
そこを耐えられると、
消耗だけ増える。
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## 夜
商人たちは、
完全に態度が変わっていた。
「助かった……」
「今までの護衛と違う……」
小野は酒を飲みながら笑う。
「派手じゃないからねぇ」
隊商長が真顔で言う。
「いや」
「だから生き残るんだろう」
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## 小野の過去
焚火の前。
珍しく、
小野が昔話をした。
「前世でな」
「店やってると色んな人来るんだ」
「酔っ払い」
「借金持ち」
「喧嘩屋」
「寂しい老人」
「夢だけ大きい若者」
静かな声だった。
「で、分かった」
「人間って、大体」
『壊れる前に兆候がある』
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フレデリックは、
その言葉を覚えた。
戦場でも。
冒険でも。
国家でも。
壊れる前には、
必ず小さな無理が積み上がる。
大滝王国がやっていることも、
結局それなのだろう。
“壊れてから英雄的に直す”のではなく。
壊れにくく設計する。
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雪が降り始める中。
奇妙な混成パーティーは、
静かに山を越えていった。
派手な伝説はまだない。
だが。
「生還率が高いパーティー」
として、
少しずつ名前が広がり始めていた。




