Aoi's After Story ⒉
「「お、おー!!!」」
異世界の祭りすごいな。
まだ街に入ってないのに楽しくなってくる。
熱気があるというか。
香ばしい肉の匂い、響き渡る音楽、活気ある呼び声、そして、謎の旗!
なんだあの旗!
異世界らしいからヨシ!
「す、すごい……。
祭りってこんなにすごかったの!」
スペアも何気初めてだったらしい。
街と村も、すごく近いわけじゃなかったし仕方ないのか。
「さあ着いてきて、ブロン、ヴァイス!」
「止まれ。」
おっと衛兵。
大きい街だと、やっぱり警備も厳重だ。
「身分証の提示をお願いします。」
身分証………?
「えっと、身分証?」
あ、私は異世界人なのでそんなんないですとも言えず。
スペアは何やら鞄ゴソゴソしているし、みんな持っているのだろうか。
「か、カードを忘れてしまったの!
こっちでも、いいですか?」
そう言って右の手の甲を差し出す。
どういうこっちゃ、なんか罰があるのか?
と思ったら、何かの文字が浮き上がる。
「良いでしょう。
お連れの方は冒険者ですか?
身分証がなければ冒険者証でも構いません。」
「あのー、両方ない場合は……。」
身分証はないし、私って住民登録というか、名簿に載ってなさそうだし、物売れなさそう。
と今更思ったけど、最悪それはスペアに売ってもらうことにしよう。
というか、ギルドないんだよね?
冒険者証って何?
「マナ印でも構いません。」
さっきスペアが見せてたやつだろうか。
私にもあるのだろうか。
というかどうやって出すのだろう。
「えっと、こう……ですか?
ん?
えーっと……。
うわっ!」
ただ差し出すだけではスペアみたいにならなかったので軽く力を入れてみたらひかった。
急に光ると驚くからやめて欲しい。
てか、どういう原理で光っているのか気になる。
マナ印って言ってたし、マナの光なのかな?
なんの文字なんだろうか、これは。
「あれ?
えっと、あの……。」
ん?
不穏。
やめて欲しい、「これ違くない?」って言われたら私……。
ほんとに怖い。
「お名前は……。」
「あ、葵です。」
名前とかの情報は入ってないのかな、これ。
身分証代わりになるのに?
「アオイさんってどこかの貴族様でしたか?
失礼ですが、苗字もお伺いしても?」
え?
貴族?
私が?
ないないない。
日本の一般民でしたよ。
「アオイ・ウスベニです。
相当珍しいと思いますよ、もう私だけかも。」
最初から私だけだと思うけど。
「貴族じゃない……のか……。」
何に悩んでいるんだろう。
貴族?
スペアのとは違うのかな?
「ご両親は……。」
「他界してます。」
元から他界にいます。
「し、失礼しました。」
こっちも失礼かもしれないけど、早く終わらないかな。
お祭りに来たのに、中には入れないんじゃ困る。
「ごめんねスペア。
私のせいで。」
「気にしなくていいの。
アオイが困る方が大変なの。」
優しいお姉ちゃんだなあ。
胸がジーンとする。
「………。
ああ、なるほど。
よくわからないけど、あの、僕……私も一緒に街へ入ります。」
「え?」
どうして?
監視役!?
「まっすぐ連盟へ向かいましょう。
支部長にお話があります。」
なんかすごいことになったっぽいかも………。
カタン、カタンと木札がドアの上で鳴る。
なるほど、ベルの代わりか。
「タンドラさんはいらっしゃいますか。」
「えっと……あ!
ラウロさんじゃありませんか!
支部長は多分祭りを見回っているのだと思います。
先ほどそう言い残して出て行かれましたから。」
衛兵さんなのに知り合いなの?
あれ、でも見張りを変わる時も衛兵らしくなかったな、引き継ぎ。
ど偏見だけど。
「そうですかあ……。
またサボってるんだろうなあ。
祭り見てるんだろうなあ。
見張り番変わって欲しいですよそんなことするなら。」
「ふふふ、支部長はあれでもお忙しい方ですから、暇そうな時に誘ってみてください。
あれ、でも、今日も見張り番ですよね?
どうしてこちらに?」
すごく庶民的な支部長なのかもしれない。
祭り見たさにサボるのか。
いいな、楽しそうだ。
というか、冒険者連盟だっけ?
なんでそんなに気安く話してるんだろう。
「本当なら僕もお忙しですよ。
祭りで依頼がぱったり無くならなければ。
いつもは今頃いろんな依頼を受けてたのになあ……。」
「祭りの最中にある唯一の依頼ですよ?
見張り番は。
それなら変わらないじゃないですか。」
依頼?
いつも見張りじゃないってこと?
この衛兵さん、もしかして冒険者?
「まあ、じゃあタンドラさんが帰ってきたら宜しく伝えておいてください。
絶対に連盟の外へ出ないようにって。
僕また戻ってきますんで。」
「かしこまりました。
お気を付けていってらっしゃいませ。」
いや中で待ってればいいのに。
この間に祭り回りたいよ。
「あれ、それで、なんで見張りしてないんだろう?
あの女の子たち誰?」
カタン、カタンとまた木札の音。
「門まで動物を迎えに行きましょう。
引き摺ってたの、売るんですよね?
私が同伴すれば特に不審に思われることはないと思います。」
「じゃ、じゃあお願いします。」




