Aoi's After Story ⒈
「お、おじゃまします……。」
「そんなに縮こまらなくていいの。
友達、でしょ。」
六年目を山頂で寝過ごした私は、翌朝に叩き起こされて家に帰った。
疲れからか、その後も昼まで眠り、一時動物を騒がせたらしい。
怒られたけど、そんなの知ったことじゃない。
勝手に人の家の中に入り込む動物たちの自業自得である。
それから、一ヶ月ほど。
スペアを訪ねて何度か村を訪れ、村の人たちとも顔見知りに。
村人全員に魔女だと思われていて、はじめは苦労した。
今ではおすそ分けをもらうこともある。
スペアとは友人になり、私がこうして訪ねることもある。
逆に、スペアが私を訪ねてくることもある。
会うときは大抵、私の作るパイとスペアのお茶が決まりものだ。
パイを作るための卵はといえば、おすそ分けに含まれている。
ずっとこれに困っていたのですごく助かっている。
ミルクはもちろん牛なんて貴重なのでヤギだ。
もちろんブロンではない。
むしろブロンは嫌だ。
人型になれることを知っていて、あんなに会話をしたのだ。
それに、オスだから絞れるものも何もないのだけど。
「村に顔を出すようになって一ヶ月経ったかな。
この村も悪くないでしょ?」
「うん、みんないい人だし。
家畜とかには困ってたから助かるなあ。
数には限りがあるけど、こっちからもお肉は提供してるし、Win-Winだね。」
森中の動物を狩り尽くすわけにもいかないので、だいたいこれくらい、と決めている。
その決まった数を数カ月に一度、あるいは数週間に一度村に届ける。
村に届いた食料は公平にわけられ、みんなの食卓に行くそうだ。
犠牲になる動物には申し訳ないようにも思うけど、この世は弱肉強食。
私たちが生きるために必要なのだから仕方ない。
「こっちもお肉助かってるの。
お肉をとるのが狩人だけだと均等に配られないから。」
やっぱり危険を冒して狩りをする人たちに配分が偏るらしい。
かといって村の全員が森に入れるわけじゃないから大変だそう。
そこに現れた私はタンパク源の女神と言ったところか。
嫌だな、そんな呼び方。
「あんまりたくさんは卸せないけどね。
森の生態系もあるし、狼たちのご飯にもなるから。」
「それでも前よりはマシなの。
そういえば、アオイは街には行ったことある?」
街?
山頂から見えたやつのことだろうか。
存在は知っているけど興味はあまりなかった。
「ないよ。
あるのは知ってるけど。
えーっと、北西かな?」
「そう。
行ったことないなら今度行きましょう。
お祭りがあるの。」
お祭りか……。
食べ歩きか……。
「ねえ、スペア。
私お金ないよ、ほとんど。」
小屋にあったお金を使うわけにもいかないので、私は無一文だ。
何も買えない。
「あー……。
お肉は他の資源との物々交換だから………。
あ、じゃあこうするのは?
お祭りまではあと二ヶ月あるから、動物の毛皮とかでも集めてなめして売るの!」
「おー!
名案!
商売!」
何かを売って稼ぐっていう発想がなかった……。
お金は働けば貰えるみたいな日本の常識がまだ生きているんだろう。
でも私は働いていない。
つまりお金は貰えない!
と頭が固くなっていたみたいだ。
「でも大した皮はとれないよ。
精々イノシシとかうさぎとか。」
「イノシシで十分なの。
でも、何かに加工したほうがいいのかな…?」
たしかに。
そのままあっても何に使うんだって感じか。
冒険者ギルドとかないのかなあ。
「いっそ解体屋にまるまる一匹売る手もあるの。
でも連れていけないし……。」
「荷物持ちに関しては気にしないで。
街までの道も、動物に乗って行こう。
丁度この前二匹目が仲間になったんだよ、大きいの。」
それぞれに一匹ずつ狼持って貰えばいいか。
利益二倍だ。
あ、ダメだ!
イノシシイノシシ。
私ガイーやブロンに同族を殺して食べろなんて言いたくない!
「え、どういうことなの………??」
二ヶ月後。
お祭りの日である。
「どうかな、村の人に見える?」
私の普段着る服は小屋においてあったものなので、村人のものとは少し違う。
もう少し高級感があって、小綺麗な印象だ。
だから、不審に思われるかもしれないと言うことで村娘のお下がりをもらった。
「うん!
それじゃあ、こ、怖いけど、街までは狼さんと山羊さんにお願いするの!」
少し不服そうな顔をしてるけどヴァイス押し黙る。
問題はお前だブロン。
『我は……』
「そうだね!
よろしく!
‘狼’と‘山羊’!」
案の定苦言を呈そうとするので被せて牽制。
視線だけで黙れ喋るなの念を送る。
目を逸らしたので伝わったとしよう。
「じゃいくぞー!」
「お、おー!」




