Aoi's Night Walking ⒉
日がどっぷり沈んだ。
ここで適応スキルの出番。
夜の暗闇にも簡単に慣れてしまう。
便利すぎる。
あたりは真っ暗。
いや、そうでもないか。
星の光が降ってきて、湖に反射して。
なんなら湖自体光ってるし。
なんで?
やっぱマナってやつか。
「今日は山のほうに行ってみようかなー。
節目ってことで今まで挑戦しなかったものにチャレンジ!
あと山のてっぺんで6年目迎えたいしね。」
そうと決まれば小瓶に湖の水を移す。
五本あればいいだろう。
ランプないし。
山の麓に続く道は森の中にある。
村の人が拓いた道だ。
そこまでは、なんとか自力で行こう。
最悪道なんて無視して山に直行すればいい。
「夜の森は虫が………。
夜だけど動物さん呼ぶか。
虫の天敵は鳥?
だったよね。」
別に飼ってるわけでもない。
ただ呼んだらくる。
ちなみに鳥はピーちゃんと呼んでいる。
どの鳥でもみんなピーちゃん。
例えば鳥が鳥を突いてたら
「ピーちゃん、ピーちゃんを突いちゃダメでしょ」
と言うわけだ。
ちょっとややこしいとは思うけどどの鳥がなんなのかわからなくなるから。
例えばトリーと名付けたやつをピッピと呼ぶかもしれない。
まあ野生動物の見分けがつく方が逆にすごい。
そんな人がいたらぜひ動物と暮らせばいいと思う。
まあそんなことはできなくても動物と暮らしてる私がいるわけで。
「ピーちゃんついてきてー。
もしかしたらご飯食べれるかもよー。」
すごい声が聞こえる。
多くない?
何匹?
違う、何羽?
ピーが一羽ピーが二羽ピーが三羽………。
やめろ寝かせる気か。
「山まで行くんだよね。
一匹でいいから狼さんも呼んでくれると助かる。」
この鳥たちは人間の言葉がわかるらしい。
私が一方的に話すだけだが指示は聞いてくれる。
私は動物が何いってるのかわからない。
これが一方通行の関係………ってやつ?
「おお、三羽飛んでった。」
それでも近くに五羽はいる。
「ほんとになんでこんなにきたの?
ご飯目当て?
虫だよ??」
絶対美味しくない。
いつか昆虫食がどうとか言われてた。
でも私絶対食べたくない。
虫食べてる人いたら本気で引く。
目の前で食べられたらマジで引く。
その人に近づかない自信ある。
目の前で虫食べるって結構強烈だな。
イメージした時の、絵面が。
無理。
森に入って数分が経つ。
いまだに道は見つけられない。
狼さんは無事合流したけど。
大体膝上くらいの子たちだ。
でも、一頭だけ腰くらいの大きさの大きな狼さんも来てくれた。
だから今はその子に乗っている。
すごい。
大型犬に乗るとか、やってみたかったから興奮する。
「お前大きいなー。
他の奴らが濃い灰色なのに比べて色薄いし。
そしてなによりつやつやもふもふ………。
お前今日から名前はブロンな。」
ちなみにその辺の狼たちはガイーと呼んでいる。
ブロンはフランス語で白、ガイーはフランス語で灰色だ。
模範的な読み方はそれぞれブラン/ブロン、グリらしい。
全然全くそうは聞こえないんだが。
blancに、gurisと書く。
いやブランクとグリスだろ英語みたいに読めば。
同じアルファベットのくせに面倒な………。
と言うか、もう5年以上前の知識なのに未だに私の頭の中で火を吹いてるなんて。
結構覚えたものって忘れにくいのかな。
いらないものほど良く覚えていられる。
というか狼軍団には意味のある名前あげたんだよなあ。
これならピーたちの名前にも意味をつけてあげるか悩む。
こいつらの色は薄暗い青が大半だ。
そんな中途半端な色されると色の名前がわからない。
青って意味にするとここから先青いやつが出てきたら困る。
薄暗いってフランス語はわからないし。
かといってじゃあ鳥にしようともいかない。
鳥のフランス語もわからないからだ。
「よし。
意味のある名前にして欲しいやつは左側。
別にピーのままでもいいやつ右側。
私動物の言葉わからないからそれで判断するしかねーんだ。」
「ピー?
ピーカカカカカ。」
だから何言ってるかわかんねえんだって。
わかってて話しかけてくんなよ!
わかるようになれないかなあ。
山のてっぺんにはなんと不思議な薬草が………。
なんて展開にでもなればいい。
まあそんなご都合展開、現実であるわけ………。
なら異世界転移も現実にあるわけなくない?
転移があるならご都合展開あるだろ。
「え?
みんなそっちなの?
マジで?」
満場一致で意味が欲しいらしい。
なんて大変なことさせてくれるんだ。
フランス語の辞書なんて持ってないし。
「じゃ英語でいい?
英語で薄暗い青はディムブルー。
これだと長いしダサいよね。
お前ら夜目効くしアイズでいい?
そりゃダサいけどさ。
でも呼びやすくね?」
ダサいのはわかってんだからそんな顔で見るなよ。
意味あるだけマシだみたいな。
まあ及第点だろうみたいな。
「あのなあ、お前ら自分でも少しは考えてみろよ。
どうせピーとかカカカとかチュンくらいしか言えねえだろ?
だから……………うわあ!
な、どうしたの、ブロン?」
急にブレーキをかけて方向転換した。
危うく振り落とされるところだった。
何かいたのかな。
「ピー………じゃなくてアイズ、向こうに何かいた?
人?
動物?
それとも得体のしれない何か?」
ガイーたちは攻撃しようとしない。
でも焦って逃げてるようにも見えない。
ただ一つ問題は山から遠ざかっていること。
「ブロン、反対側だよ。
山に行きたいの。」
グルグル唸るだけでわからない。
やっぱり動物の声聞きたいな。
アイズの反応からも何かがいたわけじゃなさそうだし。
なんなんだろう。
結界的なものがあるのかな?
『そんなことは心得ておる。
だが、匂うぞ。』
「………………。
は………………?????
え??????
……………喋ったああああああああ!!!!!!!
ヤバいどこかの黄色いMの看板のお店のCMみたいになった。
え!!!????
ブロン喋れるの!!??
何が匂うの!?」
ってか、初めて会った時尻尾振ってわふわふしてたよね?
なんか全然イメージと違うんですけど!
『当たり前だ。
我はハイウルフなるぞ。
狼などではない。
土俵が違う。』
狼ではあるでしょ。
ウルフだし。
でもフェンリルって言われなくてよかったわ。
絶対腰抜かしてた自信あるもん。
「狼の一段上?」
『違う。
狼はインフェリアルウルフ。
その上がスペリアルウルフ。
そしてプレミアムウルフ。
それでやっとハイウルフだ。
その上はアブノーマルウルフ。
最上種がフェンリルとも呼ばれるアベラントウルフ。
わかるか?
上から三番目だ。』
どう反応したらいい?
普通に真ん中じゃない?
6のうち3番目は真ん中じゃない?
『ちなみにこいつらはスペリアルウルフだ。
プレミアムウルフが少し混ざっているが。』
ただの狼じゃなかった。
今まで狼って呼んでた。
あとで謝っとこ。
だから初めて会った時に狼って呼んで吠えられたんだ。
今はもうすっかり慣れたのかやれやれしながら答えてくれる。
『本題に戻るが、実体がないぞ。
あれは。』
「おばけってこと!?
私ホラー無理なんだけど!?
スピリチュアルとか無理なんだけど!?」
お化け屋敷でさえ悲鳴をあげる私が実物なんて見たら………。
もう想像に難くない。
失神するかも。
『言い方が悪かったな。
生きてはいる。
状態変化とでも言うか。
そう言う系統のスキルだろう。』
何かこの狼……ではなくハイウルフ。
頼りになる……。
ブロンの兄貴って呼んじゃダメかな。
『あれの居場所が今は掴めん。
少し迂回して山に入る。』
「たのんましたブロンの兄貴!
一生ついていきやす!」
え?
「は?」って聞こえた。
イラついてんの?
困惑してんの?
怖いんですけど。
『今まで通りで構わん。
その変な話し方はやめろ。』
「あ、はい。」
で、結局おばけ騒ぎはなんなの?
おばけじゃないんでしょ?
なんなの?




