第二章 ②王様はオシャレ
美容師さんが髪を整えられ、
いつもと少し変わった少年、
しかし、猫は言います。
「でも……」
「まだあるの?」
「そんな猫背の王様はいないにゃん!」
少年は、ピンと背筋を伸ばしました。
「王様は胸を張るものにゃん!」
「はい!」
「下ばかり見ちゃだめにゃん。王様は前を見るものにゃん!」
少年は顔を上げました。
いつも下を向いていた少年が、まっすぐ前を見るようになりました。
ところが、猫は今度は少年の服を見ました。
「そして……」
「まだ何かあるの?」
「そんなダボダボの服を着た、かっこよくない王様もいないにゃん!」
「ええっ!」
「王様はおしゃれにゃん!」
こうして二人は、服を買いに行くことになりました。
ところが、お店に入った少年は、
値札を見て困った顔をしました。
「……高いよ。」
「どうしたにゃん?」
「僕、そんなにお金を持ってないよ」
すると猫が胸を張りました。
「猫に任せるにゃん!」
少年は猫をじっと見ました。
「……本当に?」
「もちろんにゃん!」
「だって、猫は――」
猫は得意そうに言いました。
「お大尽にゃん!」
「お大尽?」
「つまり、お金持ちってことにゃん!」
「そうなの?」
少年は少し考えました。
そして、自分の財布を取り出しました。
「でも……全部、君に払ってもらうのは嫌だ」
「にゃん?」
「これは僕のための服だから」
少年は財布の中身を見せました。
「お年玉と、お小遣い。全部持ってきたんだ。足りないかもしれないけど……僕も払うよ」
猫は目を丸くしました。
そして――
「にゃああ……!」
涙をぽろぽろ流し始めました。
「優しいにゃん……!」
「えっ、泣くの?」
「感動したにゃん!」
猫は涙を拭きながら言いました。
「じゃあ、二人のお金で王様の服を選ぶにゃん!」
二人は、少しカジュアルな服のお店に入りました。
少年は、ほっとしました。
「いらっしゃいませ。本日はどのような服をお探しですか?」
猫が胸を張って答えます。
「王様の普段着にいい服をお願いするにゃん!」
「王様の普段着ですね。かしこまりました。」
店員さんはお茶目に笑います。
「それでは、こちらはいかがでしょう?」
店員さんが何着か服を持ってきました。
少年は試着室に入りました。
そして――
「どうかな?」
少年が出てくると、猫は目を輝かせました。
「いいにゃん!」
次の服。
「これもどう?」
「もっといいにゃん!」
また次の服。
「これは?」
「最高にゃん!」
少年は鏡の前に立ちました。
髪はきれいに整い、服も今まで着ていたものとは違います。
「どうかな?」
猫は目を輝かせました。
「いいにゃん!」
少年は鏡を見ながら、少し照れくさそうにしました。
「……これ、いいね」
店員さんが、他の服も見せてくれました。
「こちらもお似合いですよ」
「こっちも……かっこいい」
少年は、いくつかの服を見比べました。
でも、しばらくすると首を横に振りました。
「……やっぱり、一つだけにする」
「にゃん?」
「僕には、これくらいで十分だよ」
少年が一着を選ぼうとすると、猫が慌てて止めました。
「待つにゃん!」
「え?」
猫は少年の肩に手を置きました。
「王様は、おしゃれにゃん!」
「でも……」
「ダサい王様はいないにゃん!」
「そうなの?」
「そうにゃん!」
猫は真剣な顔で続けました。
「王様は、みんなの前に立つ人にゃん。いつも同じ服を着ていたら、王様らしくないにゃん!」
「でも、お金が……」
「大丈夫にゃん。
君もお金を出してくれるにゃん。
猫も出すにゃん」
「……本当に?」
「もちろんにゃん!」
少年はもう一度、服を見ました。
どれも今まで着たことのないような服ばかりです。
「僕が……こんな服を着てもいいのかな」
猫は笑いました。
「王様なんだから、いいに決まってるにゃん!」
少年は少しだけ胸を張りました。
そして――
「じゃあ……これにする」
一着を手に取りました。
「それだけにゃん?」
猫が首をかしげます。
少年は少し迷ってから、もう一着を手に取りました。
「……これも」
「にゃん!」
さらにもう一着。
「……これも、いいかな」
猫は満面の笑みを浮かべました。
「そうにゃん! それでこそ王様にゃん!」
少年も、つられて笑いました。
ほんの少し前まで、
「僕なんか」
と思っていた少年。
そんな少年が今、自分で服を選んでいます。
まだ自信満々ではありません。
けれど――
**「自分はこれを着てもいい」**
そう思えるようになったことは、大きな一歩でした。
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