Aoi's Night Wolking ⒌
「やってみてよー!
人型見てみたーい!
日付変わるまで時間ありそうだし!」
手元に時計がないから体内時計に任せる。
と言うか計算しちゃえ。
まず、家を出たのは日が沈んだ直後。
だから大体十七時半と仮定する。
そこから動物たちを待ちながら歩いて多分十分?
でブロンがきたから移動が早くなって二十分くらいで方向転換?
じゃあ出発から一時間くらいでスペアと話してたんだな。
ここまでが十八時半と仮定する。
そのあとまっすぐ山に向かって行ったよね。
多分二十分くらいかな。
そこから降りて歩き始めた。
そこまで累計で一時間半だから十九時。
自力で山に登ってたのはたぶん一時間前後。
じゃあ今二十時半くらいかな。
まだまだあるなあ。
あと三時間半。
いっそ仮眠でも………。
いや、お正月は寝なかった!
耐えろ葵!
「やってみろと言ったクセに考え込みおって。
幾度呼んだと思っておる?」
「あれ?
声がクリアになった。
どっちだ?
ブロン?」
どっちも白い。
あ、でも耳とかツノ生えてるんだ。
わかりやす。
しかも山羊はちゃんと瞳孔横長。
なんか視界が横に長いんだっけ。
私だったら酔いそう。
ってか、ちょっと待て。
「ブロンがウルフカットイケメンなのはわかる。
そっちはわかるよ!?
なんでヴァイスはショタなの!?
かわいい!
でも表情死んでる!
笑え!」
私別にショタコンではないけどさ。
けどさ?
それでもだよ?
庇護欲が湧く可愛さ。
口調だけはジジイくさいのに。
「簡単に笑えと言われても困る。
我も人化は久方ぶり故にな。
表情は、どう変えるんじゃったか。
こうか?」
「こわっ。
幼稚園園児泣きますよ。」
まず頬が引き攣っている。
そしてしかめ面である。
笑えてるとはとても言えない。
「なんじゃと。
手本を見せてみぃホンモノの人間が。」
「え、手本?」
私作り笑い苦手なんだけど。
写真とか見るとさ、笑ってたはずなのにほぼ真顔なの。
私の笑いってなんだ。
「私作り笑いできないので……。
ブロン、ちょっとヴァイス押さえてくれる?」
「何するつもりじゃ貴様。」
何って、こちょこちょするんだよ。
効くかわかんないけど。
作り笑いができない時は笑わせてやれば良い。
笑えるのかなあ。
「じゃちょっとちくっとはしないけどびっくりはするかも。」
なんだなんだって怯えてんのか警戒してんのか。
すごいキョロキョロするじゃん。
「?????」
「ちょ、ふはっ。
待って。
ふふはははは。
ブロンそれどう言う押さえ方なの?」
なんか、もう。
やばい笑いが……。
身長差があるから屈むまではわかるんだけどさ。
抱きついてるようにしか見えないんだが。
膝立ちになって両腕で拘束。
しかも真顔で。
「笑ったな。
結局何をしようとしておった?」
「笑ったのはお前のせいだろ。
こちょこちょしようと思ったのにさ。」
ヴァイスの方も違和感なく普通に話してたのなんなんだよ。
もうこれが見本ってことで良いか。
あーー。
「いいややっぱそのままで。
無理に笑わせるもんじゃないよ。
もちろんたまには笑わないといけないよ。
でも無理やり笑うほどじゃない。」
「なんじゃこいつ。
急に悟りを開きおった。」
なんじゃこいつとは失礼な。
別に悟ってないわ。
「わふわふ!
あおーーーん!」
あ、ガイーが来た!
遠吠えしてる。
村の人たちが驚かないかなあ。
「お疲れ様、ガイー!
全部来たわけじゃないのね。
登れなくなるから詰めておいで。」
山頂とは言っても絵みたいにとんがってるわけじゃない。
それなりにスペースがある。
多分ガイーが全部来ても平気だ。
デカブツ二匹も人型になったし。
「…………のうハイウルフ。」
「ブロンって名付けられた。」
なんか話し始めた。
私ガイーの方行っちゃお。
「何故アオイの周りはマナが濃い?」
すごく私の話だった。
ちょっと聞き耳立てちゃう。
「知らん。
歩き始めたらさらに濃くなる。」
やばいスキルがバレるくないか。
このスキルやばいのかなあ?
マナを生成するのってやばいかなあ?
「そうか。」
会話終わったー。
気まず。
なんて顔して近づけば良いんだ。
もうもふもふに現実逃避しよ。
「あ!!!
やばい!!!
お腹すいた!」
まだご飯食べてないことに気がついた。
夜散歩で終えるつもりが………。
そうだ日を跨ぐまで帰らないんだった。
今からじゃ往復間に合わない。
どうしよう。
「その鞄はなんのためにある?」
「湖の水とか入れるため。
そんなに大きくないでしょ?」
腰につけてたベルトポーチのことだろう。
ほんとに小瓶くらいしか入ってない。
そう言えば水分補給してないな。
飲まなきゃ。
「ほらこれ。
飲料水兼簡易照明。」
小瓶を一本開けて中身を口に放り込む。
デカブツ二匹がギョエって顔でこっち見てた。
「どしたの。」
「なんだそれは。
は????
マナの水?
聖水?
少なくともただの水ではないな?」
元はただの水だけどね。
今はただの水じゃないのは見ればわかる。
光ってるし。
ちょびっとだけ。
「まあね。
湖の水だよ。
あの湖の。」
家のある方角を指差す。
あの湖はここから見てもほのかに光っててわかりやすい。
あの周りは木があんまり生えてなくて広場みたいになってるし、特に。
「ああ、我の幻覚などではなかったのか。
まあ、なんでも構わん。
害はないだろう。」
「ハイウルフ…………。
ブロンも随分おとなしくなりおった。
よう手懐けたな、アオイ。」
ナニイッテンダヨ。
モトカラソンナダッタダロ。
まあブロンの昔とか知らないけど。
「動物って、マナの集まる人に懐くみたいなんですよ。
経験談です。」
「違わんな。
アオイがただの人間なら我も助けておらんかったかも………。
いや、なんでもない。」
ヴァイスってさ。
喋り方中途半端だな。
「〜じゃ」とか「〜のう」とかは言うのにさ。
「わし」じゃないし、完全なジジイ口調じゃないんだもん。
言動の予測むずかしすぎるでしょ。
もう普通に喋ってくんないかな。
「あー、なんか腹膨れたかも。
湖の水の効果ってことで。
多分ただのプラシーボ効果。」
「飲めば腹が膨れる?」
なんか釣れたやつが一匹。
いつもお腹いっぱい食べれてなさそう。
ブロンほど大きければ食べる量も多いんだもんね。
「湖を干上がらせないでね。」
「流石に今から行くつもりはない。」
あったら怖いよ。
何してんのって感じだよ?
「え?
今から?
いつでもやめてよ?」
「ああ。
まあ。」
なんだよその微妙な反応は………。
飲む気か?
飲んでもいいけども。
がぶ飲みすんなよ?
私の生命線なんだから。
「それはともかく、夜明けまで何をするんじゃ?
日を越したら早々に帰宅するわけではあるまい?」
「寝る?
こんなあたたかもふもふがたくさんいたら余裕で寝れる。
諸君らは私のベッドである。」
まずブロンとヴァイスが獣になって寝転ぶでしょ?
その間に私が入るでしょ?
その周りをガイーたちが寝転ぶでしょ?
その辺でアイズは寝る。
私の敷布団はブロンとヴァイス。
掛け布団はそれぞれの毛。
うーん、綺麗なのかなあ。
「お前ら毎日水浴びして綺麗に洗って日光浴してる?」
「……………。」
黙るなよみんな!
もしやとは思ったけど!
確かにお前ら動物だから文化の違いはあるけど!
「すまんちょっと湖まで走ってくる。」
「いや別にいいよ!」
寝方はもういいよ。
仕方ないんだから。
汚い上でも寝ればいい。
「我は大抵やっておるぞ。」
なんで??
山羊にそんな習性あったっけ。
ないよね?
「よしヴァイス、君を私の布団にしよう。」
「ぬ!
我は!?」
いや、「我は!?」じゃない。
汚い。
この服汚れないとはいえ他人のものだし。
「ブロンは、まあ、ね。」
「…………。
なら我も其奴の上で寝るとしよう。」
え、重そう。
あ、人型でかな?
だとしても、デカイし。
「ダメじゃ。」
おっと。
寝床からの拒否。
「なんだと!
何故アオイは良くて我がダメなのだ!」
「水浴びしておらんのじゃろう?
不潔。」
大変にごもっとも。
たとえ人型だとしても水浴びをしていない事実は変わらない。
文句の言い合いをしている二人は好きにさせておく。
もともと私のペットですらないし。
時間を把握するすべはないし、山の上で日を越したって叫ぶのは朝にしよう。
だから、いまは寝る前の散歩。
結局、今日はほぼ動物の上だったし。
「アイズ、三羽だけついてきて。
ガイー、五匹同行願えるかな?」
「わふっ!」
やっぱ動物って可愛いな。
癒される。




