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転移の法則〜二十歳で始まりいつか終わる〜  作者: 水たまりに傘と青
薄紅 葵の夜散歩〜異世界6年目を山の上で迎えたいマナ垂れ流しの魔女の一晩〜
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21/30

Aoi's Night Walking ⒈

 湖面に映った満天の星空。

 少しの風がそれを台無しにしていく。

 でも風がやめば、ほらまた。

 まだまだ子供でありながら、実に気ままな暮らしだ。

 どうしてかって?

 それはわからない。

 補導時間にギリギリならない夜九時半。

 コンビニに行った帰り。

 星の見えない真っ暗な空を見ていた。

 都会あるある。

 歩き出そうと前を向いた。

 けれど、14歳少女、薄紅(うすべに) 葵(あおい)は見知らぬ小屋の前にいた。











 森の中。

 湖の上。

 そんなところに一軒の家が立っていた。

 そこに住んでいるのは魔女だとか。

 近くの村ではそんな言い伝えがある。

 なぜなら彼女は老いないから。

 この前いつの間にやら代替わりしてたそうな。

 二人目がいつからいたのかもわからない。

 ある青年が二人目を初めて目撃してから5年。

 全く姿が変わっていなかったらしい。

 恐ろしや。

 怖(おそ)ろしや。

 一度村に二人目の魔女が来たこともある。

 その姿は一見普通の少女。

 でもあれは人間なのか?

 マナの塊。

 まるでそう。

 マナの塊のよう。

 魔女の周りはマナが濃すぎる。

 恐ろしや。

 怖ろしや。





 これは、人畜無害な魔女の、とある夜の話。





 私が異世界にきて5年。

 私にはルーティンがある。

 毎晩散歩をするのだ。

 これは地球にいた頃と同じ。

 5年前にここにきてしまってからも変わらない。

 散歩コースは変わったけれど。


 “湖の周りを一周しよう。

 この湖は大きいから。”


 湖の周りを歩き始めたのは、そう思ったのがきっかけだった。

 でも毎日同じコースじゃ飽きる。

 もう5年も経っているから、何回かルート変更はした。

 森に入ってみたり。

 近くの村を覗いてみたり。

 おかげでこの森のことは把握している。

 まあ全部とは言わないけど。

 昼間は基本的に森に入るし。

 食べられそうな葉っぱを摘んだり。

 木の実をとってみたり。

 卵を盗んでみようとも思ったこともある。

 野生の卵は思い直したけど。

 村を訪れたこともある。

 なんでかわからないけど怖がられた。

 私が老けないのがそんなに怖い?

 まだ若いんだからすぐには老けないって。

 老けるって言うか、成長っていうか。

 身長だって伸びないけど。

 一応地道に伸びてはいる。

 毎年数ミリは。

 伸びるたびに重力に潰される気分。

 まだまだ物理的に伸び代はあると思うんだけどな。


「ゆーーやーけーこーやーけーでーひーがーくーれーてーー。

 やーーまーのーおーてーらーのーかーねーがーなーらなーーい!」


 山と山の間に日が沈んでいく。

 でもあの山にお寺なんてない。

 というか宗教とかあるのかな。

 せいぜい言い伝えくらいか。


「おーーてーてーつーなーいーでーみーなーかーえーろーー。

 かーらーすーとーいーーっしょーにーかーえーりーまーしょーー。」


 私手を繋ぐ相手いないよ。

 てか帰れないし。

 いやー。

 来たばっかの頃は泣いたなー。

 もう今なんかここにずっと住んでたみたい。

 少なくとも5年はここに住んでるけど。


「この小屋の家主さんも帰ってこない。

 勝手に私の家にしてるけどいいのかなー。

 まあいいか。」


 この家は大変便利なことに色々減らない。

 埃もたまらなければ蜘蛛の巣も張らない。

 食べ物や家のものは腐らない。

 本にも虫食いひとつない。

 魔法みたいだ。

 でもこの世界に魔法はない。

 でも、魔法ではないけどあるものがある。

 それは…………。


「ステオープーン。」


 ステータスである。

 どう呼んでも出てくる。

 そしてステータスに書かれているそれ。

 スキルだ。

 レベルはないらしい。

 私のスキルは

 「ああ、こりゃ私だなあ」

 と納得するものばかりだった。


 【スキル】

 〈適応:どんな環境にも瞬時に適応できる。〉

 〈散歩:歩くたびにマナを生み出す。〉

 〈起床:アラームがかけられる。〉

 〈就寝:寝ようと思えばどんな環境でもすぐに寝られる。〉


「うーん、寝ろってことだよねえ。

 寝てるけど。

 散々寝てるけど。

 それはもう至福なくらい寝てるけど。

 なんなら散歩もしてる。

 でもマナがあるからなんなんだ。」


 そこがずっとわからないでいた。

 確かにこの小屋の目の前にある湖。

 私がこの周りを散歩し始めてからすごい幻想的になった。

 水も澄んでるし。

 仄かに光ってるし。

 でも幻想的になったからなんなんだ。

 私にとってはただの生活用水だぞ。

 確かに最初の頃に比べて美味しくなった。

 水が。

 ただそれだけだ。

 あ、でも怪我した時に治るのが早いとは感じる。

 あとやけに動物が懐いてくる。

 でもそれだけだ。


「そろそろ散歩の時間だ。」


 黄昏の始まるくらい。

 夕方と夜の間。

 ただいまと、おかえりの後に。

 私はいってきますをする。

 何分でも何時間でもいい。

 かけられるだけ時間はかけよう。

 毎日が楽しくなってしまう。

 そのうち湖に遊歩道でも建てる?

 でもここ深いから無理だな。

 中にモンスターでもいるの?

 見たことないけど。


「今日で5年が終わる。

 明日から、6年目。

 一個の節目だね。

 何かあるかな、今日は。」


 ケーキは食べれなかった。

 卵ないし。

 そう卵がない。

 鶏でも飼うか。

 村で譲ってもらう?

 ありだな。

 クロゼットに入ってた服を拝借。

 これが新品みたい。

 ほんとに綺麗だ。

 まあ多分家同様魔法か何かがかかってるんだろう。

 くるぶしの上まである長いワンピース。

 腰の上でベルトを締める。

 一応護身短剣。

 なんで物騒なものを放置してたんだろう。

 そしていつものローブ。

 住んでる場所と言い、魔女みたい。

 鍋で煮込んでるのはただのスープだけど。


「それじゃあいってきます。」

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