フレデリックパーティー
大滝王国。
かつて大戦争寸前まで進みながら、
“終戦設計”によって崩壊を回避した国家。
その結果。
この国には奇妙な安定が生まれていた。
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戦争孤児が減った。
街道破壊が減った。
盗賊化した敗残兵も少ない。
地方行政が壊れていない。
つまり――
「情報」が残っている。
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## フレデリック・ラメー
フレデリック・ラメー
十七歳。
地方都市アルヌの下宿で暮らす、
中級魔法使い。
赤茶色の髪。
少し神経質。
だが観察力が高い。
彼は毎朝、
冒険者ギルドへ向かう前に、
市場の掲示板を見る癖があった。
この国では、
魔物出現情報、
街道状況、
病気流行、
税変更、
村の依頼。
そうした情報が、
公的に整理されている。
他国では珍しい。
普通は。
情報は貴族の私物。
軍の秘密。
商会の独占。
だから冒険者は、
勘と噂で死ぬ。
だが大滝王国では違った。
「情報を流した方が社会コストが安い」
それが国の方針だった。
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## 仲間集め
フレデリックは理解していた。
中級魔法使い単独では、
長生きできない。
だからまず、
“壊れにくい仲間”を探した。
強さだけではない。
借金癖。
酒乱。
無謀。
秘密主義。
そういう人間を避けた。
戦後安定国家では、
人格情報も比較的集めやすい。
冒険者ギルドに、
最低限の履歴が残っているからだ。
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## ロナルド
ロナルド
二十一歳。
槍使い。
農村出身。
地味。
だが持久力が高い。
討伐数は平均的だが、
護衛依頼の失敗率が低い。
フレデリックはそこを見た。
「生還率が高い人は、焦らない」
ロナルドは誘いに対して、
まずこう言った。
「無茶しないなら組む」
フレデリックは即答した。
「俺も同じ考えだ」
そこで決まった。
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## ドナシアン
ドナシアン
十九歳。
剣士。
田舎貴族の三男。
妙に礼儀正しい。
ギルド酒場でも、
酔って暴れない。
フレデリックは、
彼の戦績より、
「トラブル履歴ゼロ」を評価した。
ドナシアンは言う。
「英雄志望ではない」
「食っていければいい」
フレデリックは安心した。
英雄願望が強すぎる人間は、
時々パーティーごと死ぬ。
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## バルテルミ
バルテルミ
十五歳。
錬金術初級。
まだ見習い。
だが、
薬品管理が丁寧。
帳簿も書ける。
フレデリックは彼を見て言った。
「荷物管理できる人材は貴重」
バルテルミは驚いた。
普通の冒険者は、
錬金術師を“荷物係”扱いする。
だがフレデリックは違った。
「回復薬の管理で生存率が変わる」
「腐った保存食で全滅もある」
戦争設計国家では、
“維持管理”が高く評価される。
それは冒険者文化にも流れていた。
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## フレデリックパーティー
こうして。
### フレデリックパーティー
* フレデリック 中級魔法使い リーダー
* ロナルド 槍使い
* ドナシアン 剣士
* バルテルミ 錬金術初級
四人は正式登録された。
ギルド受付嬢は、
書類を確認しながら少し笑う。
「珍しいですね」
「全員、“安全重視”型です」
フレデリックは答えた。
「長く稼ぎたいので」
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## 初級ダンジョン
最初の依頼は地味だった。
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### 薬草採取
森の外縁部。
バルテルミが慎重に分類する。
「こっちは解熱薬」
「こっちは毒消し素材」
ロナルドは感心した。
「同じ草に見える」
バルテルミは青ざめた。
「それ間違えると死にます」
以後、
誰も勝手に摘まなくなった。
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### 大ネズミ退治
下水道。
群れ。
病原菌。
フレデリックは火球を乱射しなかった。
酸欠と煙が危険だからだ。
代わりに、
ロナルドが通路封鎖。
ドナシアンが前衛。
バルテルミが燻煙薬。
低損耗。
低消費。
安定処理。
ギルド職員は記録を見て呟く。
「初心者にしては事故率が低いな」
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### スライム退治
初心者殺し。
油断すると装備を溶かされる。
フレデリックは事前に資料を読んでいた。
「核を狙え」
「酸液を浴びるな」
「倒した後も棒で確認」
この国では、
初級魔物の情報も共有されている。
だから新人死亡率が、
周辺国よりかなり低い。
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## 夜
依頼帰り。
四人は安酒場で食事していた。
周囲では、
一攫千金を夢見る冒険者たちが騒いでいる。
だがフレデリックは、
静かに帳簿をつけていた。
収支。
薬剤消費。
装備摩耗。
保存食残量。
ロナルドが笑う。
「お前、商人みたいだな」
フレデリックは答えた。
「冒険って、“破産しない設計”も大事だから」
その言葉は、
この国の空気そのものだった。
壊れないこと。
続けられること。
それが、
大滝王国で静かに育っている、
新しい強さだった。




