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転移の法則〜二十歳で始まりいつか終わる〜  作者: 水たまりに傘と青
薄紅 葵の夜散歩〜異世界6年目を山の上で迎えたいマナ垂れ流しの魔女の一晩〜
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Aoi's Night Wolking ⒋

 ようやく山の麓に辿り着いた。

 道中異変は何もなく。

 誰も喋らなかったし鳴かなかった。

 ただまたおばけみたいな人が来るのではと怯えたけど。


「さて着いた。

 ブロン疲れたでしょ。

 予定外にたくさん走ったからね。

 ゆっくり行こっか。」


 この山は決して険しくはない。

 なだらかに始まって、だんだん急になりはするけど。

 でも案外と辛くない。

 途中で何回か森を振り返った。

 初めのうちは岩山ばかりだ。

 山というより、なだらかな丘陵。

 途中からゴタゴタした岩が増えて山になるけど。


「ねえ、見て。

 あそこ。

 私の家だ。

 湖、やっぱり光ってるんだ。

 綺麗だね。」


 ある程度登ったところで、森が見渡せた。

 私の家は、森のど真ん中だった。

 周辺には二個村があったらしい。

 一個だと思ってた。

 森を抜けた先は、平原。


「初めて見た。

 森の外………。

 危ないのかな。

 いつか行ってみたい。」


『こんな数の動物は連れて行けんぞ。』


 そんなことは私でもわかる。

 まあ足りない常識もあるから連れてくならブロンかな。


「あっ、大きな街だ。

 僅かに光ってる。

 ほんの少し見えた。

 でも遠いな。

 ほら、行こ。

 もっと上に行くよ。」






 足場がゴツゴツしてきた。

 油断すると落ちそうだ。

 岩な分落ちた時も軽い怪我では済まない。

 今更だけど怖いな……。

 横の森の山にすればよかった?

 でも森だと何が出るかわからないし。

 かといって登るの大変だからってブロンに乗るわけにもいかないし。


「落ちそう。

 狼さんたちはよくそんなにひょいひょい行けるね。

 アイズは飛んでるしさ。

 適応スキルさん岩山に適応してくださいよ。」


 岩山に適応ってなんだろう。

 私がその辺分かってないとなのかな?

 例えばじゃあ、山羊(やぎ)見たいな。

 山羊って岩山って感じだし?


「私よ山羊みたいに〜なれー。

 岩をぴょんぴょん!」


 お?

 心なしか体が軽くなったぞ?

 やっぱりその環境における適応がどんななのか。

 私が分かってないといけないんだな。

 今まで森を出なかったからこんなことも知らなかった。

 詳細説明とかないのかな、スキルって。


『遅い。』


「すーぐ追いつくよー。

 ちょっと待ってねー。」


 これならだいぶ楽だ。

 基礎身体能力が上がるわけじゃない。

 でも、どこにどういけばいいのか、よくわかる。

 これならみんなのところまであっという………間…………。


「ピーー!!!」


「わおん!!わおん!!」


 足を踏み外した……!

 結構急になってきたから、本当に落ちてる。

 転がってない。

 落ちてる。

 このままじゃ、死ぬ!


『仕方のない人間だ。』


「な、なにあれ!」


 それどころじゃないのは分かってる。

 自分の命がかかってるのは。

 でも、なんか飛んでる!?

 いや、跳んでる?

 空中を。


『アルーシブゴート。

 久方振りだな。』


『何を呑気な。

 親しき人間が落ちていると言うのに。』


 ブロンの知り合い!?

 こっち来る!

 あれ?

 通り過ぎた?


「相変わらずピンチで…わはぅぁえ!!?」


 後ろから突進された?

 さっきの山羊?

 舌噛むがな!


『どこまで行くのだ?

 今運んでやろう。』


 初対面の山羊さん親切。

 ちなみになんでお前喋れんの?

 アルーシブゴートって何?

 ブロンのハイウルフみたいな感じ?


「さ、山頂まで。

 座ってもいいですか。」


『構わん。

 捕まっておれ。』


 ガイー置いてかれないかな。

 ブロンはまずついてくるだろうけど。


「アイズ、私たちとガイーの間で列になって!

 ガイーが迷いそうになったら案内をする!

 頼んだ!」


 うおっ!

 跳ねた!

 跳んだ!

 空を跳んでる!

 月があんなに近くに………。


「もっと、上まで………。

 曇りのない、透き通った空へ………。」


 空の向こうには何があるのかな。

 宇宙には……。

 果てなき自由が待ってる?

 空に届いたら、すごい人だよね。


“ 空に届いたから、何?

 届いたら、幻滅するよ。”


 理性が諭す。

 別に諭されなくても。


“ 届かないものがある方が、幸せだよ。

 超えた先には、何もないから。”


 誰がそんなこと言うの?

 私?

 経験則ですか?


“ 超えた先は、虚無だよ。

 超えても何も、ないでしょ。”


 わからないぞ。

 何があるのかは、超えてみなきゃ。

 そもそも何で邪魔するの。

 なんなのこの声は。


「ああ、届かない。

 あと少し、あと少し………。」


 そしたらもうみんな、私のことを………。

 ……………見直してくれるよね。

 そしたらきっとみんな、私からは………。

 ……………離れてくれるよね。

 興味をなくしてくれるよね。

 もう、私を叩かないよね……………。

 きっと、友達になって、仲良くって道も、あったのに………。


『着いたぞ、人間。

 名前は。』


「……………。

 ……薄紅 葵。

 多分19歳。

 ううん、絶対19歳。

 この前までは、14だったのに………。」


 地球の記憶は、私が14で途絶えた。

 地球を想うときの私は、14歳。

 あの時から、時間は進んでない。

 進められない。

 別の時計が回り始めたから……。


『混乱か?

 駆け上がったせいでハイになってるかもしれんな。』


 えー。

 ブロン登ってくんのはやくね?


『何故(なにゆえ)にアオイは山へ来た?

 人間の生息域ではあるまい。』


 あ、そうだ忘れてた。

 年越し(年末じゃないけど)しに来たんだった。

 まだまだ夜は明けそうにない。

 今何時だ?


「ここに来て6年目を山の上で迎えようと思って。

 でも私時計置いてきちゃった……。

 戸棚に懐中時計あったのに……。」


 うーん。

 時間の把握の仕方……。

 夜だと日時計も使えないし。


「今何時かわかります?

 えーっと………。」


 どうしよう山羊さんも白いな。

 フランス語の白はブロンに使ってるし。

 ドイツ語の白ならよく聞いたぞ。


「これからヴァイスって呼んでいい?

 山羊さん。」


『山羊…………。

 構わんが、我は下等な山羊ではない。

 アルーシブゴートじゃ。

 良いか?

 山羊はインフェリオレゴート。

 次がメーディアゴート。』


 すごく既視感。

 長い。

 長いよ山羊さん。


『そして次がスペリオレゴート。

 そして我、アルーシブゴート。

 一つ上がトラフォルジェンテゴート。

 忘るるでないぞ?

 我は強い!』


「はい、わかった。

 ブロンもヴァイスも強い。

 そしてもふもふ!

 あと足速い!」


 私の移動手段これからこいつらで良いかも。

 湖の景観を保ちつつ運動するために散歩はやるけど。


『もふもふは不本意じゃ。

 なくしてやろうか?』


「え?

 今から脱毛すんの?

 動物って毛ないとあれじゃない?

 あの、毛って服みたいなもんじゃん。」


 多分こいつら両方オスだよね?

 普通に喋るから嫌なんだけど。

 動物だとしても人間みたいなもんじゃん。


『違う。

 人化じゃ。

 そこのハイウルフもできるぞ。』


 え、初耳。

 まあつい数時間?

 数十分?

 くらい前に知り合ったばかりなんだけど。

 って言うか、山に行こうとしてからファンタジーすぎる。

 この5年私はのんびりできてたのに。

 急になんか大物出てきたんだけど。

 歩きすぎてマナ濃すぎて集まった?

 なんつってー。

 でも普通にあり得そうなんだが。

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