9.Marika's Slow Life
「ふぅ、マリカちゃんごめんね?
言ったでしょ?
俺人気だって。」
「人気の範疇余裕で超えてますけど。
にしても、トーアさんってすごいですね……。
伯爵モードのトーアさん、いつもと違いすぎて驚きました。」
途中でいつものトーアさんに戻ったけどね。
「惚れ直した?」
「元から惚れてません。」
「辛口評価……」って聞こえたけど、多分気のせい。
にしても、なんだったんだあの人。
嵐みたいだったなあ。
「たまにいるんだよねー。
自分の立場をわきまえてない人。」
いやトーアさん怖すぎるってその発言。
「そういえば、詰所に連れてかれたんですよね?
あのご令嬢。
詰所って私みたいな家なし一文無しが行くとこではないんですか?」
「え?
マリカちゃんは家あるよ?」
え?
どこに?
もしかしてさ………。
「ここに。」
だと思ったわ。
何言ってんの。
「ですから、そのうち出て行きますよー。
仕事と家が見つかったら。」
「ねえ知ってる?
うさぎって寂しいと死ぬって迷信があるんだけどさ。」
あ、そのくだり知ってる。
なんか既視感。
「俺うさぎじゃないから寂しいと死ぬよ?」
「だったらすでにこの世にいなくないですか。」
だって私が現れたの昨日だもん。
それまで寂しくなかったのかよ。
「バレたー。
ダメだったかー。
家見つけてもいつでも来ていいからね。」
「さっきみたいになったら怖いので遠慮しときます。」
私も詰め所に連行されるんだよ。
嫌すぎる。
「ならないよー。
マリカちゃんだしー。」
いやなるかもしんないじゃん。
怖いよ?
「トーアさんは王様と仲良くなって、いつでも来ていいと言われたからいつでも行くんですか?」
「うん、多分行く。」
ダメだこの人。
そもそも私と価値基準が違ったわ。
「そうですか………。」
朝食も終わり、トーアさんは仕事中である。
そして茉莉花はとても怖かった。
「トーアさんが、お金を、私に、え????」
曰く、
『それで服とか必要なもの買って来なよ☆』
だと。
いや怖いんですけど。
これで?
こんな大金持って?
え、無理よ?
重くない?
いやカバンに入れるけどさあ。
「そういや、通学カバンの中身どうしようかなあ。
だってもう使わないし。
売れもしないしさー。」
とりあえず茉莉花は街を歩くことにした。
朝と変わらぬ風景である。
変化は人が増えて開いた店が多いこと。
「ひゃー、改めて見るとすごいなー。
服屋ってどこかなー。
私の趣味に合うような服あるかなー。
異世界だしさ?」
私は結構独り言が好きみたいだ。
にしても、本当に服屋ってどこだろう。
たしかトーアさんが教えてくれたよね。
店の名前だけは。
なんだっけ?
アヴィセント?
「どこだー。」
今、なんか音がした。
路地から?
気のせい?
誰もいない。
「なんの音………?」
どこかのお店の音だったのかも。
まあ、音がなることくらいあるか。
「全く、場所を教えて欲しかった。
トーアさん雑す………………!」
何!?
は!?
口塞がれたんだけど!?
どゆ状況!?
「騒いだら殺す。
許可は出ている。
わかったら黙ってろ。」
こっっわ。
慌てて頷いておく。
目隠しされた。
やめろやめろ!
最悪空手の出番あったのに、見えないんじゃ何もできない。
手も縛られた。
誰?
誰の差し金?
もしかしてヴィンソン子爵令嬢?
でも詰め所なんだよね。
は???
「んぅ!」
急に走るな!
それで悲鳴出してたら死んでたんですけど!?
どんだけたったかわからない。
多分途中で馬車にも乗った。
周到すぎるだろと思う。
明らかに計画的だ。
ヴィンソン子爵令嬢じゃかいのか?
いや、可能性は捨てきれない。
でも、ようやく最終地点に着いたらしい。
やっと視界が開けた。
暗い。
ついでに口もこの布から解放して欲しい。
「マリカと言ったかしら。」
どこだ?
ヴィンソン子爵令嬢の声だよね?
なんで?
詰所は?
「レイベン伯爵を誑かした女ね。」
いや誑かしてませんけど。
向こうから近づいて来たんですけど。
「わたくしに楯突くからこうなるのよ?」
別に楯突いてません。
恩ある人と食事してたところにアポ無しであなたが凸ってきたんでしょ。
勝手に被害者面しないでよ。
「どうしてあげようかしら。」
解放してくれると一番助かる。
くそー、スマホがあれば録音したんだけどなあ。
「…………。
私も暇じゃありませんの。
しばらくそこにいなさいな。
また来るわね。
それまでせいぜい反省なさい。
二度と伯爵様に媚びないようにね。」
別に媚びてないんだけどなー。
だから言ってるじゃん。
向こうが誘拐して来たんだって。
私別に何もしてないよ。
あっ!!
カバンに入れっぱのトーアさんのお金!
盗られてないかなあ大丈夫かなあ。
カバン置いてけぼりだったっけ?
持ってこられてたっけ?
わかんないな。
服どうしよー。
買えなかったや。
とりあえず寝よ。




