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灰色沼地討伐依頼

## 灰色沼地討伐依頼


秋。


冒険者ギルドに、

新しい依頼が貼り出された。


---


### 灰色沼地の異常調査


* 行方不明者 三名

* 大ネズミ異常増殖

* 夜間発光現象あり

* 報酬 銀貨二十枚


初級と中級の境界依頼。


つまり。


「油断した初心者が死ぬ類」


---


ギルド内は騒がしかった。


「発光って呪いじゃないか?」


「いや魔鉱石だろ」


「宝があるかもしれん」


だがフレデリックは、

掲示板より、

横の補足資料を読んでいた。


大滝王国では、

過去被害報告も公開されている。


---


### 被害者共通点


* 夜間移動

* 沼中央部進行

* 松明複数使用

* 重装備


フレデリックは眉をひそめた。


「……妙だな」


ロナルドが覗き込む。


「何がだ?」


「全員、“重すぎる”」


沼地で重装備。


つまり移動速度低下。


沈下。


疲労増加。


逃走不能。


そこへ発光。


視界誘導。


フレデリックは呟く。


「誘い込み型かもしれない」


---


## アクセルの反応


その時。


荷物整理していたアクセルが、

急に止まった。


「……行くな」


全員が見る。


アクセルは頭を押さえていた。


「沼……嫌だ」


「なんか……嫌な感じする」


言葉が断片的だった。


だが。


元傭兵特有の危険感知。


フレデリックは軽視しなかった。


---


## 事前準備


普通の初心者パーティーなら、

そのまま向かっていた。


だが彼らは違った。


---


### バルテルミ


沼用防腐薬を準備。


靴底油。


虫除け煙。


解毒薬。


「地味だけど大事です」


---


### ロナルド


長槍を改造。


沼では振り回しにくい。


だから突き重視へ変更。


---


### ドナシアン


鎧を軽量化。


「防御下がるぞ?」


「沈むよりマシです」


---


### フレデリック


資料室へ。


過去の沼地魔物記録を読む。


そして見つける。


---


#### 発光スライム変異種


* 光で誘導

* 集団捕食

* 金属腐食性強化

* 夜行性


フレデリックは息を吐いた。


「当たりだ」


---


## 灰色沼地


二日後。


霧。


腐臭。


沈む地面。


アクセルが最前方を歩く。


足場確認役。


彼は棒で地面を突きながら進む。


「ここ固い」


「ここ沈む」


短い言葉。


だが正確だった。


---


途中。


古い鎧を見つける。


半分溶けていた。


ドナシアンが顔をしかめる。


「酸か……」


アクセルが急に低く言う。


「静かに」


全員停止。


遠く。


青白い光。


ふわふわ浮いている。


幻想的ですらある。


だが。


フレデリックは即座に言う。


「見るな」


「距離取れ」


---


## 発光スライム群


光が増える。


一つ。


二つ。


十。


二十。


沼の中から、

半透明の塊が浮かび上がる。


バルテルミが震える。


「多すぎる……!」


普通の冒険者なら、

ここで混乱した。


だが。


フレデリックは事前に決めていた。


---


## 事前設計戦闘


「ロナルド前!」


「狭所維持!」


「ドナシアン右!」


「アクセル荷車下げろ!」


「バルテルミ煙!」


全員、

即座に動く。


迷わない。


相談しない。


事前共有済みだからだ。


---


ロナルドの槍が、

先頭スライムの核を貫く。


ドナシアンが側面処理。


バルテルミの煙薬で、

発光が鈍る。


視界誘導を阻害。


フレデリックは後方から、

火球を小規模制御。


沼地で大火力は禁止。


蒸気爆発が起きる。


だから最小出力。


正確射撃。


---


## アクセル


その最中。


アクセルは戦っていなかった。


荷車を守っている。


撤退路維持。


補給確保。


だが突然。


彼が叫んだ。


「伏せろ!!」


全員反射的に伏せる。


次の瞬間。


巨大酸液塊が飛んできた。


後方奇襲。


大型個体。


もし立ったままなら、

ロナルドの上半身が溶けていた。


沈黙。


ロナルドが青ざめる。


「……助かった」


アクセルは頭を押さえながら、

苦しそうに言う。


「後ろ……いると思った」


---


## 撤退


討伐自体は成功。


だが。


フレデリックは深追いしなかった。


「撤収」


ドナシアンが驚く。


「まだ素材取れます!」


「大型核もあります!」


フレデリックは即答。


「欲張ると死ぬ」


その判断で戻った。


そして翌日。


別パーティーが同じ沼で全滅したと聞く。


理由は。


“素材欲張り”。


---


## ギルド評価


報告書を読んだギルド職員は、

静かに言った。


「……生存重視型か」


派手ではない。


英雄でもない。


だが。


生きて帰る。


継続できる。


それが、

大滝王国で少しずつ増え始めている、

新しい冒険者像だった。


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