表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/24

フレデリックパーティー

大滝王国。


かつて大戦争寸前まで進みながら、

“終戦設計”によって崩壊を回避した国家。


その結果。


この国には奇妙な安定が生まれていた。


---


戦争孤児が減った。


街道破壊が減った。


盗賊化した敗残兵も少ない。


地方行政が壊れていない。


つまり――


「情報」が残っている。


---


## フレデリック・ラメー


フレデリック・ラメー


十七歳。


地方都市アルヌの下宿で暮らす、

中級魔法使い。


赤茶色の髪。


少し神経質。


だが観察力が高い。


彼は毎朝、

冒険者ギルドへ向かう前に、

市場の掲示板を見る癖があった。


この国では、

魔物出現情報、

街道状況、

病気流行、

税変更、

村の依頼。


そうした情報が、

公的に整理されている。


他国では珍しい。


普通は。


情報は貴族の私物。


軍の秘密。


商会の独占。


だから冒険者は、

勘と噂で死ぬ。


だが大滝王国では違った。


「情報を流した方が社会コストが安い」


それが国の方針だった。


---


## 仲間集め


フレデリックは理解していた。


中級魔法使い単独では、

長生きできない。


だからまず、

“壊れにくい仲間”を探した。


強さだけではない。


借金癖。


酒乱。


無謀。


秘密主義。


そういう人間を避けた。


戦後安定国家では、

人格情報も比較的集めやすい。


冒険者ギルドに、

最低限の履歴が残っているからだ。


---


## ロナルド


ロナルド


二十一歳。


槍使い。


農村出身。


地味。


だが持久力が高い。


討伐数は平均的だが、

護衛依頼の失敗率が低い。


フレデリックはそこを見た。


「生還率が高い人は、焦らない」


ロナルドは誘いに対して、

まずこう言った。


「無茶しないなら組む」


フレデリックは即答した。


「俺も同じ考えだ」


そこで決まった。


---


## ドナシアン


ドナシアン


十九歳。


剣士。


田舎貴族の三男。


妙に礼儀正しい。


ギルド酒場でも、

酔って暴れない。


フレデリックは、

彼の戦績より、

「トラブル履歴ゼロ」を評価した。


ドナシアンは言う。


「英雄志望ではない」


「食っていければいい」


フレデリックは安心した。


英雄願望が強すぎる人間は、

時々パーティーごと死ぬ。


---


## バルテルミ


バルテルミ


十五歳。


錬金術初級。


まだ見習い。


だが、

薬品管理が丁寧。


帳簿も書ける。


フレデリックは彼を見て言った。


「荷物管理できる人材は貴重」


バルテルミは驚いた。


普通の冒険者は、

錬金術師を“荷物係”扱いする。


だがフレデリックは違った。


「回復薬の管理で生存率が変わる」


「腐った保存食で全滅もある」


戦争設計国家では、

“維持管理”が高く評価される。


それは冒険者文化にも流れていた。


---


## フレデリックパーティー


こうして。


### フレデリックパーティー


* フレデリック 中級魔法使い リーダー

* ロナルド 槍使い

* ドナシアン 剣士

* バルテルミ 錬金術初級


四人は正式登録された。


ギルド受付嬢は、

書類を確認しながら少し笑う。


「珍しいですね」


「全員、“安全重視”型です」


フレデリックは答えた。


「長く稼ぎたいので」


---


## 初級ダンジョン


最初の依頼は地味だった。


---


### 薬草採取


森の外縁部。


バルテルミが慎重に分類する。


「こっちは解熱薬」


「こっちは毒消し素材」


ロナルドは感心した。


「同じ草に見える」


バルテルミは青ざめた。


「それ間違えると死にます」


以後、

誰も勝手に摘まなくなった。


---


### 大ネズミ退治


下水道。


群れ。


病原菌。


フレデリックは火球を乱射しなかった。


酸欠と煙が危険だからだ。


代わりに、

ロナルドが通路封鎖。


ドナシアンが前衛。


バルテルミが燻煙薬。


低損耗。


低消費。


安定処理。


ギルド職員は記録を見て呟く。


「初心者にしては事故率が低いな」


---


### スライム退治


初心者殺し。


油断すると装備を溶かされる。


フレデリックは事前に資料を読んでいた。


「核を狙え」


「酸液を浴びるな」


「倒した後も棒で確認」


この国では、

初級魔物の情報も共有されている。


だから新人死亡率が、

周辺国よりかなり低い。


---


## 夜


依頼帰り。


四人は安酒場で食事していた。


周囲では、

一攫千金を夢見る冒険者たちが騒いでいる。


だがフレデリックは、

静かに帳簿をつけていた。


収支。


薬剤消費。


装備摩耗。


保存食残量。


ロナルドが笑う。


「お前、商人みたいだな」


フレデリックは答えた。


「冒険って、“破産しない設計”も大事だから」


その言葉は、

この国の空気そのものだった。


壊れないこと。


続けられること。


それが、

大滝王国で静かに育っている、

新しい強さだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ