6.Marika's Slow Life
コンコンココンコン(イメージア○雪)
「ゆきだるまつくーろー。
ドアを開けてー。」
執事さんが開けてくれた。
すごい気まずい。
すごい恥ずかしい。
やっぱ日本じゃなきゃ伝わらないか。
海外はやっぱ日本語使わないしさ。
パラオのアンガウル州以外は。
こういう時はなんていうんだっけ。
確か日本語由来の表現はなかったはず。
クソ恥ずい!!!
「どしたのマリカちゃん。
ふはっ。
さっきのあれ何?
ふふっ、あは。
やばい。
あははははは!」
だと思った!!
この人すぐ笑う。
今のは自分が悪いけど。
「笑ってくれて構いません!
真面目なやつじゃないんで!」
「てか、雪にはまだ少し早いよ。
あとちょっと待って?
それと、わざわざ邪魔しにきたわけじゃないでしょ?
どうかした?」
地球とおんなじなのかな。
季節。
でも昔の地球は今の時期も雪だったんじゃない?
常識に関する質問はやめておこう。
暮らしてたらわかるよ。
「一つ質問があります。」
机バン!
(セルフ演出)
「昨夜、女物の服がなくて私はトーアさんの服で妥協したんですよね?
部屋にあった明らかに女物の服の数々はなんですか?」
「ああそれ?
なんかあった。」
なんかってなんだなんかって。
そのなんかを聞いてるんですよこっちは。
夜に運んだやつでもないらしいしさ。
私が昨日キツネの服で我慢した必要は?
まじでクソ恥ずかったんですけど?
「あと俺、ぜーんぶなかったとは言ってないよ?」
「は?」
屁理屈捏ね始めた。
うわ。
私が言いがかりみたいに聞こえるんだが。
「“思ったより”なかったんだよね。
ありはしたんだけど、趣味じゃなさそうだなーって。
あの服たち見たんでしょ?
その上で昨日の服着てるしさ。
間違ってないでしょ?
あとあれいつからあって誰のかわかんないし。
虫とかいるかもよ?」
この人地味に人観察してるのがまたムカつく。
キツネのくせに気遣いできないわけじゃないのムカつく。
あとしれっと怖いこと言わないで!
「〜〜〜!
はあ。
まだ、新品の方がマシでした。」
「そうでしょ?
俺とマリカちゃんの身長が結構離れてるおかげだねー。」
遠回しにチビって言ってる?
これでも割と大きい方ですけど?
頑張って身長伸ばしたんですけど?
160はありますけど?
180くらいありそうなそっちが大きいんでしょ!
「別に私小さくないですから。
……って、私これからもあれ着るんです!?
結構膝上くらいまでしかなくて恥ずいですけど。
このスカートでさえ膝下くらいまでありますよ?」
「えー。
どーしよーかなー。
でもマリカちゃんお金ないじゃん?
服買えないじゃん?
でも家にあるやつ嫌なんでしょ?
着れるものがなー。
あれしかないんだよなー。
まーいーじゃんあれも可愛いし。」
ふざけんな。
不意打ちとか卑怯。
自分の顔がそれなりにいい自覚あるくせに。
こいつ………。
稼ぐか?
稼げばいいのか?
異世界なら冒険者とかあるだろ。
ステータスがあるくらいだしさ?
冒険者になる?
………そのためのお金もなくない?
服セーラーだし。
「借金しとく?
俺から。」
「利子とか高そうで嫌です。」
でも借金しないと何も買えないのも事実。
そして居候の今、食費とか色々出してくれてるのも事実。
「どーすんの?」
「働きます。
でも、仕事が……。」
「うちで働くー?」と言ってくる可能性中。
外に仕事を紹介してくれる可能性小。
提案ではなく決定事項として「うちで働く?」と言ってくる可能性大。
「じゃあさ。
うちではたら………。」
「絶対嫌です。」
ほら。
ほら。
さすがキツネだよ。
予想しやすい。
「え?
うちで働いてくれんの?」
は???
「俺今“うちで働く以外の選択肢探そっか”って言おうとしてたんだけど。」
「は????
?????
え????
あっ、それでお願いします。」
はやとちったー!!!
やばいやばい。
「二言はなしだよ?」
とか言われたら詰む。
詰む詰む!
「え?
マリカちゃーん?
自分で墓穴掘ったー?
今ー?
ふふ、はははははは。
やばい、チョロすぎる。
あはははははは。
単純すぎて笑えるんだけど。」
こいつ…………。
ルール違反にはなるけど右ストレートを顔面に叩き込むか?
「ゼッッッタイここで働きたくないです。」
「酷ーい。
なんで?」
あんたのせいやろがい。
あなたがいるからですよ。
絶対毎日いじられる。
どんな無茶振りが飛んでくるかわかったもんじゃない。
そんでもって、独り立ちできないじゃんそしたら。
「私はそのうちここを出ていくんです。
仕事を見つけて家を見つけるまでって、言いましたよね?
いつか楽に自給自足するのが夢なんで。」
「…………。
じゃあ邪魔すればここに住んでくれるってこと?」
は?
何言ってんの?
いや邪魔すんなよ。
「え、そしたら出てきます。
行くあてないけどなんとか頑張りますよ。」
「だよねー。
でもだってマリカちゃんいなくなったら俺話し相手いなくなるじゃん?」
使用人さんと話してたら?
好かれてるみたいだし。
「人はたくさんいるでしょ。」
「伯爵って地位で態度変えないのマリカちゃんくらいだよ?
俺もっと気楽に話したいの。
でも使用人たちは身分があるしさ?」
そんなこと言ったら私家なし一文無しの一般平民以下ですけど。
私の方がトーアさんと気軽に話してちゃダメでしょ。
てか使用人さんたちに何も言われないのも怖いよ?
「私も平民ですけど?
しかも働いてないのでよっぽど使用人さんたちの方が身分上では?」
「身分に働いてるも何も関係なくない?
まあたしかに働いてる人の方が偉いけどさ。
ま、結局俺も貴族だからね。
自分に都合のいいように色々動かすでしょ。」
納得。
物騒なことも言ってたけど納得。
納得はしたんだけど、そろそろ仕事再開しなくていいのかな。
コンコンコンとノックの音。
やっぱふざけるのは私だけか。
「どーぞー。」
「失礼します。
朝のお散歩の時間になりました。」
もうそんなに経ったんだ。
てか、視察じゃなくほんとに散歩なの?
そこは視察じゃない?
ほら、領主的にはさ。
散歩ってより視察の方が聞こえいいじゃん。
「じゃ行こっか。
マリカちゃんほんとにその服でいいのね?」
「他に着るものないですけど?」
だってあの服誰のかわかんないんでしょ?
いや処分しろよ。
「昔の俺の服着る?」
「断固拒否します。」
絶対嫌だ。
新品じゃないし。
男の人の服でも新品ならまあ…。
って感じなのに中古はちょっと。
贅沢言ってる自覚はわかるけど、日本人の感覚としてはさ?
新品を買い与えられてきた身としてはさ?
「だよねー。
だいたい知ってた。」
じゃあなんで聞いてきたんだ。




