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転移の法則〜二十歳で始まりいつか終わる〜  作者: 水たまりに傘と青
檜田 茉莉花の桧暮らし(願望)〜家主によって邪魔される居候のスローライフ〜
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7/30

7.Marika's Slow Life

 茉莉花は大変に不安である。

 領主様の横をこんな変な服の女が歩いてていいのか。

 せめてフードとか必要なのでは?

 格好隠すものが必要なのでは?


「あー、今日あそこ定休日だったわ。

 美味しいとこだったんだよ?」


 横で平然とご飯屋さんの話題をしているこいつ。

 でもちゃんと定休日とか把握してるんだ。

 思ったより領主様じゃん。


「やっぱ朝だと空いてる店少ないなー。

 昼にまた来よ?」


「え?

 仕事は?

 さっき私が中断しちゃいましたし。

 溜まってるのでは?」


 サボる気か?

 仕事をサボる口実に私を使う気か?


「でもさー。

 服は?

 仕事は?

 善は急げだよ。」


 冒険者ギルドくらい開いてるだろ。

 私のイメージあれは24時間365日無休なんだが。

 あれはビニコンだよ。

 どんくらい便利かは知らないけど。


「私を口実にしないでもろて。

 私一人で行きますよー。」


「え、じゃあマリカちゃんに何かあったらどうすんの?」


 知るか。

 なんで何かある前提なんだ。

 確かに服装は奇抜だけどさ?

 よっぽど何もないって。


「トーアさんは私のお父さんですか。

 何かあるわけないでしょ。」


 全く過保護だ。

 赤のってほどでもないけど他人に対して。


「え、俺が5歳の時にマリカちゃん産まれたってこと?

 つまり俺四歳で……。」


「間違いではないですけど真に受けないでもらえます?」


 この人常に人目を気にしないな。

 初めて会った時もそうだったけど。


「どっちかっていうとさ。

 マリカちゃんはちょっと辛辣な妹じゃない?」


「当たり前ですよ?

 何勝手に娘にしようとしてるんです?

 というか家族ですらないですよ?」


 家族にするなと言うかも考えた。

 別に血縁じゃないし。


「うん知ってる。」


 なんだこの人。



 この街思ったよりも広くないか?

 めっちゃ歩くじゃん。

 疲れたわけじゃないけど、もう20分くらい歩いてない?


「大丈夫?

 ちょっと疲れたー?」


「疲れてないですけど、いつもこんなに歩いてるんですか?」


 しかもそれを朝夕2回。

 めっちゃ健康じゃん。


「そう。

 案外体力必要だからさ。

 貴族とは言ってもね?」


 今更ながらこの人全然貴族に見えない。

 話し方も然り、距離感も然り。

 途中何回か声をかけられたけど、誰に対しても距離が近い。


 「領主様じゃないですか!

  毎日毎日ご苦労様です。

  横の方は?」

 「ん、肉屋のユーラさん。

  おはよー。

  この子は俺のマリカちゃん。

  昨日拾った。」

 「何勝手に俺のにしてるんですか。

  やめてくださいよ。」

 「あらあらまあまあ。」

 「うちのトーアさんがすみませんねえ。」

 「マリカちゃんもうちのって言ってんじゃん。」

 「家うちのであってますよね?

  同じ家に住んでるんですし。」

 「そっか。

  そりゃそうだわ。」

 「あらまあ領主様がついに。」

 「あ、変なこと考えないでくださいよ!

  ただ家がなくて居候させてもらってるだけですから!」

 「まあいいのよ。」


 みたいな会話を何回かした。

 夕方には何か噂になっていそうで散歩について行きたくない。

 けど街を覚えなきゃ……。

 くっっ、この横のキツネが余計なことを言わなければ。


「あ、マリカちゃんおいで。」


「え?

 はい。」


 なんだ?

 どうかしたのかな。


「揚げ鳥カットで一個くださーい。」


 真横で食べながら自慢してくんのかと思った。

 わかんない。

 期待させておいて「全部俺の」とか平気でやってくるぞこの人は。


「あいよー。

 朝から毎日ご苦労様です。」


「いやいやー。

 まあいつも通りのことだし?」


 顔馴染み多くない?

 毎日2回の散歩効果か……。

 私別に領主とか貴族ですらないし参考にする要素ないな。


「こっちはマリカちゃん。

 将来有望。

 どう、雇う?」


 何勝手に人で商売してんだこの人。

 将来有望って、まだ半日と少ししか経ってませんけど?

 会ってから。

 何が有望なんですか。


「そうかー。

 仕事に困ってるんですか?

 でもあいにく人手は二人で十分なんで。

 すいません。」


 私にまで敬語……。

 ほらやっぱ領主様が連れてると只者じゃないと思われるよ!

 只者なのに!


「いえいえお気になさらず!

 なんか勝手にこの人が言ってるだけです。」


「えー?

 酷いなー。

 働くって言ってたのマリカちゃんじゃん。

 俺手伝ってるだけなのにさ。」


 善意を盾にするな。

 もう18歳でそれなりに大人なんだから自分のことくらい自分でできる。


「平気です。

 自分のことは自分でできますよ。」


 この世界の常識はともかくさ。

 日本でしか無理かもしれないけど。


「そーお?

 じゃあ揚げ鳥も自分で買って。」


「御免なさいまだまだ未熟なので分けてください。」


 うわ、ニヤッとした。

 くそ、食欲………。

 でもまだ朝ごはん食べてなくてお腹すいてる。

 そんな時に食べ物を囮にする方が悪い。


「はいよー。

 串二本目はサービスです。」


「俺が二本とも使おうかなー。」


 はっ!?

 カットでしかも串が二本。

 その上この会話の流れで両方トーアさんが使うの!?


「そ、それはずるいです!

 今のはくれる流れ………はふっ!」


 喋ってる時に口に入れるな。

 しかも熱いし。

 私ちょっと猫舌なんだけど?


「二本使って俺が食べるとは言ってない。」


 餌付けですか。

 なんか癪だ。

 手駒に取られてる気がして。


「なんかさ、マリカちゃんってリスみたいだね。」


 リス?

 私が?

 リスってあのリスだよね?

 どこがリスなの?


「いつもはツンツンして警戒してるのにさ。

 ふとした時に警戒してなさすぎてチョロい。」


 褒められてる気がしない。

 そこはリスみたいに可愛いと言え。

 いや、私の顔はリスに似てない。


「私がリスってことは、私トーアさんに食べられちゃう。

 だってキツネってリスも食べるし………。」


 とりあえず1mくらい離れておいた。


「え?

 距離取らないでよ。

 ってか、マリカちゃん俺のことキツネだと思ってたの?」


 あっ。

 ついつい口に出しちゃった。


「がおー。

 リスを食べちゃうぞー。」


「ひあっ!?

 ちょっと待ってなんの遊びですか!?」


 ちょっと屈んで後ろに回り込んでおく。

 がおーって手をしながら近づいてくるものだから、驚いた。


「えー、避けないでよ。」


「避けますよ!

 あと揚げ鳥落としますよ?」


 あとでもう一個もらおう。


「え、じゃあやめとこ。

 マリカちゃんほんとに機敏。

 何かやってたの?」


「ちょっと父から手ほどきを。」


 実家の近くの道場で父は師範代をしていた。

 だからこそ私も空手を習っていたわけだけど。


「へーえ。

 はい揚げ鳥いる?」


「いりますいります。

 あと自分で食べれます。」


 いちいち餌付けみたいにしなくていい。

 恥ずかしすぎる。


「え?

 二本とも俺が使うって言ったじゃん。」


「へ?

 はれほんひらっはんへふは?」


 まさか最初から餌付けスタイルで行くつもりだった?


「ごめんなんて言った?」


 そりゃ聞こえないか。

 結構騒いでたからかいい具合に冷めてるので急いで咀嚼する。


「あれ本気だったんですか?」


「当たり前じゃん。」


 当たり前じゃないけど?

 何言ってるの?


「俺の金で買ったものを俺がどう使おうと俺の勝手じゃん?」


 当たり前だったわ。

 そりゃそうだ。

 私は恵んでもらう側の人でした。


「さ、散歩はおしまいだよ。

 もう一周しちゃった。」


「数十分経ってますけどね。」


 1時間経っているかもしれない。

 お腹すいてたところに揚げ鳥で少しだけ刺激されたせいでお腹鳴りそう。

 それくらい空腹だ。

 でも揚げ鳥美味しかった。

 そして冒険者ギルドなんてなかった。


「もうそんなに経ったんだ。

 やっぱ話す人がいると時間経つの早いなあ。」


 この人さ、何回か遠回しに家出てくなっていってない?

 「俺喋り相手いなくなる」だとか。

 すごくストレートに言ってくることもあるけど。



「ただいまー。」


「おかえりなさいませ。

 お食事の用意ができております。」


 シゴデキだこの人たち……。

 どのくらいに帰ってくるか察知してるんでしょ?

 プロだわ……。


「じゃ、ご飯にしよっか。」

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