元傭兵パーティー加入
ある雨の日。
冒険者ギルドの片隅で、
男が一人、静かに座っていた。
酒は飲んでいない。
騒ぎもしない。
ただ、
ぼんやりと依頼掲示板を見ている。
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## アクセル
アクセル
年齢は三十前後。
短く刈った灰色の髪。
右側の頭部に、
古い傷跡があった。
鉄片のようなものが、
まだ内部に残っているらしい。
昔。
国境紛争地帯で、
爆裂魔法を受けた。
仲間は死んだ。
アクセルだけ生き残った。
だが代わりに。
“難しいこと”を長時間考えられなくなった。
複雑な計算。
長い会話。
多重判断。
それを続けると、
激しい頭痛が起きる。
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戦争前の時代なら、
彼はそのまま捨てられていただろう。
だが。
大滝王国では、
戦後制度の中で、
「軽作業雇用登録」が存在していた。
完全に戦えなくなった元兵士へ、
最低限の仕事を回す制度。
荷運び。
警備補助。
物資整理。
墓地管理。
街道補修。
国としては。
放置して盗賊化されるより、
維持した方が安い。
それが戦後設計国家の考えだった。
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フレデリックは、
依頼帰りにアクセルを見かけた。
大荷物を、
一人で運んでいる。
だが奇妙だった。
荷崩れしない。
足音が静か。
重量配分が異常に上手い。
ロナルドが小声で言う。
「元兵士だな」
ドナシアンも頷く。
「しかも前線経験者」
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フレデリックは話しかけた。
「荷運び仕事、探してます?」
アクセルは少し考えてから答える。
「……たぶん」
返答が遅い。
だが目は濁っていない。
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話を聞くと、
アクセルは複雑な説明が苦手だった。
依頼内容を一気に言われると混乱する。
なのでフレデリックは、
説明方法を変えた。
「荷物を守る」
「危険なら逃げる」
「無理なら言う」
短く区切る。
アクセルは理解した。
「……それならできる」
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## フレデリックパーティー再編
### フレデリックパーティー
* フレデリック 中級魔法使い リーダー
* ロナルド 槍使い
* ドナシアン 剣士
* バルテルミ 錬金術初級
* アクセル 荷物持ち(元傭兵)
ギルド職員は少し驚いた。
「元傭兵を入れるんですか?」
理由は簡単。
壊れている者も多いからだ。
酒。
暴力。
突然の発作。
戦場帰りには珍しくない。
だがフレデリックは言った。
「荷物管理能力が高い」
「周囲警戒もできる」
「あと、この人は無茶しない」
アクセルは、
少し困った顔をした。
褒められているのか、
よく分からなかった。
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## 初任務
街道護衛。
地味な依頼。
しかし。
途中で成果が出た。
アクセルが突然、
馬車を止めた。
「止まれ」
全員が警戒。
すると。
前方の茂みに、
糸。
簡易罠。
盗賊の待ち伏せ。
ロナルドが息を呑む。
「なんで分かった?」
アクセルは首を傾げる。
「……なんとなく」
実際には。
戦場経験だった。
生き残るための感覚だけは、
脳がまだ覚えていた。
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## 夜営
焚火。
アクセルは黙って荷物整理していた。
保存食を湿気から避ける。
水袋を並べる。
刃物を布で包む。
その手際は異様に丁寧だった。
バルテルミが小声で言う。
「すごいですね」
アクセルは少し考えて答える。
「忘れると……死ぬから」
その場が静かになった。
誰も軽口を言わなかった。
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## 大滝王国の変化
戦争設計国家は、
英雄だけを重視しなかった。
壊れた兵士。
疲弊した人間。
能力が欠けた者。
そういう人間を、
完全に捨てると。
後で社会全体が壊れる。
それを、
この国は知っていた。
だから。
アクセルのような男が、
荷物持ちとして、
普通に飯を食える。
それは派手ではない。
だが。
大戦争後の世界では、
かなり珍しいことだった。




